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第80話「巡り合わせ」




「ぶぶぶぶぶ……」


 ログアウトして1階に降りてきた私は蜂が羽ばたく時のような、どこか不安を抱かせる音を聞いた。

 出所を探りそちらを見てみれば、リビングの床には見慣れた姿が俯せで倒れていた。

 それはあまりに不信だった。今までの経験則から近付けばもれなく抱き締められて身動きが取れなくなってしまうだろう。

 私は抜き足差し足とリビングを避けつつ、キッチンで晩ごはんを作っているお母さんの許へ向かった。


「おかえり結花」

「ただいま。手伝うよ」


 エプロンを着ようとしているとお母さんから声が掛けられる。


「勉強は捗った?」

「思ったよりかね。見る?」


 取り出したのは情報端末。

 MSO(あちら)で勉強した内容をフォトで撮影しパソコンに転送してあるのでこちらからも閲覧が可能だ。後で各教科の記録媒体に転送する予定。

 そう言うとお母さんはくすりと笑った。


「いいわよ。結花の事ですから? きっと真面目過ぎるくらい真面目に勉強していたんでしょう」

「信用があって嬉しいです。……それで、あれは何?」


 視線の先にいるのはぐったりと横たわる花菜だった。あの様子じゃMSOにログインしていないとは思うんだけど、あそこまでなるものか。


「少しキツめに勉強をさせただけなんだけどね」

「あの子のメンタルが弱いんだかお母さんがスパルタなんだか……勉強はこの後も続けるつもり?」

「続けたいわね。ねぇ?」


 その言葉に反応したらしく、リビングからガタゴトッ?! と、動揺したと分かる物音が聞こえた。


「……あの様子じゃ頭に入るとは思えないんだけど……」


 ピタリと物音が止まった。調子のいい……。


「今ゲームを始めたらところてん式に勉強した事を軒並み忘れる気がするわ」

「そうだね」


 まったく同意出来てしまう不思議。花菜は再びガッタンゴットンと暴れ回っている。


「いっそ早めにログアウトさせてテストでもしてみたら? 結果次第で明日はゲーム無し」

「あら素敵な思いつき」

「嫌じゃーっ!! もう勉強したくないでごわーすっ!! おぎゃーんっ!!」


 とうとう我慢の限界を振り切ったのか、花菜は泣きべそをかきながらダッシュで廊下へ走っていった。


「……」

「……」


 ダカダカと言う喧しい音から察するに2階へ逃げたらしい。


「追っていって(、、、)あげて、もうすぐごはんだから早めにね」

「うえー……」


 しかめっ面になりながらも、そう命じられては否とは言えない。我が家のヒエラルキーにお母さんより上は無いのだ。エプロンを戻して後を追う。

 階段を鬱々と登っていくと……何故だろう私の部屋のドアが半開き。


「……閉じ損ねたのかなー……?」


 希望的観測を口にしつつキィ、ドアを開く。照明は消されたまま、しかし廊下の灯りで中がどうなっているかは分かる。

 私のベッドがこんもりと盛り上がっていた、そこに逃亡者が潜伏しているのは明々白々だった。


「……ぐすん」

「何してるの」


 もぞもぞと掛け布団から顔を覗かせた花菜は憔悴した様子だった。


「もう……どうして私の部屋かな」

