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契約者達と魔法女王とお師匠様

 直哉達が黒い服の男達と戦い始めた頃、目的地でも戦いが行われていた。黒い服の男達を蹴散らしながら二人の女と竜が西にハアハアと息を乱しながら走っていた。しかしその必死の逃走も岩が転がる荒地が見え、終わりの時を迎えようとしていた。森から出て荒地に入ればもうそこは不確定領域の中になるのだ。

 「お師匠様、迷惑かけてすみません、もう良いです。私をおいて逃げてください」

 「馬鹿言ってんじゃないわよ。弟子の分際で私の心配とは偉くなったもんだね」

 「・・でもお師匠様がアレーヌに乗れば不確定領域の山でも月が変わる前に走破出来るはずです」

 「残念だけど逃がす訳にはいかないな・・・・まさかこんな所に所在不明の契約者がいるとは思わず、不意を突かれて此処まで逃走を許してしまった。しかしその抵抗も此処までだよフェルミー。其方の女性を師匠と呼んでいた以上、どうせ状況説明はしたんだろう?僕としてはフェルミーが知った事が伝わっていたら困るんだよ。情報がもれて研究の邪魔をされる可能性は摘み取っておきたいんだ。其れに契約者のお前が同じ事をしないとは限らないだろ」

 フェルミーに話し掛けていた男が暗い目をして私を見て最後に告げてきた言葉に私は反射的に嫌悪感を抱いて厳しく反論した。

 「吐き気のする冗談は言わないで欲しいわね。契約石なんて触りたくもないわよ。私はお前みたいな欲望に取りつかれた奴らの相手をするのが嫌だから隠れ住んでいるんだよ」

 「欲望ではない・・・だがその様子だとやはり知ったのだな・・・此れは生かしてはおけなくなったな。ふむ、だが一応聞いておくとするか、僕の研究に協力しないか?お前も色々言ってはいるが結局は人間達に排除されてこんな所に居るんだろ折角のお仲間だからなるべくなら殺したくはないんだが・・・」

 私を見る暗い目に何らかの感情が見て取れたがこの男がやった事に怒りを覚える私は冷たい声で告げた。

 「冗談は止めて欲しいわね。私は二百年以上共に暮らした契約相手をお前の様に扱う心算はないし、弟子を口封じに殺そうとする様な奴に仲間だ何て言われたくないわね」

 「・・・・所詮お前も奴らと同じか・・・・・そうか・・なら死ねば良い」

 男が怨嗟の混じった声を出してすぐに男の体の変化が始まった。髪の色が緑に変わって目が金に変わりそして魔力が数倍に跳ね上がった。男から威圧感と共に殺気が漂い、弟子が小さく悲鳴を上げるのが聞こえた。

 「其れが契約融合と言う訳ね。悍ましさしか感じられないわね」

 「貴様、仲間をよくも・・・・・」

 今まで黙っていたアレーヌが押し殺した怒りの声を上げていた。

 「僕の契約相手だし、如何しようと貴女には関係ないでしょう。抑々意見の違いから対立して僕を殺そうとした上に、負けると分かったら自殺までしようとしたんだぞ。あの当時に契約石の試作品が出来ていて中に入れていなかったら僕は死んでいただろう・・」

 言葉の途中で男の目に憎悪が混じり、いきなり口から光線を放ってきた。私は完全に不意を突かれ棒立ちになったが、アレーヌが素早く動き、口から光のブレスを放って相殺してくれた。

 「ありがとう、アーヌ。弟子を頼む」

 頷くアレーヌを見た私は素早く魔法を放った。手始めに閃光球を放ったのだが男は鼻で嗤い、避け様とせずに直撃をくらっても平然としていた。

 「くくく、愚かですね。今の僕は竜を超える肉体強度を持っているんです。動かないでいてあげますから古代魔法を放ったら如何ですか?」

 「・・・・良いわ、試してあげる。光集いて星となれ、幾千の輝く星よ地に落ち我が敵を撃て」

 空に千を超える光球がまぶしく輝き、大気がビリビリと震えた。光球は大気中を漂う無魔力を吸収してドンドン大きくなっていき、限界まで大きくなった光球から落下が始まった。流星の様に落ちてくる光球の重圧は死を感じさせるもので弟子は声も出せない様だった。

