第44話
別動隊が出発するとのことだったので、俺は砦の外へ見送りにきていた。
「爺もヴェルナーも頼んだぞ。気をつけてな」
「えぇ。アイン様お任せ下され。エーリッヒもアイン様のこと頼んだぞ」
「勿論です」
彼ら別動隊は、北方から来る敵を撃破するために1500の兵で向かうことになる。
彼らが敵を待ち伏せしたのち、撃破し後背に回るまで時間を稼がねばならない。
ベテランのヘルベルトに若手のホープのヴェルナーもいる。事前の情報で北方の敵は騎士もそう多くないので、勝てるはずだ。兵の練度の差もあるしな。
俺は彼らを見送り、砦に戻り準備を行う。
準備って言っても装備の手入れや、柵を補強したり弓の練習などできることを細々とするくらいだ。
俺は見送った兵や砦に残った兵のことを考える。
彼らの何人か…いや何十、何百は死ぬことになるかもしれない…。
俺の頭によぎるの父上の言葉だ。
何かを得るためには何かを犠牲にせねばならない時は必ず来る。
俺は自身のため、この領地の未来のため戦うと決めたのだから引き返すことはできない。
砦で準備しながら6日目に突入した昼前のこと。
「バルティア公爵様。後2時間ほどで敵が現れます」
当初の予想より2日ほど遅い。
それなりにゲリラ戦術に効果があったということだろう。
俺も家臣に手伝ってもらい、鎧を身に着ける。
「到着までまだ時間はあるはずだ。先に兵たちに飯を食べさせろ」
「はっ!」
予定では、ヘルベルトたちもすでに開戦しているはずで戦闘の結果にもよるがこっちに来るまで今日中というのは難しいだろう。
少なくとも今日は絶対に死守せねばならない。
腹ごしらえを終えて一息ついたあと、街道の向こうから敵の一団が現れた。
約6500の大軍だ。
やがて、敵の軍から騎乗した騎士らしき男が3人現れ、こちらと敵軍の中間に躍り出る。
「卑劣なるバルティア公爵に告ぐ! 即刻門をあけ放ち降伏せよ!」
俺は城壁の前に立ち、彼らと相対する。
「降伏の条件を聞かせてもらおうか」
「今すぐ門を開け放ち武器を放棄せよ! 身柄はこちらで預かる!」
身の安全を保障するとか言わないのね…。よっぽどイライラしているらしい。
「家臣と相談したい故、しばし時間をいただきたい」
「ならん! 今すぐ決められよ! さもなくば今すぐ攻撃を仕掛ける!」
俺は心の中で舌打ちを打つ。少しでも時間稼ぎしたかったが、怒らせすぎたようだ。
まぁ時間は十分に稼いである。
あとは耐えるだけだ。
「ならば私の返答はこうだ。我が誇りにかけて、断じて降伏することはできない!それでも攻めるというのなら、死を覚悟して来るがいい!」
「…覚悟しておけ」
彼らは軍に戻ると、暫しの後。開戦の笛が吹かれる。
さぁ。開戦だ。




