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契約者達と二つの家族

 光が空に上がって行くのを見てから消えるまで私達は退避の為の移動を中断していた。

 「うわーー、お兄ちゃん派手な魔法を使ってるけど大丈夫なの?」

 「やり過ぎですわ・・・・」

 「直哉なら負ける事は無いだろ。まあ注目を集めたのが問題だが今はむしろ俺が助けてほしい」

 ロベルトさんの言葉に振り向くとお兄ちゃんの言葉に顔を怒りに染めたミルベルト卿が此方に向かって来る所だった。

 「ロベルト貴様どの様に自分の説明をしていた?儂が耐えられなかっただと?儂が我慢出来なかったのは当時の貴様だ。アリスを妊娠させておきながら母娘を食わす稼ぎもない男だったお前だ。家族の為に戦うのは当然の事だぞ。其れすら出来なければ結婚も会う事も許さんわ。最後に何時から儂は支配され当主でなくなったのだ?まだまだ儂の目の黒いうちは譲るなどありえんわ。其れとも何か儂に譲らねばならない落ち度でもあったか?譲る程の功を立てる事が出来たのか?なら述べるが良い」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 怒るミルベルト卿にロベルトさんは過去の事もあって何も言えない様だ。だが私の見た所ではロベルトさんの事を今は認めていて、認めた男が何も反論しない事がじれったくて苛立っているのだろう。逆にロベルトさんの方はまだ自分が認められていないと勘違いしている所為で反論をしないのだろう。此れではお互いに先に進めないのは明白だ。お兄ちゃんがやった事の補佐は妹の私にだけ許された権利だとの考えに依って私は二人の会話に口を挟んだ。

 「ロベルトさん言いたい事は言わないと駄目ですよ。ミルベルト卿はもう少しハッキリ今のロベルトさんを認めている事を伝えてください。じゃないと時間の無駄ですよ」

 私の言葉に二人は一瞬で動きを止めるとロベルトさんは茫然として立ちつくし、ミルベルト卿は顔を真っ赤にして反論してきた。

 「わわ儂は此奴を認めてなどおらんわ」

 「照れ隠しにそんな事言っても無駄ですよ。先程ご自分で言っていたではないですか。当時の貴様と言うのは今は当時とは違うと言う事でしょう。さらに其れすら出来なければと言っていますが、つまりは其れと言う部分は認めているのでしょう。最後に譲る程の功を立てたと言いましたが、抑々何も期待していなければそんな事言いませんよね」

 「ぬう・・・・・・・・・・・・・・」

 言葉に詰まったミルベルト卿は無言で去って行った。茫然としていたロベルトさんがその背中を見えなくなるまで見続けてから話し掛けてきた。

 「俺は認められていたのか?」

 「当然だと思うわよ。だって認めもしない男に大事な娘と結婚させるはずないでしょう。多分ミルベルト卿は周りを黙らせる何かを見せてほしいのよ。手柄でも才能でも物でも兎に角、周りが黙る様な何かを・・・・・」

 「・・・・・・・・俺は心の何処かで貴族では無いから認められないと思っていた」

 「そんな事ないわよ」

 「ああ今よく分かった。此れから言われた何かを探すさ」

 強い意志を目に宿して決意を述べるロベルトさんを見て、あとはお兄ちゃんがやるだろうと考えて再開した退避の為の移動をしながら早くお兄ちゃんが私の元に戻って来ないかなと考えていた。


 リラクトンに向かう途中にある村でレクトンの町に向かっていた騎士団と合流して小休止を取っているとミルベルト卿に連れられてまだ眠っているはずの公爵がやって来た。

 「貴女が直哉殿の妹の香織殿で良いのかな」

 「はい公爵様、私が香織です」

 公爵は何も言わず長い間私を見つめると頷いていた。訝しく思っているのが顔に出たのか公爵が謝罪と共に話し掛けてきた。

 「いやすまなかった。ただ目覚めた時に貴女の兄が私の怪我を治して更に敵の足止めを一人でしたと聞いたのでどの様な人物か聞こうと思ったのだ。正直に言って貴女を見るまで信じられなかった。しかし貴女が私を見る目を見て成る程と思った。私は公爵として様々な視線に晒されてきたが此処まで普通だからこそ異質な視線は初めての事だから今ワクワクしているのだ」