 「くくく、ははははは」

 男の笑い声が響き、直後に最初の光球が直撃した。轟音と共に地面が陥没して、その場に次々と光球が落ちていった。何度も何度も光球が落ちて来て地震の様に大地が揺れ、森の木々が消滅し、遠くの鳥たちが一斉に羽ばたくのが見えた。

 「・・・この魔法を受けて無傷だったら命をかけないといけないわね」

 「命をかけた所で僕には勝てませんよ」

 クレーターの様になった場所からアッサリと跳び上がって来た男は上半身の服が消滅しているだけで肉体には掠り傷すらついていなかった。

 「・・・・アーヌ、弟子を連れて移動しなさい」

 「何を言っているんですか。お師匠様を置いて行ける訳無いでしょう」

 「悪いけど邪魔なの。ルミーがいたんじゃ全力で戦えないのよ」

 私とルミーが視線をぶつけ合っている所に無粋な男の声が響いた。

 「僕は逃がす心算なんかないし、全力が出せないなら先にフェルミーを殺す事にするよ」

 ハッとした私が自らに障壁を張ってフェルミーの前に立つと、私の体に衝撃と痛みが走った。

 「ううう、フェルミー無事?」

 「はは、はいお師匠様が庇ってくれましたから・・・。そんな事より喋らないでください。すぐに治療しますから」

 フェルミーから治療を受けて周りを見渡すと、アーヌがブレスを放って必死に牽制しているみたいだった。だが如何贔屓目に見てもアーヌが劣勢で男が手を抜いているのが理解出来た。何とか打開策を考える私の目に遠くで何かが光った様に見えた。私は反射的に大声を出していた。

 「アーヌ、クレーター」

 私は弟子を連れてクレーターに飛び降り、アーヌもすぐに私の意思を悟って飛び降りてきた。男だけが私達のとった突然の行動を笑いながら眺めていた。

 「何の心算・・・・・・・・・」

 男の言葉の途中で光が飛んで来た。驚愕の表情で男が光に呑みこまれる姿を私はクレーターの中で下から見ていた。

 「お師匠様この光は魔法ですよね・・・・・」

 「・・・・ええ、何所から放ったのか知らないけど巻き込まれたら大変な事になっていたわ」

 冷や汗を掻きながら弟子の言葉に答えると、弟子は否定して欲しいと分かる不安が滲み出た表情で震える声を出した。

 「・・・・その私の勘違いだとは思うのですが・・・もしかしてこの魔法・・・お師匠様の使った魔法より威力がありませんか?」

 「・・・あるわよ。敵か味方か分からないけど契約者の私を超える力の持ち主だと思って間違いないわ。でも私がいるから何とかして見せるわ」

 肯定の言葉にゴクリと喉を鳴らす弟子に笑顔を取り繕って余裕を装っていたが、心の中では悟られない様にこの力の持ち主が敵だった場合は逃げられないし、勝てないと考えて戦慄していた。そして不意に前に感じた強大な力の事が脳裏に過っていった。暫くして光が収まったのを確認した私は跳び上がって状況を確認して絶句させられてしまった。景色が一変していて、光が通った場所には傷付いた男以外何もなかった。特に遠く三キーラ以上離れた不確定領域に見えていた巨岩まで消えていたのには契約者の私でも驚かされ、その力に恐怖が生まれていた。私は必死に恐怖を押し殺してから笑顔を取り繕って傷付いた男に話し掛けた。

