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Q.38 強襲!剣と炎

 前略、魔女の力を使いこなすために他の魔女達と戦っていた。

 そこへ剣の魔女と炎の魔女が現れた。



「見つけましたわ、ネメア」

「見つかっちゃった」

「っ……状況、わかってますの?」

「わかってるよ、こうして話してる瞬間にでも君の頭を吹き飛ばしても良い状況だよね」

「くっ————あなたは!」

 フレイアの問いかけに挑発を返すネメア。その言葉に烈火のように炎を巻き上げるフレイア……無用に煽るのはやめて欲しいものだ。


「おっと、君の相手はボクじゃないんフールと彼だ」

「————彼?」

 ネメアが手を俺たちの方に伸ばす。

 訝しむような反応……そうだ、彼女たちは知らないのだ。


「俺だ、橘巡留だ! フレイア、ブレンダ!」

「どういう冗談だ? その姿はネメアの弟子だろう」

「色々あったんだよ! ……色々、託されたんだ」

「————そう」

 説明が難しい、そして悠長に説明ができる雰囲気でもない。

 それでも、ブレンダはともかくフレイアは信じたようで、真剣な眼差しで俺を見下ろしていた。


「あなたが何者でも関係はないの、わたくしは民を守るためにあなた達を難み、世界の魔女の目的を達成させる」

「無駄だと思うが警告はしておこう。無駄な抵抗はせず投降しろ、そうすれば無用に傷つけたりはしない」

 剣を向けながら降伏勧告を行うブレンダ。一応の義理を通そうとしているのだろうか。


「ふぅん? フーに勝てるつもりなノ?」

「んぇ、フールさん……?」

 ここは俺が決意を決めて立ち向かうシチュエーションでは……?