 「意味が分からないのですが?」

 「そうだな、私は公爵だ」

 「???・・・知っていますが?」

 「はははは、公爵と聞いたら心に壁を作ってひれ伏したりするのが一番多い行動だ。だが貴女の行動は何分かり切った事を言っている?と言うものだ。根底に同じ価値観があればありえない行動だよ。つまり今私は未知の存在を目にしていると言う事だ。これでワクワクしないなんてありえない。未知と言う事は今ある常識では量れないのだから不可能と思われている事も覆せるかも知れない。はははは」

 笑いながら話す公爵に如何答えて良いか分からず周りを見回すとミルベルト卿以外の人は視線を逸らした。唯一視線を逸らさなかったミルベルト卿を見続けるとため息を吐きながら動いてくれた。

 「リグレス様其れくらいにしてください。皆困惑していますぞ」

 我に返った公爵は咳払いをすると話を始めた。

 「失礼した。さて香織殿リラクトンに着いたらすぐに直哉殿と話したいので伝えて貰いたい」

 「了解しました。私の元に帰って来たらすぐ伝えておきます」

 「いや怪我をしてもう駄目だと思っていたけど人生何が起きるか分からないものだ。リラクトンに帰って直哉殿と話すのが楽しみだ。しかし香織殿は私の元に帰ると言うのだね。悩みがあったら妻と共に話を聞くよ。ははははは」

 笑いながら去る公爵を見て唖然とすると自分が言った言葉の意味を考えてから気づいた私の顔は赤く染まった。


 「ただいま香織」

 姿を隠して音速をはるかに超える速度で走りやっとの思いで香織を見つけた俺は嬉しくなって何も考えずに其のまま香織に声を掛けた。

 「きゃーーーーー」

 香織の悲鳴に驚き魔法の維持が出来なくなって姿を現すと俺を見た香織は喜びと安堵を浮かべたあと少し怒ったの顔をして睨んできた。

 「お兄ちゃん、姿を隠して後ろから近づくなんて何を考えているの?心配していた私を脅かして何をしたかったの?」

 香織に問い詰められて自分の行動が不味かった事に気づいた俺は即座に詫びて言い訳をする破目になった。シグルトの援護もあって何とか半クーラで説教を済ませると今度はロベルトが話し掛けてきた。

 「おい親父さんが怒ってきて大変だったぞ」

 「思った事を言っただけだし致命的に不味い事になってはいないだろ?」

 「なったかも知れないだろうが。親父さんに当主の座を狙っていると思われたら如何するんだ」

 「それは無い。結婚する時に娘か娘のオマケを狙っているのかは調べているはずだ。愛情に偽りがあったらロベルトは今生きているはずが無いな」

 顔を引きつらせているロベルトを見ながら話を続けた。

 「初めてミルベルト卿を見た時に頑固そうで融通が利かない爺さんだと分かったよ。あんな感じの人は言葉が少ない所為で誤解されていそうだ」

 横目でロベルトを見ると思い当たる節があったのかため息を吐いて考えこんでいた。

 「それに不味い事になっても香織が何とかしたはずだ。そうだろ香織」

 「うんちゃんと、お兄ちゃんが此れから行動しやすい様に出来たと思うわ」

 香織から居ない間の詳細を聞いて二人でニヤリと笑って話しているとロベルトが不安そうに見てきた。

 「そんな不安そうな顔をするなよ。別に悪い様にはしないから大船に乗った気持ちでいろよ」

 「泥船じゃない事を祈るぞ」

 「任せておけ。リラクトンに着いたらまずは公爵の快気祝いと言う名目で肉を献上して皆で食べよう。他にもリトリの実やイサカの実を皆に配ろうじゃないか。此れは士気を揚げる狙いもあるがロベルトがやる事によって周りに認めさせる心算だ」