「……だってお姉ちゃんの物だらけ。地獄はもうヤー、天国がいいのー」


 などと犯人は申しております。


「ふう……晩ごはんだよ、行こう」


 バサリと掛け布団を剥ぐとそこには私の枕を抱き締める花菜がいる。顔を埋めていたけど、チラと視線をこちらに向けていた。

 私が花菜の手を取ると驚く程するりと枕を抱いていた腕はほどけた。

 1歩後ろに下がるとするすると花菜もついてくる。そのままドアに1歩1歩と歩いていく。


「そんなに勉強は嫌い?」


 ぶすっとしていた花菜にそう尋ねるも廊下に出ても答えは無い。


「そりゃ他に楽しい事もあるけど……勉強だけはやっておこうね」


 将来の為、とは言ってもこの子には具体的には響かない気がする。だから……リビング前のドアで振り向いてこう言っておく。


「エスカレーター式って言ったって成績悪かったら留年も有り得るんだから」


 びくんと花菜が震える。

 事実私のクラスにも1人、留年した生徒がいる。男子であり同じ班になった事も無いので接点はほぼ無い。

 しかし、本領はここからだ。


「もし留年なんてなったら……私たち4学年分離れちゃうね」


 私は17歳高2、花菜は14歳中2。私が中学を卒業してから花菜は中学に入学した、高校でもそれは変わらない(多分)。


「私、大学部で花菜と一緒に通いたいな」


 4年制大学ならば1年だけ、私たちは同じ学校に通える。初等部以来で、最後のチャンスだった。


「花菜は違う?」


 と少々苦笑しながら呟くと花菜はぶるぶると震え出し、そして――。



「お姉ちゃんと一緒ーーーっ!! やったらーーーっ!! ふんがーーーっ!!」



 「お姉ちゃんのたーめなーら、えーんやこーら!」とやる気をみなぎらせてリビングへと飛び込んでいった。


「………………よし、ドーピング完了。まったく毎度疲れさせてくれるんだから」


 試験前の恒例行事を終え、晴れやかな気持ちで私は晩ごはんへと向かったのでした。




◆◆◆◆◆




 目が醒めると見知らぬ天井がある。

 比較的広い2人部屋のここは先程泊まったサミーラ村の宿屋さん、風に揺れる小花亭の一室。


「ん、と。セレナはまだ来てないか」


 ひーちゃんを召喚しつつ体を起こし、システムメニューを開いてみんなのログイン状況を確認すると既に1人、セバスチャンさんが来ているようだった。

 テーブルに置かれていたメモ帳に『先に出ます アリッサ』と書き置きを残し、部屋を後にする。

 掃除の行き届いた落ち着いた雰囲気の廊下を歩けば生けられた花々が気持ちを和ませてくれる。

 セバスチャンさんたちが泊まった隣の部屋をノックしてみたけど反応は無く、宿屋さんのカウンターで聞いてみる事にした。


「はい。その方でしたら先程お見えになられました。馬の手入れをされたいとの事で道具をお貸ししましたよ」

「そうですか、行ってみます」


 そこにいた快活そうな笑顔を振りまく娘さんによればセバスチャンさんはどうやら馬さんたちの面倒を見てくれているみたいなので私も外へ向かう。

 馬小屋は宿屋さんに併設されていて、一方にはタミトフ子爵さまから借りた馬車。そしてもう一方には藁の敷き詰められ3頭の馬さんたちと、珍しく(と言うか初めて見た)執事服を脱いだセバスチャンさんがいた。


