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契約者達とフレイの行動とサザトラントの現状

 敵が来るのを待っているルードルに私は重苦しい重圧感のある声で話し掛けた。

 「ルードル、私は今から此処に来る者達を一人残らず殺す心算です。気に入らないのなら今の内にこの場を去ってください」

 「待て如何言う心算だ。主達がその様な事を許すとは思えない」

 一瞬で態度を変えたルードルが厳しい声で詰問してきた。

 「そんな事は分かっていますわ。ですが此処に来る者達の事を考えるとこの機会に殺して置く方が二人の為になるのです。此れから戦う敵はかつて炎鳥の森に入ってきて私とリオンを襲った敵で、直哉が私を助ける時に見逃した相手です」

 「・・・・・報復する心算なのか?」

 「違いますわ。その時に見た光景で条件が整えば直哉達が隠している秘密の一つに気づく恐れがあるのです。この部隊は私達を襲った部隊其の物で商連合国の部隊の可能性が高く、契約石に関わっているので知られてからでは遅いのです。この秘密は一度広まってしまったら取り返しが付かないもので、沢山の者達が二人に付きまとい続ける事になって真面な生活は送れなくなるでしょう」

 私が嘘でも冗談でもないと視線に込めて見つめるとルードルは難しい顔をして考え込んでから話し始めた。

 「・・・・此処は従うが戦いの後で詳しく話してもらうぞ。其れに納得出来なければ主に話させてもらう」

 「ええそれで構いませんわ。私は知ればルードルも同じ判断をすると確信していますわ」

 「そうか、後言って置くが直哉はフレイの変化に気づいているぞ。僕にわざわざ頼むと言ってきたし、フレイも声を他人にも聞こえる様に話していただろう。更に普段と違って潰すと自分から言っただろう」

 ルードルの言葉を聞いて自分が冷静さを失っていた事に気づかされた。深呼吸をして心を落ち着けると敵が来るのを静かに待った。


 暫くすると人の気配と足音が聞こえてきた。敵の居場所を音から判断して魔法の効果範囲に入った事を確認すると素早く魔法を使用した。私達と敵を囲む様に真紅の炎が地面を走り、十メーラ程の高さの真紅の炎の壁が出来上がった。慌てる敵を見ながら私は堂々と姿を見せてからあの時の男に話しかけた。

 「久しぶりですわね。二度と見たくない顔でしたが見た以上此処で死んでいただきますわ」

 男は突然出てきた炎鳥と魔狼に困惑し、更に私に顔見知りの様に話し掛けられて混乱したみたいだったが、暫くすると理解と共に嘲笑を浮かべていた。

 「お前あの時森で弟を殺された姉か?小さくなった所為で分からなかったぞ。無様に逃げる事しか出来ないくせにこんな所まで何をしに来た。報復とか言うなよ、お前の力では不可能だからな。そっちにいる魔狼は助っ人か?だがお前に程度に付いてくるのならどうせ大した力も持っていないのだろう」

 男が弟を殺されたと発言した時にルードルが動揺するのが感じられた。ルードルは私と話すリオンを見たばかりなのだから当然だ。私がルードルを見て頷くと愕然としながらも納得したみたいで男を厳しく睨んでいた。

 「助っ人?あの時と今の私は違いますわ。貴男達は死にたくなければ全力で戦って私を殺せば良いのです。私が死なない限り此の炎の壁は消えませんわよ」

 「そうかよ、ならあの時の炎鳥の様に殺してやるよ。あの時はどんな手段か知らないが屈辱的な目にあわされて逃がしたが二度は無いぞ。全員魔法を放て」

 男の言葉を聞いた者達から一斉に魔法が放たれたが、私は避ける必要を感じず、動かないでただ自分の中の力を覚醒させていった。動かない私に魔法が直撃すると思って勝利を確信した様に笑う男の姿が見えた時、私の全身から真紅の炎が噴きあがった。全身に真紅の炎を纏った私は自ら敵の放った魔法に向かって飛び込んだ。私に魔法が当たると真紅の炎が膨張して全てを呑みこんでいった。自分達が放った魔法が呑みこまれるのを見せ付けられた男達は愕然として私を見ていたが、そんな男達に私は薄ら笑いを浮かべながら冷たい声で告げた。