 「待て持っているのは二人なのに俺が前に出るのはおかしいだろ」

 「道理を枉げないのは良い事だが今回は目を瞑れ。もう大分待たせている事を考えろ。機会を逃す必要はないだろ」

 「だが俺は其処までされても返せる物がない・・・・だから・・・・」

 「なあロベルトあとで俺達の最大の秘密を教えるから其れを墓場まで持って行くと約束しろ。そしてその事で起きる事を仲間として補佐してほしい」

 俺の言葉に考えこんでいるロベルトから香織、シグルト、フレイと視線を移したが皆異論は無い様だ。フレイなどは仕方ないですわねと微笑ましいものをみる視線を向けてきていたが気づかない振りをして必死に誤魔化した。

 「俺を信用してくれるのは嬉しいが、俺は家族が大事だから約束を守れる保証が出来ない」

 「其処まで求める心算はないよ。家族が大事なのは俺達は全員そうだからな。だからお互いの家族に何かあったら皆で出来る限りの力を使って解決する心算だ。此れは仲間になったら拒否できない事だ」

 「ねえロベルトさん、私の本当の両親はすでに亡くなっているんだよね。だから今の機会を逃して次の機会が必ずくるとは思えないのよね。今回だってミルベルト卿が腕を怪我していたでしょう。此れからの事を考えると何があるか分からないわよ」

 ロベルトは頭をガシガシと掻くと表情を改めて頭を下げた。

 「感謝する。今回は借りて置くが此の借りは必ず返す」

 「気にするなよ。其れより俺達の秘密を知ったらどんな顔をするのか今から楽しみだ。くくくくく」

 「おかしな笑がもれているよお兄ちゃん。人を不安にさせてからかうのは趣味が悪いわよ」

 「おいおい俺だけを悪者にするなよ。シグルトとフレイだって少しは想像しただろ」

 「冤罪なんだ」

 「そうですわ。私は抗議しますわ」

 「皆が全く想像しなかったとは思えないがまあいいだろう。如何やらリラクトンに着く様だから話は此処までにしよう」

 それとなく視線を逸らす面々を視界に収めて俺は公爵との話し合いに付いて考えを整理していた。


 俺達は公爵に許可を取って厨房に近い空き部屋を使って食材を出してから、あとをロベルトに任せると公爵の部屋に向かった。部屋に入ってすぐに隔離して公爵に俺達の事を説明した。アッサリと俺達の事を目を輝かせて受け入れてしまった公爵に驚いているとメイベル様が話し掛けてきた。

 「直哉殿私からはまずはお礼を言っておきます。夫を助けてくれて感謝します」

 「いえ此方にも考えがあっての事ですから」

 「無事で良かったです。私もお兄ちゃんも急いだのが無駄に成らずにすんでほっとしている所ですよ」

 「私の怪我は明らかに致命傷だった。まさに命の恩人だ。出来る事があったら言ってくれ」

 「今は思いつきませんので何か頼みたい事が出来たらと言う事にして頂けませんか」

 「うむ了解した。何時でも言ってくれ。さて今度は私が帝都で何があったか話す番だな」

 そう言うと公爵は一度口を閉じると静かな声で語り始めた。

 「緊急の貴族議会が始まって議題が説明された。第二皇子のべサイル殿下が契約石の開発に成功したと言って魔狼の入った赤い宝石の様な物を見せたのだ。基本は直哉殿の説明と同じだが二つ違う所があった。それは契約石は神が神の加護を人に昇華させ作らせて人に与えた、人以外の全ての生物を入れられる物で神が人こそが此のファーレノールの覇者として相応しいと認めた証だと言っていた事と中に入れた生物は至福の中で罪を許されて来世では人間として生まれ変わると言っていた事だ」