 「・・・ふふふ、流石だわ。私でもあんな遠くの巨岩を消すのは難しいのに・・・。でさあ、この状況であんたはまだやるの?」

 浅くない傷を全身に負って暗い目をして私を睨みつけてくる男に意図的に明るい声で話し掛けると怒りを押し殺した声で返事をしてきた。

 「・・・・油断していたよ。まさかこんな隠し玉があるとは考えていなかったし、契約者が囮だとも思わなかった。だがこの代償は高くつくよ」

 男が血が流れ焼け爛れている深い脇腹の傷を庇い、此方を警戒しながら引き揚げようとして踵を返した。私はその背に何故か反射的に話しかけていた。

 「名ぐらい名乗ったらどうかしら」

 「ふん、名などとっくの昔に捨ててしまったよ。そうだなゼロンとでも呼べばいいさ。僕を傷つけた奴にもこの借りは必ず返すと名と共に伝えておいてくれ」

 ゼロンがこの場から確実にいなくなったのを魔法で確認した私はホッと息を吐いて緊張を解いていた。傷を負ったゼロンを最初に見た時は、この場で殺しておこうと思ったのだが、ゼロンの目つきは手負いの獣その物で手を出せばそれ相応の痛い目に遭わされると気づかされた。だから私はすぐに考えを変えてゼロンが私の言動を見て勘違いして退く様に仕向けたのだ。此れから相対する事になる攻撃をした相手は真の意味で未知の相手だから、今は少しでも万全の態勢で会うべきだと考えていた。