 「この真紅の炎を纏って戦う姿から私達は炎鳥と呼ばれているの。此の真紅の炎を纏える様になると大人と認められるわ。あの時の私はまだ纏う事が出来ずに逃げる事しか出来なかったけど今は此の通り纏えるわ」

 私の真紅の炎に威圧されたみたいに男達が後ずさっていたが気にする事無く話を続けた。

 「この真紅の炎を破る手段は何でも良いからこの真紅の炎の力を超える攻撃をする事だけよ。例えば圧倒的な速度、燃える前に攻撃して離脱する事ができれば問題無いわ。例えば強力な魔法、呑みこむ事の出来ないくらいの力で攻撃して炎ごと消し飛ばすの。例えばこの真紅の炎で燃やせない鉱物を使って作った武器や強力な魔力が籠った魔剣などで攻撃するの。他にもあるけれど理解は出来たでしょう。死にたくなければ全力で戦いなさい」

 私の喋るのをやめて前に進むと恐怖に耐えきれなかった兵士が斬りかかってきた。

 「うああああああああ」

 「ちきしょうがーーーーーー」

 私が避けずにいると剣が纏った炎に触れて一瞬で蒸発して更に相手の手から燃え移っていった。

 「があああああ・・・・・」

 「あああああああ・・・・・・」

 燃え移った炎は一瞬で体全体に広がっていき、消す間も与えず叫び声すら呑みこんで全てを焼き尽くした。そして後には何一つ残らなかった。仲間の最後に目を見開いて動揺する男達の姿が見えたが、私にとっては当然の結果なので気にせず前に進むと男の叫ぶみたいな命令が聞こえた。

 「良いか魔法や遠距離攻撃をし続けろ。あれも魔法のはずだから魔力が無くなれば消えるはずだ。周りの炎の壁も維持しているならかなりの魔力が消費されているはずだ」

 男の言葉に希望を見たのか雨の様な攻撃が私に向かってきた。魔法や弓矢は勿論、槍まで投げ付けてくるまさに全力の攻撃だったが私の炎は全てをアッサリと呑みこんでしまった。其れでも攻撃は続けられたが初めに矢が無くなって次に投げる武器が無くなって最後には魔力が尽きたらしく魔法攻撃も無くなってしまった。攻撃をかわす事無く無傷で受けきった私の姿を見た男達の顔に絶望が薄らと見えた。