 俺と香織はとんでもない寝言を聞かされた気分で憤然とし、シグルトとフレイは殺気が漂っていた。

 「シグルト、フレイ落ち着いてくれ。馬鹿共は必ず後悔させてやる」

 俺の言葉にシグルト達が落ち着いたのを見て公爵が話を続けた。

 「契約石の力が強大で人が如何やっても今まで使えなかった古代魔法を使える様になると言うのは魅力的だが他種族を襲って入れると言うのが不味過ぎると議会の大半は否定的だった。皇帝陛下も契約石が強大でも其れだけで他種族を相手にして戦って勝てるとは思えないし、更には恨みを買った状態で負ければ本当の意味で破滅する事になるから今赤帝国がそんな危険な賭けをする必要が無いと言って契約石の導入は否決されたのだ」

 俺達は否決されたと聞いて皆安心していた。此処で満場一致で賛成しましたとか言われたら俺はこの世界の人間と仲良く生活する事は諦める事になっただろう。

 「だが否決されたべサイル殿下は憤激して机を拳で叩くと立ち上がり、お前達は契約石の力を過少評価している今こそ赤帝国が頂点の座に輝く時なのにそんな弱腰で如何すると言って契約石を掴むと魔法を放ったのだ。会場には魔力を拡散して使えなくする結界が張ってあったのだがまるで効果が無かった。私は何とか魔法を受けても怪我で済んだが陛下は死亡、皇太子殿下も致命傷を負って倒れているのが見えた。その後逃げる私達貴族にメルクラントとバルクラントの兵士が襲い掛かってきて帝城から帝都に出るまでにサザトラントの当主を筆頭に反対していた貴族の半数は殺された様な気がする。私は更に負傷してもう出血で意識が朦朧としていたが何とか護衛隊長と合流して帝都を脱出してリラクトンに向かう様に指示した所で意識を失ったみたいだ」

 皇帝が死亡したと聞いた所でメイベル様の顔が歪んだが俺の視線に気づくと大丈夫ですよと言う感じで淡く微笑んでいた。

 「失礼ですが今の皇位継承順位は如何なっていますか?」

 「皇帝と皇太子が死んだのなら皇太子の子供ですが確実にもう処分されているでしょう。追っ手がバルクラントの兵士だけだったのはその為でしょう。次がべサイル殿下で続くのが私と夫そして私達の娘になるのですが・・・・」

 「わあ娘さんがいるのですか?何歳なんですか?」

 「香織殿ミーミルは十歳だが問題があってな。生まれつき目が見えないのだ」

 「ええ・・そんな・・・・・」

 「私達も手を尽くしましたが生まれつきのものなので如何にも成らないと言われました」

 「お兄ちゃん・・・・・」

 香織が如何にかしてと視線で訴えてきた。俺はため息を吐くとシグルトに問いかけた。

 「見て見ないと分からないが最悪魔狼と同じ位減る可能性がある」

 「・・・・・・また父さん達に怒られるかも知れないんだ。今回は次々代の皇帝になるかも知れない人なんだから怒られるのは嫌だけど魔狼と同じ位ならまあ良いんだ」

 「貴男達はお人よし過ぎますわ。まあ一番減らした私が言えた者ではありませんわよね」

 フレイの言葉に俺とシグルトはお互いを見て苦笑すると話の分からない公爵夫妻に告げた。

 「俺ならミーミルちゃんを治せるかも知れません。一度合わせて貰えませんか?」

 夫妻は顔を見合わせて相談するとついて来てほしいと言って部屋を出て行った。


 「ミーミル入るわよ」

 メイベル様が声を掛けて皆で部屋に入った。目を瞑った綺麗な銀髪の女の子がいた。

 「お母様如何かなさったのですか?」

 「ちょっと貴女の目を見て貰おうと思って人を連れて来たのです」

 「うむ今度は本当に治るかも知れんぞ。何と言っても私の負った致命傷を治したくらいだからな」

 「お母様私の目は治りませんわ。これ以上お金を使う必要はありませんわ。無駄な事にお金を使うなど無意味だと子供の私でも分かりますわ。それとお父様は何時致命傷を負ったのですか?私は何も聞いていませんが?」