 「アーヌ、ルミー、未知の相手と会うから気を抜いては駄目よ。それと戦いは極力回避する方向で話をするからその心算で行動してなさい」

 頷くのを見た私は気を引き締め直して未知の相手と相対する為に待ち構えた。


 その頃国境では龍殺巨砲の準備がようやく終わった所だった。

 「随分時間がかかったものだな?もう一クーラもすれば日が暮れるのではないか?」

 「申し訳ありません。五大神官の契約石が思った以上に使えなくて一つではなく二つ使う為に調整を変更していたのです」

 「それで使えるのか?使えないなら今日一日無駄にしただけでなく、攻撃せずにいた所為で敵を休ませた事になるんだぞ。兵士達の士気にもかかわるから確りと答えてくれ」

 私が睨みつけるとカルロンは薄ら笑いを浮かべて声を出した。

 「モルガン殿、ご心配なく、今から攻撃します。おい、発射準備にかかれ」

 「ハッ、龍殺巨砲を起動します」

 途端に周囲にブゥゥゥゥゥゥと言う重低音が不気味に響き、バチバチバチバチと巨砲の内部で放電する時の様な音が鳴り始めた。

 「おい、この音は大丈夫なんだろうな」

 「問題ありませんよ。初期の段階ではこの時点で集まった力が制御出来ずに爆発しましたが、今はちゃんと五大神官の契約石を使っているので安心です」

 爆発と聞いて私が不安に思っていると一つの事に気づいた。

 「・・・段々と音が大きくなっているぞ?」

 「集魔装置が集めている力が大きくなっているからです。ああ、それより撃つ時は轟音がしますから耳を塞いだ方が良いですよ」

 「充填の第一段階を突破しました。第二まであと半分です」

 「第二を超えたら撃ちなさい。この程度の砦なら其れで十分でしょう」

 「了解しました。第二到達まで十、九、八・・・・・・三、二、一、撃てーーーー」

 声と同時に轟音が響いた。耳を塞いでいても意味がないと思われる音が響く中、巨大な光球が明滅しながら砦に向かって飛んでいくのが見えた。


 「攻撃をやめて敵は何をしているのでしょうか?」

 「この砦を落とせないと思って諦めたのなら良いのだが・・・」

 「将軍、流石にそれは無いでしょう」

 私達が話していると突然音が響いて来た。何事かと思って窓から外を見て見ると敵の陣地に巨砲が見えた。

 「おい、あんな巨砲が今朝までにあったか?」

 「いえ、五メーラを超えていそうな巨砲があれば見落とすはずがありませんし、報告されているはずです」

 「くそ、敵の狙いは此れか。魔法使い達に障壁と結界の強度を最大まで上げる様に指示しろ」

 「了解しました」

 部下が慌てて部屋を出て行くのを見届けてから、嫌な予感がした私はすぐさま巨砲の事を紙に書いて伝書鳥に預けて飛ばした。

 「何とか無事に届いてくれれば良いのだが・・・・」

 私が独り言を呟いている内に敵の準備が出来たみたいだ。巨砲の中から轟音と共に光の球が飛んで来るのが見え、十メーラを超える光球は瞬く間に障壁にぶつかった。普通ならはじかれて消滅するはずの光球は一向に消滅する気配を見せず、障壁の方が押され始めていた。

 「くそ、やはり無理か。ガルトラント卿がサザトラントの避難民と追って来て好き勝手した馬鹿共の討伐の為にこの場に居ないのが唯一の救いだな」

 音を立てながら明滅を繰り返していた光球はとうとう内部の力を解き放った。

 「申し訳ありません、ガルト・・・・・・・・・・・・」

 光があふれ出て全てが塗り潰されていった。あふれ出た光は砦の周囲百メーラを覆いつくし半クーラ近く消える事がなかった。


 「はははははっははは、素晴らしい。第二段階で此処までの威力とは嬉しい誤算です。此れなら第五段階まで力を集めれば龍でも殺せるでしょう。ははははっはは」

 確かに一撃で砦を跡形もなく消し飛ばしたのは驚愕させられたが、狂喜して笑うカルロンの姿に周囲の兵士達はドン引きだった。私も正直話しかけたくなかったが、立場上そう言う訳に行かないのでしぶしぶ声をかけた。

 「えーとカルロン殿、凄まじい威力なのは分かったから落ち着いて貰え無いかな。今後の行動を話したいんだ」

 我に返ったカルロン殿は不思議そうな顔をして首を傾げた。

 「今後?砦は落としたのだから次はガルトラント卿が治めるガルーンに進軍するに決まっているでしょう」

 「そうしたいのはもっとも何だが此の計画書では砦の物資を接収して進軍せよとなっているんだ」

 私の白い視線に気づいたカルロン殿は何もない砦の跡地を見て引きつった顔になって震える声をだした。

 「いい、いや、分かっているとも私が持ってきた物資を分けるから問題無いだろう」

 「ははは、それは良かった」

 自分の笑いが渇いているのが良く分かった。一つ目は今言った理由だが問題は二つ目の方だった。確かに驚愕する程の威力でまだ上があるなら龍を殺せると言うのも頷けるものだ。だが私の脳裏には前に見た龍の集団が刻み込まれていて、此の砲には致命的な欠陥があるから龍の集団には絶対に勝てないと考えていた。

 「カルロン様、使用した契約石の三割が使用不可能になりました。交換が必要です」

 「・・・そうですか・・・中心は問題無いのですね?」

 「はい、今の所問題はありません」

 「なら代わりの契約石を入れて置いてください」

 「了解しました。ですが此のままの消費量ではあと数発が限度ですよ」

 「・・・・それは困りましたね。モルガン殿、如何にか出来ませんか?」

 ほらきたと心の中で呟きながら用意していた返事を返した。

 「何を期待しているのか分からなくもないが、期待はしないでくれ。敵が馬鹿でないなら避難は済ませているはずだし、今回の様に龍殺巨砲を使えば捕虜も手に入らないのだ」

 私の返事に顔を顰めるカルロン殿を見ながら、私は大量の契約石を消費する量産する事も出来ない上に撃つ回数すら制限された砲など信用出来ないと考えていたし、何より私は司令官で人さらいではないと考え、顔には出さない様に怒りを押し殺していた。