 「・・・・・・くそ如何なっていやがる。お前の魔力は無限だとでも言うのか?」

 「いえそんな事はありませんわ。攻撃を受けて呑みこむ時に沢山の魔力を消費するのはその通りですわ。あのまま七日程攻撃を続ければ私の魔力も尽きたと思いますわ」

 「・・・・七日・・だと・・・・・・・」

 男はかすれる声で呟くと顔に絶望を浮かべて脱力した。そして膝をついて私に抵抗する意思を放棄した様に見えた。

 「ひいいいいい、来るな」

 「助けてくれ」

 「うわわわわわわ、逃げろ」

 指揮官が戦う意思を放棄した所為で統制を失った兵士達は自分勝手に行動を始めた。一番多かったのが逃げる者で私が追おうとするとルードルが話し掛けてきた。

 「僕が行こう。フレイだけが全て背負う必要はない。事情も分かったし、年齢的にも僕がやるのが良いだろう」

 そう言って私の返事も聞かずにルードルは逃げる者を追っていった。ルードルを見送ってから私を睨む視線に気づいて膝をついていた男に話しかけた。

 「何か言いたい事があるのかしら」

 「何もない化け物め。お前の様な化け物がいる世界で生まれたのが最大の不幸だ」

 「そう、なら次は人間だけが暮らす世界に生まれると良いわね」

 私は直哉達の世界の事を知っているので本気で言ったのだが、男にはひにくを言ったと思われたみたいで顔を歪めていた。そして男は暗い目つきをして無言で拳を握って殴り掛ってきた。素手でそんな事をすれば当然だが男は真紅の炎に焼かれる事になった。無言で私を睨みながら焼かれて消えていく男の姿を見て、私は言葉に出来ない複雑な気分を味わう事になった。その後炎の壁に飛び込んでまで逃げようとする者など色々な行動をとる者達がいたが私は心を押し殺して全てを炎で消滅させた。全てが終わった時には私の精神は疲労の極致にあった。

 「大丈夫か若い者にはきついだろう」

 「ルードルは平気みたいですわね」

 「まあ今更だな。長く生きていれば色々あって人間だけでなく色々な者と戦って殺しているからな。まあそれと同時に失ったものも沢山あるがな。フレイも一羽で背負う必要はない関わった以上僕も背負おう。今は余計な事は考えずに、様子がおかしかった事に気づいている直哉にする良い言い訳でも考えて置くと良い。主にも気づかれない様にしないといけないしな」

 私を気づかうルードルに私は今まで聞こうと思いながらも聞けなかった質問が口からこぼれ出ていた。

 「ねえ、何故ルードルは香織の飼い狼になったの」

 私の質問にルードルは顔を強張らせるとため息を吐いてから話し始めた。

 「はあーー、普段なら無視するとこだが今は主の契約相手のフレイしかいないし、弟の秘密を知ったから僕も話すが直哉達には絶対に言うなよ。主に叩かれた時に死んだ母親に叩かれた様に感じたからだ」

 「お母様が亡くなっていたのね。ごめんなさい悪い事を聞いたわ」

 「気にしなくて良い。千年以上前の事だ。父親の方は生きているのだが母親が馬鹿な息子を庇って死んでから喧嘩をして絶縁状態だ。だから知った秘密がどれ程重い物なのかは良く分かる。実際今僕はあの時その力があればと思ってしまっている。・・・フレイ弟を大切にしろよ」

 何処か羨望する様な視線を向けて来るルードルに不安を感じた私はきちんと詳細を話して置く事にした。

 「ルードル、香織の本当の両親は何年も前に死んでいるの。でも直哉は生き返らせないわ。香織の事を大事にしている直哉がしない以上出来ないのだと思うわ。後リオンの時に直哉は二百年の寿命を使っているわ。命の対価は命だけだわ。私の言っている意味は分かるでしょう」

 「そうかそれで兄妹で契約者になれたんだな。前からおかしいとは思っていた。しかしやはりこの秘密は危険だな。僕もその魅力に取り込まれそうになってしまった。フレイ説明してくれて助かった」

 頭を振ってから私を見たルードルの様子が普段のものに戻ったのを確認した私は安心して笑みを浮かべると声を出した。

 「ルードルお互いの秘密にかけて直哉に言い訳する時は一緒にしますわよ。さて急いで香織達の元に戻りましょう」

 憮然とした顔をするルードルを見て苦笑すると共に移動を始めた。私は心の中で二人の秘密は必ず守って見せると誓っていた。


 一人逃げた隊長を探しながら俺はシグルトに丁度良い機会だったので向こうの世界の事を簡単に話していた。

 「俺が刺された時に刺した男が興奮して色々口走った中に此奴を殺せば金が手に入ると言うのを聞いたんだが、後で落ち着いて考えて見たら此奴もと言ったみたいな気もしてきたんだ。あの時は刺されていて痛みに如何にかなりそうだったのと香織を守らないといけないと思って必死だったから細部をよく覚えてないんだけど、そう言う訳で俺は昔から香織の両親は事故ではなく殺された可能性が高いと疑念を抱いていたんだ」