「セバスチャンさん、こんばんは」

「おお、これはこれはアリッサさんご機嫌よう。は、このような格好ではお目汚しでしょうがご容赦下さい」


 脱いだ上着を柵に置き、シャツの袖をまくったセバスチャンさんの手には馬さん用のブラシとが握られていた。

 私の視線に気付くと照れ臭そうに、殊更おどけながら説明する。


「いやはや、皆さんがお越しになるまで手持ち無沙汰でしたもので。何より、これからも苦労をかけますからな、少々労っておりました」

「そうですね」


 セバスチャンさんが借りた道具と同じ物を先程借りておいたからそれを示し、帽子と上着を脱いで柵に引っ掛ける。


「私もします、私が一番お世話になってますから」

「ほっほ。頼もしいですな」



◇◇◇◇◇



「ぶふるるる……」


 細くいななくディファロスくん。汗もかいていたから〈ウォーターショット〉で流し、今はセバスチャンさんに習いながらその体をブラッシングしている。


「ディファロスくん、痛かったりしない? 大丈夫?」

『キュイキュイ』

「ふる〜」


 言葉は通じないけど、喜んでくれるといいな。


「ったくもう。こんなトコにいた」

「あ、セレナ、天丼くん」


 精霊器の照明の下に赤と黒い人影がやってくる。


「2人もしてあげたら? セバスチャンさんに聞いたらちゃんと疲労回復の効果もあるみたいだよ」

「そうかい。ま、1頭だけ仲間外れってのも可哀想か」


 天丼くんはシステムメニューから鎧を脱いで、殆ど作業の終わっていたセバスチャンさんに教えてもらう事になった。


「来たらさっさと出かけるかと思ってたのにさ」


 そう言いながらセレナは牧場で買わされたとぶーたれていた人参のバケツを私に渡してくる。


「ブラッシングは私がやるから、アリッサは餌でもやっててよ」


 袖を捲り、ブラシをひったくってディファロスくんの体のブラッシングを始める……のだけど、セレナのそれが気に入らないのか文句を言うように荒々しくいなないている。


「ヒヒ〜ン!」

「ちょっ、私が手ずからブラッシングしてあげてんのに文句なんて言ってんじゃないわよ!」

「甲高い鳴き声は仲間へ警戒を促す為のものだそうですな」

「んなっ!? アンタそんな事言ってたワケ?!」

『キュッキュッキュッキュッ』

「乱暴なんだよお前は。あ、アリッサ、汗流してやりたいから〈ウォーターショット〉くれ」

「了解、“水の一射”。ファルネルくん、ちょっと冷たいけど我慢してね」

「ばふる……」


 そんな調子でおおよそ30分超に渡って馬屋は騒々しくなってしまった。

 そしてそれが終わるとセバスチャンさんが私に尋ねてきた。


「さて、準備は整った訳ですが……アリッサさん、ダンジョンの件は如何なさいますかな?」


 この後にあると言うダンジョン、そこに私も一緒に行くかどうか。

 私は馬車の中で勉強を続けていてもいいと言ってもらったけど……。


「私も一緒に行こうと思います」

「ほう。宜しいのですか? 少々長くなるやもしれませんが」

「それは――」


 その私の言葉を遮る声があった。


「私から頼んだのよ」


 全員の視線が声の主、セレナへと集まる。


「クリアしたいイベントがあるから手伝ってほしいってさ」


 そう、それがセレナが私に頼んだ事だった。

 思い出すのは晩ごはんの前、2人部屋での――。



◇◇◇◇◇



「イベント?」

「そ、何て事無いイベントよ。この先のダンジョンの……」


 首を傾げていると、セレナは頬を掻いて答えてくれる。


「実を言うとさ、私と天丼は前にこの先のダンジョンに行った事があるのよ」


 驚きは無かった。2人はここまでポータルに登録してこなかった、その理由は既に一度訪れていたから。それが分かってむしろ納得した。


「で、まぁ。イベントのクリアにしてもボスに勝つ必要があったんだけど……さ」



「……でも、ボロ負けだったわ」



「え?」


 今度こそ私は驚いた。


(2人が負けた……?)


 思い返せば出会いでも2人はその1歩手前だったのだけど……今となってはあまり意識出来ない。

 それくらい2人は私にとって頼もしい存在になっていたから。

 でもそんな認識を吹き飛ばすようにセレナはカラッとした口調で続けた。


「だから負けよ、負け。何度か戦ったけど、勝てなかったの。相性悪くってさ……だから結局出戻りして……クリア出来ずじまい。加護も装備も鍛え直したのよ」

「じゃあ……もしかして、目的地にフィエスラ湖を薦めたのもリベンジするのが理由?」


 そう問うとセレナは顔を逸らしてしまう。


「8割はホントにアリッサが喜びそうだからだけど……無かったって言ったらウソになるわね……ゴメン、ワガママだってのは分かってたんだけどさ……」


 私はそんなセレナの手をギュッと握る。


「いいよ、別に。いつも私の為に付き合ってくれてるセレナだもの。そもそも今まで来れなかったのだって私に構ってくれてたからでしょ? なら、私だってセレナの為に何か出来るならしたいし、させてよ」