 「・・・確か五大神官の奴らが契約石の力の引き出し方を研究していたと報告を聞いた記憶があります」

 「カルロン様それなら奴らの私物を探せば何か出て来るかも知れません」

 「ならすぐに動きましょう。モルガン殿は物資の受け渡しをしたら休んでいてください。どうせ今日はもうすぐ日が沈みますから」

 「分かったそうさせて貰おう。ただ明日は日が昇ってすぐに行動を始めるからその積りでいてくれ」

 私の返事を聞いた瞬間にカルロン殿は足早に去っていった。


 俺達が偶然出来た道を走って目的地にたどり着くと、其処には強張った表情の二人の女性と初めて見る生物がいた。驚きと共に小声でシグルトに尋ねた。

 「・・・・シグルトあれは・・・」

 「うん、ロベールの想像通り竜なんだ」

 俺が会った事の無い最後の五幻種の竜と聞いて気を引き締めると、此方の様子を窺っている相手に声をかけた。

 「初めまして俺は龍人でロベールと言います。一人は魔法女王フェルミーだと思うのですが、もう一人はどちら様か伺ってもよろしいでしょうか」

 「私は此処にいる竜のアレーヌと契約した契約者でメルフェリと言う者よ。フェルミーは私の弟子だけどロベールは何故弟子が此処に居る事を知っているの?要件次第では抵抗させて貰うわ」

 厳しい視線を向けて来るメルフェリに俺は隣にいるタマミズキを指して答えた。

 「此処にいるタマミズキは天狐の女王の姉です。其方のフェルミーが天狐の入った契約石をオークションで手に入れたと聞きました。俺達の目的は其れの回収と特一級の指名手配を受けた理由の確認と理由次第では保護も考えています」

 俺の言葉を聞いてメルフェリ達は驚きと警戒した表情を浮かべて重たい声で尋ねて来た。

 「あなたは契約石を如何する心算なのかしら」

 「中に入っている天狐を出して治療した後、里に連れて行きます」

 「嘘です。お師匠様は無理だと言いましたわ。この天狐は魂が傷ついていて既に手遅れだと聞きましたわ」

 厳しい声と視線に晒された俺は肩を竦めるとタマミズキに視線を向けた。

 「私は女王の姉として天狐を代表して告げるわ。私の仲間を返しなさい。此処にいるロベールは既に二匹の天狐を治しているし、何匹もの魔狼を治療した実績があるわ。返さないのなら天狐は貴女を敵と認識する事になるわ」

 タマミズキが威圧しながら睨みつけると、怯えたフェルミーの前にアレーヌが立ちふさがって此方を逆に威圧して来た。

 「止めなさいアーヌ、契約石を渡しても良いわ。でもこの場で天狐を治しなさい。それが条件よ」

 「駄目なんだ。僕は貴女達を信用出来ないから、僕の契約者の力を見せる心算は無いんだ。其れでも見たいと言うのなら僕達の仲間になって決して裏切らないと誓って貰うんだ」

 「今日は仲間になれと誘われる日みたいね。でも私は断らせて貰うわ」

 きつい視線で警戒をするメルフェリに俺はため息を吐いて疑問を投げかけた。

 「はあ、貴女達は何を警戒しているんですか?俺は契約者だから契約石を手に入れても意味がないでしょう?其れとも何らかの意味があるのですか?」

 「ふふふふふ、ロベールの言葉を聞いて分かりましたわ。私達は意味が無いと思っていますが、あちらは私達の知らない何かを知っていて違うのでしょう。そしてそれ故に指名手配されているのですわ」

 タマミズキの言葉にハッとしてフェルミーを見ると明らかにビクついていた。

 「契約石に関わった内容なら話し方を変える必要があるな。タマミズキ、天狐を含めても良いか?」

 「この場の交渉に限って許可しますわ」

 俺は一度深呼吸してから態度を改めて話し始めた。

 「今一度名乗らせて貰う。俺は五龍星の子供のシグルトと契約した龍人でロベールと言う。龍と炎鳥と魔狼と天狐を代表して話をさせて貰いたい。俺は契約石の完全な破棄の為に行動している。何か知っているなら教えて欲しい」