 自分の娘の諦めの入った言葉と厳しい質問に怯む夫妻に変わって俺が話し掛けた。

 「初めまして直哉と言います。目が治らなかったらお金を取ったりしないから少し見せてくれるかな」

 「今度の人は随分若い声ですわね?お金を取らないと言うのは本当ですか?」

 「ふふふ、大丈夫だよ。お兄ちゃんはまだ公爵の治療費すら貰ってないのよ。むしろ此方の方が散財している所なのよ。だから安心して良いわよ」

 香織の言葉に安心したのか表情を緩めると目を開いた。綺麗な真紅の瞳に見とれると背後から早くしろと威圧されたので魔法で調べて見ると驚く事が分かった。この子の目に魔力があるのだ。契約して得た知識から類推すると多分此の瞳は遠見の瞳だと思われる。此の事を皆に告げると皆驚きに包まれた。

 「私の目は治るのですか?」

 「治るも何もない元々異常はないんだよ。見えない理由は魔力の制御が出来ていないからだよ。こうすれば一時的に見える様になるはずだ」

 「ああ・・・私・・・今・・見えて・・・・・・」

 突然見える様になって驚きながら涙を流す娘を見て夫妻が娘を抱きしめて泣いていた。六半クーラ程経って落ち着いた公爵達は恥ずかしそうにして声をだした。

 「ミーミルの目は何時まで見えるのですか?」

 「今は俺が調節しただけだから一クーラ見える様になればいい方だな。ミーミルちゃんの目は見たい物を意識して魔力を制御して初めて見る事が出来る。ただ目を開ければ見える訳ではないかわりに例えば此処から帝都を見る事も必要な魔力があれば出来る遠見の瞳だ。自分の目の前を見るだけなら訓練すれば七日から十日ぐらいで出来る様になるはずですよ」

 「訓練と言っても普通の魔法の訓練とは違うのだと思うが如何すれば良いのだ」

 「明日の昼過ぎに一度帰らなければなりませんが一日ぐらいでまた戻ってきます。そのあとで良ければ香織に指導させる心算です」

 「そうか宜しく頼む」

 「はい任せてください。ミーミルちゃん宜しくね」

 「ふむ、それなら直哉殿達が今いる客間からでは遠いな。ミーミルの部屋の近くの客間を用意しよう。其処に移ってくれ」

 「それは・・・警備の問題があるのでは?」

 「今更だな。此処までされて信用出来ないなら殆ど全ての人を疑わないといけなくなるさ。それより二人の隣の部屋を用意させるからロベルトにも部屋が変わる事を伝えておいてくれ」

 部屋を出ようとするとミーミルが声を掛けてきた。

 「あの・・ありがとうございます。・・・あと傍にいる生物は何なのですか?」

 「・・・・・俺の左にいるので良いのかな」

 「はいそうです」

 如何やら遠見の瞳は隠れていても見える様だと思い紹介する事にした。

 「俺の傍にいるのがシグルトで香織の傍にいるのがフレイだよ」

 「うんよろしくなんだ」

 「私が見えるのなら香織と一緒に訓練を手伝いますわ。その時にお話ししましょうね」

 「公爵様悪いのですがミーミルちゃんに説明して貰えますわよね」

 「ああ責任を持ってしておく」

 「今日の食事の席にはミーミルちゃんも出席するのは如何でしょう。俺達がいれば目も見えるし今日は食事の食材も凄いし公爵と娘が共に回復したとなれば盛り上がると思うのですが」