 「その事を香織は・・・・・」

 「いや香織も母さんも知らない。俺が話したのは父さんと武俊さんだけだ」

 「今回動き出した弘嗣と言う人が関わっているはずだから警戒していると考えて良いのかな」

 「ああ当時の警察も突然現れた伯父を疑って調べたけど捕まった奴らと接触した形跡がなかったんだ。それに現れた後の弘嗣は香織の相続に文句も言わなかったし、自分も最低限の相続をしただけでお金への執着心も見せずに大人しくしていて付け入る隙を見せなかった。だから疑念には思っても皆何も言えなかったし、何より致命的だったのは彩希さんがその存在を知っていて認めてしまった事なんだ」

 「・・事情はある程度分かったけど此れから直哉は如何する心算なんだ」

 「俺の想像通りで罪を犯しているのなら白日の下にさらして裁きを受けさせる心算だ。今はまだ疑惑だから確実になるまでは武俊さんの目もあるし派手に動く心算はない。実際の所、手段を問わずに個人的な制裁を与える事だけを考えるのなら拉致して香織の炎で尋問すれば簡単なんだ。ただその手段だと法の裁きは受けさせられないからやらないだけだ」

 「えっと暫くは様子見で良いのかな?」

 「ああでも忌々しい事にそう遠くない時期に一族の集まりがあるから奴らも大人しくはしていないだろう。香織にも出席する様に言われるはずだ。今までは事件の事や子供だと言う事を言い訳にして欠席していたが、今回はもう無理だろう。俺は今回弘嗣達が動き出したのは、香織が初めて一族の集まりに顔を出す事になるからその所為もあると思っている。一応武俊さんに言って俺も行ける様に前から用意していたけど、まずは其処での話だな」

 うんざりした口調で話す俺に突然シグルトが態度と口調を変えて告げてきた。

 「ロベール、見つけたんだ。此処から右に百メーラの場所を走っているんだ」

 シグルトの言葉に俺は思考を切り替えて走る速度を速めてから返事をした。

 「そうかやっと見つかったか・・。シグルト要らぬ手間をかける事になって悪かったな」

 「・・・まあロベールが今回は家に帰っても親の事が心配で休めなかったから、ストレスが溜まっていたのは分かるんだ。だから剣の力を確かめると言う言い訳で、買ったばかりの剣を振り回して実際はストレスを解消したのも理解しているんだ。でも僕の気持ちとしては探すのが面倒だったんだ」

 シグルトにしみじみと語られた所為で余計に心の中の良心が痛んだ俺は白旗をあげて告げた。

 「分かった、次に帰った時は何か好きな物を食べさせてやるから許してくれ」

 「嘘だったらカリーナに報告するんだ」

 うわ香織に告げ口かよと思っていると前を逃げていた隊長が立ち止まって怒りの声を上げてきた。

 「手前らふざけるなよ。おかしな会話をしながら追いかけてきやがって真剣に逃げている俺が馬鹿みたいじゃねえか」

 「いや、みたいじゃなく本当に馬鹿なんだ。この空間は隔離されているから魔法を使っている者を倒さないと逃げられないんだ。だから無駄な事をしていたんだよ」

 「な・・・・・・・・」

 俺の言葉に愕然として言葉を詰まらせた男に俺は厳しい声で告げた。

 「お前には色々と聞きたい事がある。全て話して貰うぞ」

 俺の言葉にハッと表情を変えた男は逃げられないと悟ると自分の剣を首に突き刺した。首に向かう剣を見た時に咄嗟に男に魔法をかけた俺は男が即死する事だけは回避する事に成功した。

 「シグルト、俺が剣を抜くから魔法をかけてくれ。後悪いがこの男には聞きたい事があるから少し使うかも知れない」

 シグルトが頷いて魔法をかけるのを見て俺は剣を抜いた。途端に大量の血が流れたが何とか男が死ぬ前に傷を塞ぐ事に成功した。しかし俺は安堵する事も出来ずに自分から死のうとした男を見て戦慄していた。