 俺の名乗りに目を見開いて動揺するメルフェリ達が落ち着くまで待つ事にして、その間に交渉の落としどころを考えていた。

 「龍と天狐はこの場にいるから良いけど炎鳥と魔狼の代表である証明は出来るのかしら?」

 「バルグーンに妹がいるのですが、妹は炎鳥の王女と契約していて魔狼の二番手を飼い狼にしています。俺自身も五龍星、魔狼の長、炎鳥の王には直接会った事がありますし、何より龍三百匹に命令できます」

 俺の最後の言葉にアレーヌすらも凍り付いてしまった。

 「あなた方は今此の赤帝国で起きている事を何所まで把握していますか?」

 「私はここで静かに暮らしているだけだから今の事は知らないし、元々私を利用しようとする奴らから身を隠す為に極力他人とは接触しないの」

 「私は追われてこの国に入る時に知った情報が最後です。未確認ですが帝都がなくなったと聞きました」

 何も知らないに等しい二人と一匹に、俺は今までの事で話しても良い部分だけを話して聞かせた。茫然としているメルフェリ達に俺は、今度は其方の事情を話して欲しいと告げた。俺の声に我に返ったメルフェリ達は暫く迷っていたが覚悟を決めた表情をして話し始めた。

 「細かい所は省くけど、私はお師匠様が契約者だから天狐の入った契約石と言うのに興味を持ってオークションに出て手に入れたわ。手に持って調べたらすぐに良くない物だと分かったの。其れでオークションの主催者と話をしようと思って部屋に向かったら、そこで一人の男と主催者が揉めていて話を聞いてしまったのよ」

 フェルミーはため息を吐くと忌々しそうな声で話を続けた。

 「二人はこう話していたわ。あの契約石は契約融合の研究に必要なものだぞ。私は上の指示に従っただけだし、それに契約融合は完成したと聞いている。もう必要ないだろう。ふざけるな、生きている時は身体能力と魔力が上がるだけで死なないと変身も出来ないし、変身しても殆ど自我がないから最後にしていた行動を続けるだけなんだぞ。僕みたいに変身と解除を自分の意思で出来ないと人間が強くなった事にならない。其処まで聞いた時に私は見つかって逃げ出す事になりました」

 俺達が話しの内容に顔を歪めているとメルフェリが厳しい顔で話し掛けてきた。

 「あなたにそのもめていた男のゼロンから伝言を預かっているわ。傷つけられた借りは必ず返すそうよ」

 突然の言葉に訳が分からず首をひねる俺にメルフェリがクスリと笑うと、にこやかな声で話し掛けてきた。

 「そう言えば助けて貰ったお礼がまだだったわね。ありがとう、とても感謝しているわ。貴男があの強力な光の魔法を放たなかったら追い詰められていた私達は死んでいたわ。私達はあそこのクレーターに居たから無事だったけど、ゼロンは直撃を受けて深手を負って撤退して行ったのよ」

 状況を説明された俺は頬がピクピクと動くのが止められ無かったし、そんな俺の心の中では絶叫が上がっていた。明らかにヤバい人間と思われる男に知らない間に攻撃していて自分が報復対象になっているなど正直知りたくなかったと心底思った。

 「・・・・・・・ゼロンとはどんな奴なんですか・・・」

 「私と同じで竜と契約した契約者で自分の契約相手の竜を契約石にした外道よ。契約融合で髪の色と目が変わって竜より強靭な肉体になれるのが確認されているわ。実際私の魔法を受けて平然としていたわ」