 「あの行きたいです私」

 突然叫んだミーミルに皆が驚いたあと夫妻は嬉しそうに笑い出した。

 「分かったよ。あとで直哉殿達の部屋に使いを出すので此処にきてほしい」

 「分かりました」

 ミーミルの頭を撫でながら嬉しそうにしている公爵達をおいてロベルトの元に向かった。


 ロベルトの元に行くと何と料理人と一緒にロベルトまでリトリの実の皮をむいていた。

 「何をやってる。悪いが話があるから一緒に来てくれ」

 「何をやっていると言われても数が有り過ぎて時間がないから手伝っていた訳だ。悪いな此処までだ。呼ばれたんでな」

 「じゃあ私も此処までにしましょう」

 そう言って何故か隣にいた女の子がついて来ようとした。俺は戸惑いながら声を掛けた。

 「御嬢さん如何言う心算ですか?」

 「まあ御嬢さんだなんてお上手ね。私はこの人の妻ですわ。ほほほほほ」

 朗らかに笑う笑い声を聞きながら俺の頭の中は真っ白になった。そして我に返った俺の心には犯罪の文字が浮かんだ。目の前の女性と香織を比べると殆ど変らない様に見える。

 「ロベルト本当に此の人が話に聞いたアリステアさんで間違いないんだな?」

 「ああそうだ。俺の妻でミリステアの母のアリステアだ」

 「うわおじさんが追い回される理由が分かるわ。何歳年下の女性に手を出したのよ」

 「いや待て二人とも勘違いしているぞ。俺とアリステアは同い年だぞ」

 如何見ても贔屓目に見ても三十代にしか見えないおっさんと下手をすると十代後半にしか見えない女性が同い年とか理解不能だ。ファーレノールでは此れが当たり前なのかとシグルト達を見てみるがどちらも驚愕していた。

 「皮をむきながらこの人から色々聞いたの。だから私もこの人の妻として聞かせてくれないかしら」

 「一応聞いておきますが此れから話す内容は後戻り出来ない内容ですよ」

 「理解しているわ」

 皆異論はない様なので二人を連れて新しく用意された部屋に向かった。


 部屋に入ってすぐにシグルト達の事を何時もの様に説明した。

 「さて此処までが公爵達も知っている話で此れから話すのが最大の秘密だ。明日の昼過ぎに俺達は一度家に帰るんだが帰る家は異世界にあるんだよ。つまり俺達二人は異世界人と言う事だ」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・あらまあ」

 マジマジと正気を疑う様な視線を向けてくる二人に苦笑しているとようやく我に返ったロベルトが話を始めた。

 「・・・・まあいい。俺がしなければいけない事を教えてくれ」

 「俺達は自分の世界の日常があるから七日程で一度帰らなければならないからその時の面倒をみてほしい。具体的にはその時やっていた事を引き継いでほしい。またいない間に起きた事の報告だ」

 「報告はともかく引き継ぎと言っても長く一人で出来るとは思えないぞ」

 「一日で戻るからそれなら出来るだろ?」

 「一日なら問題無いが一日でいいのか?」

 「僕が使う転移魔法は異世界を転移する時に七日程時間を調節出来るんだ。それを利用して直哉と香織は二重生活を送っているんだ」

 ロベルトはとうとう引きつった顔のまま凍り付いてしまった。

 「貴方達のご両親は此の事を許しているのね?」

 「勿論説得していますよ。今頃私とお兄ちゃんの帰りを待っているでしょうね」

 「そう、なら良いわ。私達夫婦は協力するわ。子を持つ親として心配する気持ちは理解できるから私達が協力する事をご両親に伝えてくれるわね」

 「ありがとうございます。必ず両親に伝えます」

 話を終えてから歓談しているとミリステアさんが呼びに来た。ミーミルの部屋で公爵達と合流して会場に向かった。


 会場に入ると如何やらすでに皆席に付いているみたいで人々の視線は公爵と共に現れた俺達に注目している様だ。

 「皆そろっているな。私は重症を負ったがこのとおり完治して健在だ。安心してほしい。更に今日は良い報告がある。私の娘の目が見える様になったのだ。まだ完治した訳ではないがそう遠くないうちに普通に見える様になるとの事だ。そして此処にいる直哉殿と香織殿が私達の治療をしてくれた大事な客人だ。皆覚えておいて欲しい」

 ミーミルと俺達に興味、驚き、喜び、称賛、嫉妬、奇異、敵意と様々な視線と言葉が掛けられた。此処まで沢山の人々の視線を浴びた事が無かった俺と香織は恐縮しながら作り笑いを浮かべていた。ただし俺は気になる視線を向ける者達の事を心に留めておく事にした。