 「何故・・俺は生きて・・いる?首に・剣を刺したはず・・・」

 かすれる声で話す男に俺は話し掛けた。

 「俺が魔法で治療した。またやっても無駄だからもうやるなよ」

 「くそ、死ぬ事すら出来ないのか・・・」

 「お前何故そこまでするんだ」

 「何故だと?そう教わったからに決まっている」

 そう言って自嘲の笑みを浮かべると男は全てを諦めた口調で話し始めた。

 「俺は元々サザトラントの孤児だったが、商連合国に連れて行かれて密偵や暗殺の訓練を受けさせられた。其処では命は消耗品で、訓練中に死者が出てもすぐに補充される毎日だった。だが普通に死ねた奴はまだましだ。裏切ったり逃げようとしたり、任務に失敗したりしたら怪しげな研究に使われて真面な死に方は出来ないのさ。何度か研究に使われた人間の最後を見たがあれはもう人間とは呼べない姿だったぜ」

 そう言って体を震わせる男の顔は見ていない俺達にもそれがどれ程悍ましい物なのか理解させるに十分だった。

 「今俺もお前達に捕まって任務に失敗したから生きていれば研究に使われる事になるが、俺はあんな姿にはなりたくない。知っている限りの情報は話すから死なせてくれ」

 男の言葉に俺は愕然とさせられながらも如何するのが良いか必死に考えていた。

 「おいお前此処で情報を話したら暫く俺の作った空間に入っていろ。そしたら俺がいずれ研究施設も含めて全て潰してきてやる。それなら死ぬ必要はないだろう」

 「・・・・・・俺は生きる為に色々やっている。今更助かろうとは思っていない」

 「煩いぞ、俺が目の前で死なれるのが嫌なんだよ。死ぬのなら全てが終わった後で気づかれない様に死んでくれ」

 「諦めた方が良いんだ。ロベールが死なせないと決めたのなら抵抗しても無駄なんだ」

 シグルトの言葉もあって男は何とも言えない顔をするとため息を吐いて頷いた。

 「はあ、俺に聞きたい事があるのだろう。さっさと質問しろ」

 「そうだな、まずは俺の名を誰から聞いたのか教えてくれ」

 「アラインとミネアだ。二人は商連合国に報告もなく何かに怯えながら逃げ続けていた。俺は上からの命令で暗部の部隊を連れて二人の捕縛と契約石の回収任務を遂行した。その時に新しい契約者の名としてロベールとカリーナの名を聞いたんだ。アラインとミネアは情報を吐かされた後研究所に送られたと聞いている」

 レクトンの町を壊滅させた奴らが、聞いただけでヤバいと分かる研究所に送られたと聞いて俺の中で因果応報だなと思う気持ちと流石にそれはと言う気持ちがせめぎ合っていた。

 「サザトラントでやっていた事を教えてくれ」

 「初めに受けた指示は対立している二人を戦わせて内乱を起こす事だ。だが途中から指示が変わって人間を捕らえて送れと言われた。連れて行く場所は国境だと聞いている」

 「待て殺していたのではないのか?」

 「殺しているのは貴族の部隊だ。俺達は抵抗して仕方ない者を除いて全ての人間を捕らえて送って、その後は隠蔽の為に火を放っている」

 「人間を連れて行く目的は分かるか?」

 「俺は知らないが知っている情報の中に龍でも殺せる何かの開発をしていると言うのがある」

 俺はシグルトと視線を合わせると頷き合った。たぶん契約石に関係するのだろうが嫌な感じがした。

 「お前達は男爵の事を聞いてきたな。其れに関連して話して置く事がある。俺が直接確かめた訳ではないがサザトラントの長男は既に死んでいる可能性がある」

 一瞬何を言われたのか理解出来なかったが、理解すると驚きと動揺に包まれた。

 「ななな・・・・何だと・・それは本当なのか?」

 「俺が無事な姿を確認したのは七日以上前になる。俺に言えるのは集った貴族が全員善人では無く、略奪や殺しを嬉々としてやる奴らも居ると言う事と、野心を持っていた者達が混乱を機に動かないはずがないと言う事だ」

