ぼくのかんがえたさいこうの
周りの奴はバカばっかりだ。
こうすればもっと良くなる。そんなことはすぐに思い付くのに誰もやらない。
政治家なんか口先だけでは市民の為なんて言いながら、頭の中は金のことしか考えていない。
俺が政治家やった方が絶対にこの社会は良くなるのに。
俺が総理大臣になったら絶対景気良くなるのに。
そんなことを考えながら片道一時間の通勤電車に乗る。
満員電車に無理矢理乗ってくんな! ちょっとみれば解るだろう? バカが!
満員電車で優先席でもねぇのに席譲ってんじゃねぇよ! 偽善者が!
通路一杯に広がって歩くな! 自分のことばっかり考えやがって! クズが!
携帯いじりながら歩くな! お前がぶつからないと思っているのは周りが避けてるからだ! 雑魚が!
なんで俺が道を譲らなくちゃいけない? お前等が俺を避けろ!
ぶつかった? 舌打ちしてんじゃねぇよ! お前が俺ににぶつかったんだろうが! くそが!
俺はやる気になればなんだってできるんだ!
会社では周りのバカどもにレベルを合わせているだけで、あのくそ上司なんかより俺の方が断然仕事は出来るんだ!
あぁぁぁぁぁぁうぜぇ! 俺以外全員うぜぇ!
目の前のやつら邪魔だ! 死ね! 爆発しろ!
キュイーンキュイーンキュイーンキュイーン
耳障りな警報が辺りに響き渡り、首筋の辺りがチリチリする。
周りのやつらが俺の方をみている気がする。
煩い! こっち見んな!
ドォォォォン!
バンッ! バンッ!
グチャッ!
「きゃぁあああ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
目があったチャラチャラしたガキを睨み付けると
首から上が弾けとんだ。それを見て周りのバカどもが騒ぎ立てる。
『緊急警報! 緊急警報! 新宿駅構内にて【BOKU】発生係員の指示にしたがって速やかに待避してください! 繰り返します! 新宿駅構内にて【BOKU】発生! 係員の指示にしたがって速やかに待避してください!』
「ははは! なんだこれ! 簡単じゃないか! 爆発しろ!」
「あ、ぶ……ぴゃ……」
バーン!
目の前で俺にぶつかってきたサラリーマンを睨み付けると上半身が醜く膨れ上がってベルトから下を残して爆発した。
「あぶぴゃってなんだよ きたねぇ花火だな」
俺の周りにはいつの間にか人がいなくなっていた。
みんな先を争うように逃げている。
先程電車内で老人に席を譲ったサラリーマンが、譲った婆さんを押し退けて逃げている。
誰だって自分の命が惜しいんだろう。
偽善者め爆発しろ!
睨み付けて爆発の指示を出すが爆発しない。
そうこうしているうちに偽善者は人混みに紛れてしまった。
「チッ! つまらねぇ! どうした? かかってこいよ! 見てるだけで文句もいえねぇ雑魚どもが!」
『ならば望み通り相手をしてやろう』
「あ? 誰だ今喋ったのは? てめぇか!」
最初に弾けとんだチャラチャラしたガキの横を歩いていた女が、死体となった男の下敷きになって血まみれで呆然としていた。
俺と目が合うと口をパクパクさせて首を振り涙を流し失禁しながら後退っていった。
「人前で小便漏らすとかどんな教育されてんだてめぇは! きたねぇ!爆発し……」
巌!
