炎を纏った少女
今でも忘れない光景、あのときの記憶が今でもはっきりと覚えている。
___どうか、どうかこの子だけでも!
___頼む、神様が本当にいるなら助けてくれ!
燃え盛る監禁室の中で必死に私を庇おうとする父と母が存在するかも分からない者にすがる。
しかし、こうしている間にも次々と火の手が上がる。もはや逃げ道もない。
いや、むしろ何処にもないのだ。これは悪意に満ちた人達の手によって引き起こされたのだ。今頃、私達を焼け死に逝くのを眺めて笑っているんだろう。
___許さない、許さない、許さない、許さない!!
私の中にある感情がむき出しになり爆発する。
___死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!!皆死んでしまえ!!
それは神か悪魔かどちらかは分からないが私の祈りは届くのだった。
次の瞬間、その炎は生きる巨人化として大きな炎の大剣を降り払う。
そしてその炎は街全体に広がり燃え上がりそれは女子供関係なく次々と炎に包まれ灰になり死んで逝くのだった。
これで、私も死ねる。そう思った。
◈◈◈◈◈◈
東京、秋葉原
「くそ!もうここまで来たか」
「お兄ちゃん、どうしよう周りが火に包まれて逃げ道がないよ」
必死に逃げ惑う二人の男女がいた。
一人は少し強気な少年にもう一人は普段おとなしめだが今は焦りと恐怖に包まれて口調が荒くなっている。
そんな二人に迫り来る三体のゾンビが現れる。しかしそれはただのゾンビではなく身体中は金属におおわれている。
「こうなったら、俺が戦うしか!」
そういって地面に落ちている鉄の棒を持ちゾンビに向かおうとするが少女が止める。
「ダメだよお兄ちゃん!知っているでしょう!」
その圧倒的な金属はありとあらゆる物をもとおさないまさに最強のゾンビだと言える。弱点はただひとつ頭を停止させる方法しかないが頭も金属でおおわれているので倒すことすら不可能だった。
「だったらどうすればいいんだよ!このままだと俺ら二人とも死んでしまうぞ!」
「あたしが囮になる」
その言葉に少年は目を開く。
少年は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「ば、ばか野郎!!お前をおいてうんなこと出来るわけ無いだろう!!」
「お兄ちゃん、お願い」
「嫌だ!」
そしてついに少女は怒る。
「いいから早くしてよ!何でいつもいつも私の言うこと一つも聞いてくれない!もういい、私は囮に相手を引き寄せてくるからお兄ちゃん先に行っててね」
それだけを言い少女はゾンビにいる方へ向かう。
「お、おい!」
こうして少年だけが取り残される。今の少年に戦う力などない。だから、今さら妹を助ける事なんて不可能だ。それに俺の事も考えず行ってしまう妹にたいして怒っている。
「くそ!知るもんかあんなやつ」
そういって少年は妹とは別の道に歩き出す。
___ふーん、大切な妹を見捨てるんだ。
「!だ、誰だ!」
___結局、昔も今も変わらないんだね、人って言うのは。
「誰だと言っている!一体どこにいるんだ!」
___うるさい。
すると先ほど火で道が塞がれていた場所が一気に燃え上がる。少年はその光景に震えだし尻餅をつく。そして真っ赤に燃える火の中から少女が現れる、炎を纏いながら。