 「では男爵を殺したのは・・・・・」

 「友人だったと言うのが本当ならお前が今考えている通りだろう。付け加えるとすれば俺以外の商連合国の者が関わっている可能性ぐらいだな」

 「今他に助けなければならない民はどのくらいいるか分かるか?」

 「此の村を除けば北の方にある貴族の村が何個かと東の方にある町だけだが町の人間は次男の部隊に襲われてガルトラントに逃げ込んだと言う話もある。ハッキリ言って此のサザトラントに真面な民はもういないと思って良いはずだ。サザトラント卿が治めていたサザントの町ですら事実上壊滅している状態だからな。其処ら中に死体が放置されたままになっていると言えば分かるだろう?」

 想像以上に酷い状態に俺が絶句していると男が話を続けた。

 「どちらの部隊も食糧を略奪で手に入れているからそう遠くないうちに食糧を求めて、リラクラントかガルトラントを襲う可能性が高いだろう。此れは商連合国にとって都合が良いから作戦の一部かも知れない」

 「・・・・・・作戦・・・・・まじかよ」

 正直途方に暮れてしまった。これ以上助ける人がいない事に安堵して良いのかも分からなかった。失われた命の数を想像して落ち込みかけた時シグルトが声を掛けてきた。

 「助けられなかった人達には悪いけど、今は助けられる人の事だけを考えるんだ。もう助ける人がいないのなら脱出してから考えても同じなんだ」

 シグルトの言葉に確かにその通りだと考えて気持ちを切り替えると話を変えた。

 「ありがとうシグルトもう大丈夫だ。後聞きたいのは研究所の位置と正体不明の敵についてだ」

 俺が男に尋ねると男は顔を顰めて考え込んでいた。

 「研究所は商都の地下にある。だが正体不明の敵については分からないな。俺の知る限り研究体に変化する力はないはずだ。後知っているのは天狐についてだな。天狐の入った契約石がオークションにかけられたと聞いた事がある。落札者の一人はSランカーの魔法女王フェルミーだったはずだ」

 俺達は契約石が売られていると聞いて怒りと不快な気分になったが何とか我慢して話を続けた。

 「・・・そうか、貴重な情報で助かった。最後に言っておく事と聞きたい事がある。商都だと研究所を潰すのは時間がかかる事になるが我慢してくれ。そしてお前の名はなんだ?」

 「・・・・・俺は天涯孤独だから何年かかっても問題無い。・・・俺の事はセイールと呼べば良い」

 「分かったセイール全てが片付くまで空間に入っていてくれ」

 そう言ってからセイールを空間に入れて俺達は香織達の元に向かった。


 「慌てる必要はありません。落ち着いて移動してください。私より前にいる人は安全です」

 私が最後尾をワザとゆっくり歩きながら声を掛けると遅れている分を取り戻そうと無理をして必死に歩いていた人達が安心したのか歩く速度を無理をしない速度に落として歩き始めた。

 「ふう、この年だと長距離を歩くのは辛いねえ。しかも行き先が死んだ親に絶対に入るなと言われた炎鳥の森だし、人生はどうなるか分からないもんだねえ」

 治らない病を患っているから此処に残ると言っていたお婆さんの言葉に私は笑顔で話し掛けた。

 「あはは、まだまだ長生きすればこんな事よりもっとすごい事が沢山体験出来ますよ」

 「だと良いんだけどねえ。まあそれはカリーナご自慢のお兄さんしだいだねえ」

 「大丈夫ですよ。お兄ちゃんなら大抵の事は何とかしますから」

 私の声が聞こえた人達が苦笑するのが雰囲気から伝わって来た。此の最後尾を歩く人達は其々の理由で初めは避難する心算が無かった人達だった。残して行くとお兄ちゃんが気にすると思った私は炎も使って強引に説得して回ったのだ。その時自分では気づかなかったのだが私はお兄ちゃんが、お兄ちゃんならなどと何度も口にしていたそうだ。その所為で説得は出来たのだが私がお兄ちゃんと口にすると笑われてしまう様になってしまったのだった。