 「さて今赤帝国は大変な時期にある。明日からは忙しくなるだろうが今は一時忘れて楽しんでほしい。今日の食材は此処にいるミルベルト卿の娘婿が私と娘の祝いと明日からの苦労の労いをかねて提供してくれた物だ。提供された食材はデルワー熊の肉一頭分、リトリの実一万個、イサカの実一万個、他に数品程提供してくれた」

 話をしている間に料理が運ばれて来たが皆凍り付いた様に動かずに目の前の料理を見つめていた。もっとも混乱しているのはミルベルト卿だろう。イサカの実だけでも金貨千二百枚だ。他の食材の値段を考えたら余裕で家が建つのだ。そんな大金をポンと出すのはミルベルト卿でも無理だからロベルトが出したと言われても信じられないのは当然だ。

 「きききき、貴様何をした。真面な手段で此れだけの食材を用意出来るはずがないわ」

 「お父様・・・・・」

 義父と娘から疑いの目を向けられてロベルトは一瞬動揺したがすぐに静めて反論していた。

 「この食材は全て問題ありません。公爵様が問題のある物を出すと思いますか?」

 「うむ、ミルベルト卿もう少し娘婿を信用しては如何かな。皆も見ていないで食べてくれ。料理が冷めては食材が無駄になる。それに私の娘も早く食べたそうだしな」

 「お父様何を言うのですか」

 娘の抗議に笑いながら公爵が食べ始めると皆も安心したのか食べ始めた。その後は普段食べられない物に皆喜びながら食べて歓談していた。時間が経ち歌を歌う者、酒を飲んでつぶれる者が出始めて頃合いだと思った俺はロベルト夫妻に話し掛けた。

 「ロベルトこの父さんが隠していた秘蔵の酒をやるからミルベルト卿を連れて部屋で飲みながら家族で話して来たら如何だ。俺達の事も軽くなら話して良い」

 「それは・・・・」

 「あら、ありがとう」

 俺の気持ちを察したのかアリステアさんが礼を言って家族を連れて行った。

 「上手くいくと良いねお兄ちゃん」

 「そうだな・・・・」

 声に出さないシグルト達と皆で上手くいく様に祈った。その後公爵と明日の事を話して許可を取り、魔道具を受け取ると俺達も部屋に戻って眠りについた。


 「あの食材は如何やって手に入れた」

 「色々と取り引きをして譲って貰っただけだ」

 親父さんと俺の視線がぶつかったが親父さんが先に視線を逸らし酒を飲んだ。

 「この酒も儂は飲んだ事のない物で上物だな・・・・。この様な物を普通に渡す相手に危険はないのか?」

 「危険と言ってもこの皇帝が殺されている状況で言っても笑い話にしかならないだろ。むろん危険はあるが信頼はしている。何と言っても俺と大切な物が同じだからな」

 俺が右腕を見たのに気づき顔を険しくすると厳しい口調で詰問してきた。

 「もし儂があやつらを認めないと言ったら如何する」

 「ミルベルト家を滅ぼしても良いなら妻と娘を遠ざけて放置だな。滅ぼしたくないのなら親父さんを排除して俺が当主になる」

 「貴様の口から当主になると言う言葉を聞く日が来るとは思わなんだわ。だがその言葉を言う覚悟が無いはずの貴様が言う以上確信しているのだな」

 また酒を飲んで親父さんが話し掛けてきた。

 「屋敷に入る事は認めてやる。当主はこの騒動が終わったら考えてやる」

 「お父様ありがとうございます」

 「お爺様・・・・」

 娘達を見ている親父さんを見て認められた喜びを噛み締めていると親父さんに睨まれた。

 「何をヘラヘラ笑っておるか。おかしな事をしたら即刻叩き出すからな。あとあの二人の事で話せる事は全て話せ」

 「軽くで良いなら話そう。それ以上は自分で聞いてくれ」

 直哉と香織そしてシグルトとフレイの事を話してあとはお互いに無言で酒を相手に注いで飲み続けた。翌朝つぶれた俺達を一番近くの俺のベットに一緒に寝せた妻と娘の所為で親父さんから罵声と拳を貰う事も知らずに俺は認められた喜びに包まれ眠っていた。

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