「ん。そっか……サンキュ」


 ほっと小さく息を吐くセレナは、改めてニカッと笑みを向けてくれる。私もそれに応えるとセレナは囁く程度の声でこう言った。


「でも……自分で言ってなんなんだけどさ、ちょっと今困ってる」

「え、どうして?」

「……ね、私たちが初めて会った時の事、覚えてる?」

「うん、もちろん。ほら2人がセーフティーエリアに……」


 ぷ。と失笑してしまうと睨まれた。舌を出して誤魔化そう。


「ふん……あの時、装備新しくしたのはまたその内ここにリベンジしてやるってのもあったのよ」


 そうそう、あの時は新しくした装備の性能を試しに、とか言ってたっけ。

 で、はじまりのフィールドのボスモンスター4体を順繰りに倒して回って、最後のジャイアントモスの毒攻撃にやられて、命からがらセーフティーエリアに逃げてきたんだよね。

 そしてそこで私たちは出会ったんだ。


「だから……癪だけどさ、ここのボスのお陰で巡り巡ってアリッサと会えたって思ったら、手が鈍りそうだーってさ」


 苦笑しつつそう言うセレナの気持ちはよく分かる。私だって出会わせてくれたボスモンスターには感謝してしまいそうなのだから。でも。


「でも、私の時も……」

「私の時?」

「《古式法術》、だよ」


 今の私たちがあるのもあれの所為で、あれのお陰だ。セレナたちにとってのダンジョンともどこか似ているように思う。


「何度立ち向かってもだめで……でもセレナが力を貸してくれて、天丼くんとセバスチャンさんが来てくれて、今は乗り越えられるかもって思えてる」


 あの時からは想像も出来ないくらい沢山の事があった。今はまだ道の途中だけど、途中まで来れている。


「加護もダンジョンも、難しいのは出会いを生むからだって、何となく思うんだ。1人2人で無理でも他の人と力を合わせる事で越えられるようになる、だからこんなに難しいんだって」


 「だから」と目の前にいる、そんな“難しい”が絆を育ててくれた友達へ心で感じた事を伝える。



「越えて行こ。ちゃんと越えて、もっと色んな所に行きたいよ。そこでは誰かが困ってるかもしれないし、私たちが困るかもしれないけど、きっと私たちみたいな素敵な出会いに繋がる事だってきっとあるから、ここで止まったら勿体無いもん」