最後まで言い終わる前に横からの衝撃を受けて身体が吹き飛び、予備校の大型ポスターの横にに叩きつけられる。
「ぐはっ!」
地面に落ちると自分がもといた場所に人影を見つけるが、壁に叩きつけられた衝撃からか焦点が結べずぼんやりとしか見えない。
「な、なにしやがる……」
『かかってこいと言ったのはお前だぞ? 無抵抗の相手にしか粋がれないのか?』
言った後で鼻で笑う音が追加される。
「う、る、せぇぇぇぇぇぇぇ! 不意打ちしておいて偉そうなことぬかすんじゃねぇ! 爆発しろ! 爆発しろよ! くそが! なんで爆発しねぇんだ!」
『やれやれ。自分のことすら解らん困った《ぼくちゃん》だな。最近こんな奴の相手ばっかりだ』
と、年齢を感じさせる男性の声
『文句言わないでくださいよ。久しぶりのまともなお仕事なんですから。コレで家賃と公共料金払っても贅沢できますよ!今日は焼肉行きましょう!』
こちらは若い男の声
『こんだけ肉片飛び散ってるの見たあとに焼肉とか神経を疑いますね。ここは鉄板のもんじゃでしょう? 鉄板だけに』
落ち着いた感じの女性の声
『もんじゃとかまともな人間の食べ物じゃないし脚下。私はフランス料理がいいなー』
若い女性の声
『お前らいい加減にしろ! ラーメン奢ってやるからそれで我慢しろ!』
最初の声がまた聴こえ、後は口々に不満を述べている。
「う、る、せ、えぇぇぇぇぇぇ! 俺を無視して話を進めるんじゃねぇ! 俺の邪魔するんじゃねぇぇぇぇ!」
『僕に構ってよ!でも過干渉はやめてってか? 本当に《ぼくちゃん》は面倒くせぇな』
若い男の声が応える。
「なんなんだてめぇ等は! せっかく人が気持ち良く俺の考えた最高のプランを実行してるってのに邪魔するな!」
『そう言うのは妄想の中だけにするか、チラシの裏にでも書いといてくれない? 誰も興味ないから』
落ち着いた女の声が『誰も興味ない』を強調して応える。
「なんだと! 俺が考えた最高のプランをバカにするほどいいプランがてめぇにあるって言うのかよ! 反対するなら対案を出せ!」
『うげっ! こいつ典型的なネトウヨじゃ~ん! キモいんですけど!』
若い女の声がオエッっといいながら応える。
『まぁだから《ぼくのかんがえたさいこうのプラン》何てものを実行しちまったんだろ? 腹へったからそろそろ終わりにしてラーメン食い行くぞ』
年老いた男の声が声を荒げると三々五々返事があった。
「バカにしやがって! お前らさっさと爆発しろよ! 俺に意見するやつなんか要らねぇんだ! 俺が一番……」
『あぁ、お前が一番バカだ。間違いない。バカじゃなけりゃ《BOKU》になんかならねぇんだよ。越えちゃならん一線を越えた奴はこの世に居場所なんてねぇんだ。まぁあの世にもねぇだろうがな』
年老いた男の声がそう言って掲げた手を振り下ろすと、脳天にすさまじい衝撃を感じた後で刺すような激痛が全身を駆け巡った。
「ぐぎゃぁぁぁぶびばぁぁぁ!!ぐるるりかららららら!」
日常生活ではおよそ体験することのない痛みに絶叫をあげた後は全身を引きちぎれんばかりにピーンと張って倒れた。
『ホレ。今の内に回収しておけ。まだ生きてるよな?』
『そうね。鎮圧までの時間は十三分。所々焦げているけどまだ生きてるから引き取り手は多そうね。競売かける?』
落ち着いた声の女がテキパキと倒れている男に怪しい札や数珠を巻き付けていきながら問いかける。
『いっくよー! それ!』
若い声の女が作業が終わった頃を見計らって包帯のような布を幾つも投げつける。
女の手を離れたそれは自分の役割を把握しているかのようにぐるぐると動き回り、あっという間に包帯男が出来上がった。
「よい……しょっと」
若い声の男がズシンと重量のある蓋のない細長い箱をどこからか取りだし包帯男の上に被せるように置く。
すると箱は徐々に地面へ埋まっていき、最終的にはそこに横たわっていたモノは無くなり床があるのみとなった。
『んじゃこれはサービスでっと』
そう言うと年老いた男は徐にパンパンと二度手を打ち鳴らし礼をした。
すると、先程弾け飛んだはずのサラリーマンとチャラチャラした男の身体ががキラキラと無数の光に包まれ、その光が収まると何事もなかったかの様に元の姿に戻っていた。
二人とも何が起こったのか覚えていない様だ。
『おい! 金は振り込まれてるか?』
『ばっちし!』
『んじゃラーメン食い行くぞ』
そう言って四人組は新宿の駅を後にした。
現在の連載を進めるにあたりどうしても吐き出しておきたかったようです。
電車のくだりは共感できる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
……え? いますよね? 私だけじゃないですよね? ね?
共感するって言っても良いんだよ?щ(゜▽゜щ)