 「あらまあ、それは私の仲間を襲った奴かもしれませんわね。それは良いお話を聞けましたわ」

 俺がゼロンの情報を聞いてますますウンザリしていると、どことなく嬉しそうなタマミズキの顔が目に入り、非難の視線を込めて見つめていたらニッコリと笑いかけられた。

 「仲間を傷つけた敵が向こうから来てくれるのなら私にとっては良い報告ですわ。不安なら私がずっと傍に居てあげますわよ」

 面白がっているのを隠そうともしないタマミズキに苦笑しているとシグルトが真面目な顔で話し掛けてきた。

 「ロベールには僕が付いているから安心なんだ」

 「そうだな、タマミズキが傍に居たら敵どころじゃなくなるしな」

 頷き合う俺達にムッとした顔のタマミズキが面白くなさそうにしていた。

 「さて話を戻しますが、ゼロンは何所に所属しているのか分かりますか?」

 「ギルド本部よ。あの男の所為で私は特一級の指名手配を受けたのよ。私がギルドに聞いた話をして助けを求めたら逆にギルドの機密情報を盗んだとして拘束されそうになったのよ。その時にギルド長が口を滑らせた内容から推測すると彼奴がギルドの創設に関わっている可能性すらあるわ」

 「・・・・ギルドは真っ黒だな。ギルド本部が何所にあるか分からないと言うのは本当か?」

 「ええ、私はギルド本部は存在していないと考えていて、全てのギルドで話し合って決定したものをギルド本部の命としているのだと思っていたわ。でも今回の事でわかったけど本部は何処かにあるわ。もっとも真面なものでないのは確定しているけどね」

 「・・・だとするとやはりギルドはこの国から無くす必要があるよな。国の基盤が次々と無くなるのは本当にやめて欲しいな。此れは本当に覚悟を決めないと崩壊するかも知れないな・・・」

 難しい顔をしてブツブツと呟く俺を周囲の皆が見つめていたが、俺はその視線に気づかない程深く考え込んでいた。一通り考えを纏めた俺は真剣な顔をしてフェルミーに話しかけた。

 「まだ契約石は渡して貰え無いかな?俺は契約融合などする心算はないんだけどな」

 「・・・・・・・・・・」

 先ほどよりはマシになったがまだ無理みたいなので話しを変えた。

 「なら俺達と一緒に来てほしい。一緒に居れば信用出来るか分かるし、敵が来た時も有利に戦えるだろう。それともどこか行く当てが有るのかな?最後にちょっと厳しい事を言うけれどゼロンが来た時に契約石を守れるか不安なのもあるんだ。俺は中に入っている天狐を確実に助けたいんだよ」

 グッと言葉に詰まったフェルミーを見てメルフェリが話し掛けて来た。

 「今日はもう日が暮れるから明日の朝まで時間を貰え無いかしら?弟子も色々あって混乱しているのよ」

 「他人事の様に言っている貴女にも一緒に来て貰いたいんだけどな」

 「・・・・私は契約者だから人前に出たら騒ぎになるわ。それに力を利用されるのは嫌なのよ」

 過去を思い出して顔を歪めるメルフェリに俺は真剣な声で話し掛けた。

 「メルフェリ、時代は変わっている。俺も契約者だけど自分の意思に反する事を求められた事はないし、リラクトンは龍が食糧を持って行くと子供が群がるんだぞ。まだ何所に言っても問題無いとまでは言わないが、俺達といるのなら大丈夫だと請け負えるぞ。抑々俺だけでなく妹も契約者で貴女より力が強いのだから、わざわざ貴女の力を利用するより俺達に頼んだ方が簡単だろう」

 「・・・・明日まで考えさせてちょうだい」

 「分かった。でも明日は早くから行動するからその心算でいてほしい。それと今日は何所に泊まるんだ?俺達は野営道具を持っているからどこでも良いと言えば良いんだが・・・」

 「襲撃されて破壊されたけど近くに私の住んで居た家が有るわ。其処まで行きましょう」

 メルフェリが歩き始めたので俺達は大人しく付いて行った。たどり着いた家は木の中をくりぬいて作られた家で、やはり大半の部屋が破壊されていたので大部屋で皆一緒に眠る事になった。香織は今頃何をしているのかな?などと、呑気に考えた俺は体に震えが走ったのを破壊されて出来た隙間風の所為だと考えてしまっていた。其れが大きな間違いだと思い知る時は間近に迫っていた。

 次話の投稿は26日の0時なのですが出来ない可能性があります。その時は19時以降に投稿します。申し訳ありませんがご了承ください。

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