 意趣返しとでも言うように、ぷ。と、今度はセレナが吹き出した。


「ロマンチストめ」


 カラカラと笑われた。

 気恥ずかしいのはあるけど、悪い気はしない。


「正直アリッサ以上とか想像も出来ないけど……ま、そうよね。ボスとアリッサのどっちが大事かなんて比べるまでもないんだから、迷う必要なんかありゃしないか」


 セレナも気恥ずかしくなったのか少しゴロゴロとベッドの上を転がって、やがて力強く拳を突き出した。


「そうと決まればいっちょやったるかーっ!!」

「おー!」


 私も拳を掲げて、ダンジョンへの、ボス戦への決意を固めたのだった。



◇◇◇◇◇



「アリッサに手伝わせる?」


 片眉を上げた天丼くんの問いに意識が戻る。セレナはバツが悪そうに視線を泳がせる。


「分かってるって、これが本末転倒ってくらいは」


 この旅の目的は私の運搬。その間私は馬車の中で試験勉強に打ち込む。

 だからその私の手を借りる事を本末転倒とセレナは言う。


「でも、あそこは私たちだけじゃキツいからさ。アリッサに頼んだの」

「アリッサはそれでいいのか? 無理はしなくても……」

「いいのいいの。私、多分1人で答えを出してたらやっぱり同じ答えになってたと思うから」

「ほう……その心は?」


 代わって今度は私に視線が集まる。


「そんな難しい話でもないんですけど……ずっと机にかじりついていたらストレス溜まっちゃいますから。ここらで発散しておきたいじゃないですか」

「成る程、息抜きにと……先に申し上げますがそれなりに時間は取られますぞ?」

「その分の勉強はさせてもらえましたし」


 事実6時間そこそこ(ログイン前にも勉強自体はしているので合わせればもっと多いが)、しかも割と集中力を保ちながら費やしたのだから、1日目としては上等の部類と思う。


「……それに……馬車の中で思ったんです。チャットも使わず、ゲージもマップもウィンドウも消してそれで、みんなと……離れ離れ、って言うのも変だけど……ともかく、」


 照れ臭いけど言っておこう、息を吸って。



「ちょっと寂しかったので……私、もっとみんなと(遊び)たいんですよ」



◇◇◇◇◇



「『さーて! じゃあ改めて出ぱーつ!』」


 街道へ続くサミーラ村の端で、気合い十分に叫ぶセレナにみんなも「『「『「おー!」』」』」「キュイー!」と応え、走り出した。

 ダンジョンに着くまでは相変わらず馬車の中で勉強に勤しむ。過ぎ去っていく周りの様子はてんで分からないけど、パッパカパッパカと鳴る蹄はどこかさっきよりも軽快で、馬さんたちの機嫌も良さそうに思える。

 セバスチャンさんが「馬にも好感度がありますからな、きっと応えてくれるでしょう」と言っていた通りの好調ぶり。

 だからそう時間は掛からずに目的地へと到着した。


 馬車から降りれば夜の帳が辺りには満ちている。馬車には精霊器のライトが備わっているものの、周囲すべてを照らすには至らない。


(あれは……建物?)


 夜空の雲を遮るように、自然物とは思えない直角なシルエットが浮かんでいる。

 しかし……その大きさが尋常でない。近付けば見上げねばならないくらいの高さと、左右にある小高い山の峰を塞いでいるのだ。

 セバスチャンさんがランタンで照らすとそこには風雨にさらされてはいるものの、崩れたり壊れたりした様子の無い建物はまさしく壁のよう。


「ダンジョン、って……ここ?」

『はい。古の城塞と申しまして、かつてモンスターの侵攻から王都を守る為に作られた要害でしたが瘴気の湧出により放棄されましてな。製造区画も備えていた為に現在ではモンスターと化したゴーレムが量産され徘徊しておるのです』

『ただ、そう言う手前、物流の為に通る為の道は用意されてる。ほら、あそこだ見えるか?』


 天丼くんが指差す先には、なるほど鉄格子付きの城門がある。隙間は狭く人を通さない役目がはっきりと分かる。

 中は3車線でも入りそうなトンネル状になっていてずいぶんと広い、これなら馬車も楽々通る。出口までは多少遠く、向こうにも同じく鉄格子で塞がれているのが見える。ただ……。


「これ、どうやって開けるの?」


 そんなトンネルを丸々塞ぐ重厚そうなその城門はとてもおいそれと開くようには思えない。


「『ソコが問題なのよ』」


 セレナはディファロスくんからひらりと飛び降りた。


「あの城門、開閉自体は出来るらしいけど専用の機械が必要なのよね」

「ですが我らの手には無く、内部で入手せねばならないのです」

「もちろんボスモンスターを倒すのも開ける条件でもある。見ろよ」


 天丼くんが指差すのは門の周囲、凝視すると……ぼんやりと黒い靄が掛かっている。


「まさか、瘴気?」

「正解。ボスを倒さなきゃ解除されず開かない。一度倒せばもう現れないらしいが……俺らはまだだからな。で、一番奥までダンジョンアタックな訳だ」


 馬さんたちは近くのセーフティーエリアで待っていてもらう事になった。大きめの公園程度の広さはあるから窮屈な思いはさせずに済むと思う。


「みんな、少しの間ここでゆっくりしていてね」

「ぶふるるる」

『キュキュキュ』


 そうして馬さんたちがセーフティーエリアに放たれるのを見送って内部に続くと言うドアを目指す。

 重厚な扉をギギギと力に任せて開き、私たちはダンジョン・古の城塞へと挑む為に踏み出した。


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