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伯爵家の五男ですが、公爵家に当主になりました。  作者: highvall


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第54話

 俺はただのだだっ広い草原に居た。

 見晴らす限りなにもなく、くるぶしくらいの背丈の葉っぱが風に揺られている。

 こうやってみると領境というものが人間の尺度で決められ、実際に境なんてないのがよくわかる。


 俺はそんな光景を眺めていると、街道上の先から一団が近づいてくる。

 こちらも300人程の兵士で、向こうもそれと同じくらいの人数だ。


 今回、ここに集まったのは戦争のためではなく、捕虜引き渡しのためだ。

 奴らの中から代表者と思しき、老人の騎士が歩み出る。

 俺達からはクルトを送り出す。


「……当主様はご無事なのだろうな?」


 そう問いかける老人の騎士に、俺は兵士に目配せを送り、彼らの前に捕虜となった貴族や騎士たちを曝け出す。


 老人の騎士はその姿を確認すると、一つ頷き、後ろの集団に合図を送る。すると、彼らの中から木箱を抱えた執事と思しき人物が現れる。

 その執事は、老人の一歩後ろに控えるとその木箱中身をこちらによくわかるように曝け出す。

 木箱の中身には金貨や宝石など、今回の捕虜の身代金というべきものが詰まっていた。


「確認させてもらっても?」


 クルトがそう確認すると、木箱を抱えた執事は一歩前に歩み出て、手の届く距離に近づく。

 クルトは、その木箱の中から適当な金貨を選ぶと、それを凝視し指で折り曲げた。

 金貨って指で折り曲げれるのか……。いや、オーラを使える騎士だからこそか。


 クルトはそれが本物の金貨であることを確認したようで、こちらを向いて頷く。


 俺も目配せし、騎士を伴って捕虜を送り出す。


 老人の騎士は、木箱を執事から受け取り、クルトは騎士から捕虜の手綱を受け取る。

 お互いに手綱と木箱を交換することで、捕虜交換は成った。


 俺は敵の一団に戻りつつある元捕虜たちを見送りながら声をかける。


「次回攻めてくるようであれば容赦はしない。だが、内通をしてくれるというのであれば報いると約束しよう。《《彼ら》》のようにな」


 俺の声に、彼らは睨みつけるだけで返事を返さない。

 彼らは、そのまま敵の一団へと戻っていく。


 露骨すぎたかな……。

 まぁ、これでやつらも少しはお互いに疑心暗鬼になるはずだ。もしかすると、敗戦の責任でいくつかの弱小貴族は消えるかもしれないが、襲ってきた時点で同情する余地はない。これも乱世の定めだ。


 クルトも、木箱を抱えて戻ってきた。


「さて。帰る前に一つ寄り道したいところがあるんだ」


 こんな何もない草原でどこに寄り道するというのかと、クルトを含め家臣団は頭にはてなマークを浮かべる。


「東部まで来たことだし、村の視察をな」


 見飽きた平原を移動し、近場に遭った村を目指す。


 村の建物が見え、近づくにつれその全貌が浮き上がってくる。

 麦畑だったもの、家屋だったもの。

 生活の基盤が破壊され、人間の営みの痕跡がわずかに残る程度であった。


 そう。ここは先の戦いで、略奪を受けた村なのだ。


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