~呼吸を止めて一秒あなた真剣な目をしたから♪~
「ふむふむ。つまり、林檎さんがきたのは別世界で、この世界は食料難でこのままではみんな飢餓してしまうと」
「そうだ。」
こんにちは、イケメンに『家畜になれ』宣言をされた林檎さんですよ。
なんでこうなった。
「このままだといずれこの国の奴らはみんな死ぬ。おそらく、冬には」
「あ、今の季節はいつですか?燃えるような夏も好きですけど汗だくになるので秋ぐらいがいいなーなんて」
「夏だ」
「オーマイゴッド!」
「それで、聖書にはこう書いてある。の一章『汝、我が子である家畜よりもらい受けよ』と」
「我が子なのに家畜なんですね」
「いや、俺が言い換えた」
「なんで!?なんで人を傷つけることしか考えられないの?!」
「俺はこっちの方が正しいと思う」
「聖書を添削してどうするんですか!」
「良いんだよ。俺は神父だからな」
「え」
聞きました?神父ですって。神父(笑)
どこの世界に迷える子羊を剣でおどす神父がいるですか!
あと神に仕える神父が神の言葉を添削しちゃ駄目でしょ!
そもそもこのイケメン兄さん、たしかに黒い服着てますけどオッシャレな感じですよ。びろびろした感じじゃなくて身体の線に合ってる服、と言いますか。
十字架とか絶対悪魔はらえないサイズですし。完全にオシャレなネックレスですよね。
でももしかしたらこの世界では違うのかもしれないね!なんたって異世界だし!
「あのー私の世界だと神父って、ハゲという運命を背負いながらも健気に黒い服とか十字架とか『アーメン』って感じなんですが…?」
「そうだな。第10章『人は人。自分は自分』と書いてある」
「絶対使い方違いますよねそれ!!」
「うるせえ。粉々にするぞ」
「すみませんでした!!粉々はやめてください!!」
沸点低いなこの人!!
「次、口開いたら小指を折る」
低いなんてもんじゃなかったよ母さん……
林檎さんが必死に口を(物理的に)押さえてると、さっき放り出された子豚さんがトコトコ帰ってきました。
「ブヒッブヒッ」
子豚さ~~ん!!
今来ちゃ駄目!!
焼豚にされちゃうよ!!!
あ、さっき放り出されてちょっと怒ってる!?
「どこ見てんだ」
顔を掴まれて無理矢理お兄さんと目線を合わせられる。うわっほーい!イケメンが目の前に!目の保養!でも不思議、感じるのはときめきじゃなくて危・機・感☆
「いいか、家畜のお前にはこの飢餓を救う神からの遣い…つまり天使が見えるはずだ。見つけろ」
こくこくと必死に頷く。林檎さんでもわかる。お兄さんマジですね!真剣と書いて。
「何か質問は?」
薄笑いしてお兄さんがこちらを見ます。これ何の乙ゲー?
「天使だったらお兄さんの目の前に林檎さんがいますよ!マシュマロ天使ですけど!」
「嘘です嘘ですすみませんでした無言で小指折ろうとするのやめてえええ!」