 「おや、後ろから誰か来るみたいだねえ。討伐隊じゃないと良いんだがねえ」

 お婆さんの言葉に皆に緊張が走ったが私は後ろを見て一人安堵していた。

 「あれはお兄ちゃん達です。安心して良いですよ」

 「おや、そうなのかい。ならやっとカリーナご自慢のお兄さんに会えるんだねえ」

 お婆さんの言葉に周りの皆が期待の籠った目をしているのが感じられた。皆が注目する中お兄ちゃんが近づいて来て私に声を掛けてきた。

 「カリーナ待たせたな。討伐隊は倒したぞ。今の所、他に敵はいないから安心して良いぞ」

 「そっか、流石お兄ちゃん。此方は逃げないと言う人の説得が大変だったけど何とか全員説得して避難させる事に成功したわ」

 「そうか良くやってくれた。助かったよカリーナ」

 お兄ちゃんが私の頭を撫でていると横からお婆さんがお兄ちゃんに話しかけた。

 「わたしゃ、その説得が大変だった婆さんだがねえ。あんたがカリーナご自慢のお兄さんで良いのかい」

 「ご自慢か如何かは分かりませんがカリーナの兄は俺だけです」

 「おやおや成る程、この年まで色々な人間を見てきたがこんな雰囲気を持った人間は初めてだねえ。これは期待しても良いのかねえ?カリーナが言う所に依ると、あんたは泣いていると飛んできて慰めて、困っているとアッサリ解決方法を提示して、笑いながら誰にも出来ない事をやって、悪意や害意には即座に対処して守ってくれて、そして誰よりや・・・・・・」

 「きゃああああああああああ。ななな何言っているのお婆さん」

 お婆さんが話す内容に悲鳴を上げるとお兄ちゃんが驚いた顔で見つめてきた。見つめられて恥ずかしくて混乱した私はフレイを掴むと叫ぶ様に声を出した。

 「おおお、お兄ちゃん炎鳥との事もあるから此処はお兄ちゃんに任せてフレイと共に先頭に行くわ。じゃあ、お兄ちゃん後はお願いね」

 早口でお兄ちゃんに告げると私はフレイを抱えて脱兎の如く走り始めた。

 「ちょ、ちょっとカリーナ何をするのです」

 「主よ待ってくれ」

 フレイとルードルが声を出したが今の私には配慮する余裕はなかった。


 「まいったな。話があったんだが・・・・」

 香織がいきなり逃走してしまって肩を竦めていると俺を見つめるお婆さんの視線に気づいた。

 「何か言いたい事があるなら聞きますよ」

 「あんたは気づいているんだねえ」

 「俺に依存していて俺の行動が美化されている事なら言われるまでもありませんよ」

 「・・・・此れはいらないお節介だったかねえ。どうも老い先が短いといけないねえ」

 「そんな事はありませんよ。後老い先が短いと言うのは病気の所為ですか?なら問題ありませんよ」

 俺はそう言うと笑いながら魔法をお婆さんにかけて治療した。お婆さんの驚く顔を見ながら俺も良く歩いていられたなと驚いていた。前に同じ病気を治療した事があるが此の病気は全身に痛みが走るので真面に動けないはずなのだ。

 「・・・・・・成る程全てが美化されている訳でもないんだねえ」

 お婆さんの言葉に首を傾げているとシグルトが訳知り顔で頷いて声を出した。

 「カリーナが話すロベールの話しは半分ぐらいが正しいと思っておけばいいんだ」

 「半分でも現実にいる人間には見えないんだがねえ。少なくともわたしゃ、この年までそんな人間は見た事ないねえ」

 俺を見て何故か含み笑いをするお婆さんとシグルト見た後、俺は他にいる病人や怪我人の治療を料金説明をしながら始めた。

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