断酒についての、あれこれ事
筆者は断酒中である。
最後の飲酒から4年4ヶ月(アルコール依存症自助会の計算方法では4年)間、断酒が継続できている。
断酒と禁酒、そして節酒。よく似ているが違う。
アルコール依存症の回復には『断酒しかない』といわれてきたし、わしも そう学んだ。
断酒とは、一生アルコールを断つこと。
禁酒は期間を定めて、アルコールを摂取しないこと。
節酒とは、アルコールを控えること。
飲む日を決めたり飲む量を決めたりしてアルコール節酒を少なくすることだな。
最近はアルコール依存症専門病院で『減酒』なる試みも始まり、一定の治療効果も現れているらしい。
さて、断酒。
アルコールを断つ。
アルコール依存症専門病院に入院中に実際あった例をあげる。
アルコール依存症は精神科の領域なので、精神病院になるが、一般病院の病棟と同じく衛生面に気を付けられている(医療機関として当然だが)
精神病患者でもインフルエンザにかかるし、感染症になることもあるからだ。
また、糖尿病な
どの患者も多い。
そのため常に消毒が行われる。
最近は公共機関のみならず 商業施設の入り口やトイレなどには消毒液が置かれていて、手の消毒が呼び掛けられている。
病院の入り口、病棟の入り口にも同然この手の消毒液が置かれているが、アルコール依存症専門病棟には、入り口にもトイレにもこれが設置されていない。
理由はふたつ。
アルコールの口からの摂取と皮膚摂取である。
アルコール依存症の症状はいくつかあるが『アルコール摂取のコントロールか効かない』ことが そのひとつである。
(この、コントロールか効かないことは、全ての依存症に共通する病状らしい)
アルコール依存症の場合、常にアルコールを摂取する(飲酒)ことが続いているため、体内に一定量のアルコールがあることが正常だと脳が勘違いする。
一方、アルコール依存症回復のための入院中には、アルコールを摂取することが難しい。
そんな中で身近に、アルコールが含有(それも高濃度の)されている消毒液があれば、本来飲用でなくても飲みたくなってしまう。
いや、実際飲む人が少なからずいる。
かくいう筆者も消毒液とまではいかなくとも、入院前のアルコールまみれのヘロヘロ状態の時には酒を買いに行くのが面倒で、身近にあった料理酒を飲んだこともある。
前述のようにアルコール依存症の症状の中でもやっかいなのは、しばらく断酒が続いていてもアルコールが体内に入るや否や飲酒のコントロールか効かなくなることだ。
だから病棟の食事では、醤油は湯煎でアルコール分を飛ばし、毎朝のように出ていた納豆にはタレ(アルコール含有)も付いていなかった。
また院内の売店では、洋菓子 アイスクリーム、調味料など わずかでもアルコールが含まれている食品には『アルコールが含まれています』と大きく表示されているし、消毒液、整髪料なども飲む人がいるため、アルコール含有の表示がされている。
さらに、消毒液や化粧品、整髪料などは わずかながらでも、皮膚から体内に吸収されるため、院内での所持使用は厳禁されている。
また『抗酒剤(抗酒薬)の問題もある。
抗酒剤とはアルコール依存症者に処方される処方さ薬で劇薬指定されている。
具体的な商品名は書くのを控えるが、粉薬とドリンク剤があり 無味無臭。
これを服用して、さらにアルコールを摂取すると人工的に急性アルコール中毒の状態を作り、長時間強烈な苦しみが続く。
これにより、飲酒の抑制に繋がるのだが、それでも飲酒に走る人がいるし、化粧品や整髪料、注射時のアルコール消毒で皮膚からのアルコール摂取で苦しむこともある。
だから、アルコール依存症専門病棟での注射消毒には、アルコール綿は使わず、別の消毒液を使っている。
ただ、病院退院後は、いちいちアルコール含有を確かめることも少なくなるし、抗酒剤も劇薬のため 医師と相談の上、徐々に減らしていき やがて止めることになる。
本当は、今でも醤油程度のアルコールでも避けるべきなのだが、食事に行ったりした先で、アルコール含有を確かめるのも、湯煎を頼むのも先方に失礼に当たるし 何より現実的でないため今は注意をしながらいただいている(明らかにアルコールの臭いがするものは避けているが)
まあ、この手の話は今後も度々記すことになるが、記すことで自分がアルコール依存症という病気に罹っていると確認する意味も込めて(いや、これが大切だと思うのだが)書いて行くことになる。
今回は、雑感には ほど遠い話になってしまった。
好きな物を楽しめない。
依存症とは、因果な病気だと思うが、自分の生き方の結果なので受け入れるしかない。