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伯爵家の五男ですが、公爵家に当主になりました。  作者: highvall


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第5話

 公爵家に来てから一か月が経とうとしていた。

 執務室には紙とインクの匂いが立ち込める。そんな一室にはカリカリとペンを走らす音で満ちていた。


「なぁ……エーリッヒ。いつになったら終わるんだ?」

「……公爵閣下。口を動かすより手を動かしてください。そうしないと終わるものも終わりません」


 俺とエーリッヒと他数人の家臣で公爵家の領地の運営を行っていた。

 住民同士の喧嘩による裁判や商会から借りた食料の振り分けなど、することは多岐にわたる。仕事量も減るどころか書類が増えてるような気がするんだが…。

 ヴェルナー? あいつはバカではないが、めんどくさいことからは逃げて爺と鍛錬しているはずだ。裏切者め。

 これもあれも全部、レイラ嬢以外の一族や騎士を根絶やしにした結果の人材不足であった。誰だよこんなことしたのは。まぁ俺の父親なんだが。


 コンコン。


 ドアがノックされる音が聞こえ、誰が来たのか確認するとレイラ嬢という事だったので、入室を許可した。


「公爵様…さきほどヴァイワール伯爵様よりお手紙が届きました」

「ありがとうレイラ嬢」


 俺はお礼を言って受け取る。

 最初は口もきいてくれなかった彼女だが、ここ最近はすこしではあるが会話してくれるようになった。大きな進歩だ。ギャルゲーみたいにこのまま攻略していくぜ! まぁギャルゲーしたことないんですけどね。


 俺は封を切り、手紙を読む。

 手紙の内容は、父親からの参陣命令だった。

 内容自体も俺と数人の騎士のみで兵士は連れて行かなくていいらしい。戦力として宛にしてるわけではなく、政治的なパフォーマンスだろう。

 俺は読み終わった手紙をエーリッヒに手渡す。


「すまんが、俺は足抜けさせてもらうぞ。後は頼んだ」


 エーリッヒに何か言われる前に、俺は逃げるように執務室を去った。

 俺はヴェルナーとヘルベルトを呼び出し、出発の準備を始める。

 そこに携帯食を携えたレイラ嬢が訪ねてきた。


「……ご武運を」


 俺はレイラ嬢から携帯食を受け取り、感謝を伝える。


「ありがとうレイラ嬢」


 まぁ実際顔出すだけだし……。

 俺はヘルベルトとヴェルナーを伴い、領内のことはエーリッヒに丸投げして出立した。


「さて。行くぞ爺と裏切者」

「アイン様ひどくないすか!?」


 俺はヴェルナーの嘆きを笑い飛ばしながら、伯爵領へと向かった。




 伝えられた合流地点では、すでにうちの伯爵派閥軍が展開しており敵方のシルリア地方における反ヴァイワール連合軍も丘から見下ろせる位置に布陣していた。まぁ反ヴァイワール連合軍もバルティア公爵家があったからなんとかなっていたものの、バルティア公爵家が離脱した今となっては、ただの烏合の衆になり果てていた。


 到着した陣地には兵士たちのテントがびっしりと並んで、まるで小さな村のような相を呈している。その中央にはひときわ大きなテントが鎮座している。

 俺は父上や派閥の主だった者が集まっていると思われる先ほどの大きなテントへと案内される。


「バルティア公爵様いらっしゃいました」


 そう案内に告げられテントへと足を踏み入れる。

 ざっと数十人は入りそうな広さだ。床にはカーペットなども敷かれ、置物は机が一つ。

 机を挟んで奥側には父上がおり、父上までの道の両脇には騎士や寄り子の貴族家など強面集団が並んでいた。


 俺は跪き口上を述べる。


「ヴァイワール伯爵様の命により、バルティア公爵。参上致しました」

「うむ。来てくれて感謝するバルティア公爵殿」


 俺の口上に父上が満足げな顔を浮かべる。

 バルティア公爵家がヴァイワール伯爵家に従属していることを周囲に喧伝するための芝居だ。


「さて到着したばかりで疲れたであろう。少しばかり休むといい。ケルマン男爵よバルティア公爵を案内せよ」

「はっ! 畏まりました」


 そう言って列から一歩前に出てケルマン男爵は、俺にアイコンタクトを送ってきた。

 彼に促されるまま、出て案内されたテントで腰を落ち着ける。


「お疲れのようですな公爵様」

「やめてくれ兄上」


 俺が苦笑いを浮かべると、面白そうにくっくっくと兄上が笑った。

 何を隠そうこのケルマン男爵が、婿入りした俺の3つ年上の伯爵の三男であるルメール兄上だ。


「まさか弟に爵位を越されるとはな。思ってもみなかった」

「俺が一番驚いてるよ」

「くくっ。まぁそうだろうな。アインは何するか分からないのによくもまぁ父上も公爵家を任せたものだ」

「実の弟にひどくないですかケルマン男爵?」

「おや、これは失敬。お許しくださいバルティア公爵様」


 芝居がかかった素振りに二人で笑う。互いに爵位などは気にする間柄でもないのだ。

 ひとしきり笑った後、俺はテントの外に目を向ける。


「今日は、兄上の魔法が見れるのですか?」

「あぁ。開幕の一発は私が打ち込むことになっている。久しぶりに弟が見ているんだ、派手な奴をぶちこむとしよう」

「兄上の魔法はどれも素晴らしいので好きですよ」


 まぁ純粋に魔法の才能が俺にはなかったから羨ましいってのもあるんだが…。

 実際兄上は19歳という若さで中級の魔法が使える天才だ。魔法というのはいつまでたっても俺の心を揺さぶる魅力があった。


「ありがとうアイン。任せてもらおうか。まぁ今しばらく旅の疲れを癒すと良い」


 そう言って兄上はテントを出て行った。

 俺は一人取り残されたテントで少し横になる。


 あれ? 爺とヴェルナーはどこ行ったんだ?

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