「邪魔よ、風の魔女」

「貴様は自らの領域に籠り、自然と動物を愛でるだけの魔女と聞いていたがな。なぜそちらに与する? お前の好きな自然や動物を全て滅ぼすことになるんだぞ」

「言ったでショ、いつかは終わル。他の世界があっテ、そこにココより多くのイキモノが居るナラ、そっちが残るベキ」

「大と小なら大を生かすべきだと? 貴様には思うところがないとでも言うのか!?」

「ナイ」

 ブレンダの問いかけにも一切の動揺を見せずに断言してみせる。


「フーにはこの世界ノ音、ずっと聞こえてくル。嘆き、軋み、怨嗟……」

「何が言いたい」

「フーにはずっと前かラ、コノ世界が終わってルってわかってタ」

 冷たくそう言い放つと、フールの両脇から強烈なストームが巻き起こり、地面を抉るような暴風の渦が立ち昇る。


「ミンナ生きたイ、そんなの当たり前。でも死にかけタ命を生き永らえさせてモ、ただ苦しみが続くダケ」

「生き延びる術があって、それを選ぶことの何が悪い!」

 ブレンダの声とともに放たれた剣は風に絡め取られ、剣と剣同士をぶつける音が響く。


「好きにしたラ? フーはあなたが怒ってル理由がわからナイ」

「わたくしを除け者にしないでくださる!?」

 フールによって勢いを殺された剣はそのまま風に流されるように地面へと投げ捨てられていく。

 問答を続ける二人を割るように、フレイアが巨大な火球をフール目掛けて投げつける。


「あっつい、フーはあついの嫌イ!」

「そう邪険にせずに、きちんとこんがり焼いて差し上げますわ!」

 巨大な火球を竜巻が受け止め、混ざり合う。熱風の柱が出来上がるとそれをかき消すようにフールは大きく腕を振り、火の粉が辺りに舞い散らされる。


「バケモンだなほんと……」

 遠慮なしの力と力のぶつかり合い。それは災害か世界の終わりか。

 規模感が違うと言うのはこういうのを指すのだろう。


「っ、危ない!」

「! ……気づかなかったノ。熱で気流が歪んじゃっタ?」

 フールの背後から迫る剣を視認し、撃ち落とす。これは一対一ではなく二対二、俺だって戦わなければならない。


「お前の相手は俺だ、剣の魔女……!」

「タチバナメグル、か……どういう事情でその少女の身体を手に入れたかは知らないが、立ち塞がるのであれば容赦はしない」

 剣の魔女を妨害し、意識をこちらへと向けさせる。

 魔術の出力に欠ける現状、俺が足止めできる可能性が高いのは剣の魔女の方だろう。


「なあ、俺は別にこの世界を滅ぼすつもりはないんだ」

「何を————」

「だってさ、他にも何か方法があるかもしれないだろ?」

 時間稼ぎという意図はあるが、実際俺だって虐殺をしたいわけじゃない。

 例え彼女たちが俺たちの世界から生まれた模造品だったとして、偽物の命だなんて思わない。

 もちろん俺の世界を犠牲にするなんてのはもってのほかだ。


「じゃあ君はどうするというのだ? 君は私たちの世界に責任を持つ必要は無い。だが容易く他を見捨てられる人でも無いだろう」

「何も知らなきゃ俺には関係ないって切り捨てられたかもしれないけど、さ!」

 お互いに武器を生成して射出し合い、金属がぶつかる音が響き渡る。

 武器の質と量は俺の方が劣るが、直撃コースのものだけを叩き落としつつ回避行動を取る。


「命を守りたいって気持ちを、偽物の命だなんて言えないんだよ」

「……善性を持つ者を斬り捨てるのは私も心が痛む」

「じゃあ俺を信じて退いてくれたりはー……」

「できない。私を退かせたいのであれば世界の魔女の案よりも現実的な解決策を提示しろ」

 ブレンダの言うことは道理だろう。対案を出さずにやめさせるなんてのはただのわがままで、提案にすらならない。


「それは————すまない、今の俺には何も思いつかない」

「論外だな、話にならない」

 他の魔女の力を使えると言っても今の俺には世界をどうこうする力は存在しない。

 仮にキリエの世界の魔女としての力を使えるようになったとして、どうすれば良いのかも俺にはわからないのだ。

 それを論外と言われれば、返す言葉もない。


「力づくで説得するしかない、か」

「ほう————私の真似ができるようになったようだが、そのような猿真似で私を倒そうというのか? それは驕りだ、私に対する侮辱だぞ、タチバナメグル!」

 声を上げ、ブレンダの周囲を球状に囲うように大量の剣が生成されていく。

 量も質も俺には敵わない。だがフレイアのような理不尽さは感じない、空に浮かび、こちらを見下ろすブレンダ……地を這いつくばっている状態では、あそこに剣を届かせることはできないだろう。


「ユーラフェン……」

 胸元をぎゅっと握り、名を呼ぶ。いつも彼女に抱えられて空を飛んでいた。

 地に足がつかない感覚はいつまで経っても慣れる気がしなかったが、ついぞ彼女が俺を落とすことは無かった。


「このままじゃ口だけの奴にすらなれねぇからな……いくぞ————!」

「!!」

 覚悟を決めてブレンダを見上げる。魔法一つの出力は敵わない、なら俺にできる手段を全部使って一撃を届かせるだけだ。


 剣を片手に握り、懐に切り札を隠し持つ。地面を踏み込み宙へ身を乗り出すように、一気に加速していく。


「真正面、あの時と同じ馬鹿正直な突撃か」

「っ————!!」

 下は向かない。ただ一点を見据え加速していく。降り注ぐ刃の雨はナイフを射出して迎え撃つ。


「何を————っ!」

 放ったナイフには重力魔法を仕込んである。僅かにでも軌道をずらすことができればそれで良い、刃の側面さえ見えればそこを踏み抜いてもう一度加速する!


「っ……墜ちろ!」

 今度は左右から放たれる刃の濁流。二つの攻撃を同時に相殺しなければならない。

 ————いや、ネメアの魔法を思い出せ。あの身体に仕込まれていた魔法は……!


「!? すり抜け————」

「と、ど……いたっ!」

 ブレンダの放った攻撃が俺の身体を中心に交差する直前で剣は身体をすり抜け、背後で金属音を響かせる。

 フレイアの炎を初めて食らった時に発動した魔法、持続時間には自信がないが一瞬だけ発動できた。それで十分、この一瞬だけで十分だった。


「剣でこの私に勝てるなどと!!」

「っ!」

「このまま叩き落として————」

 ブレンダに向けて振り抜いた剣は容易く切り払われる。身体強化の度合いも、剣筋も俺じゃ敵わない。

 だけど————


「これで終わりだ」

「っ!?」

 体勢を崩した俺に向かって剣を振り上げたその一瞬。

 それは剣よりもはやく、そして簡単に人を殺傷することができる武器。持ち上げるにも一苦労な剣よりも軽く、素人であっても引き金を引くだけで誰かを殺しうる“銃器”である。


「ぐっ!?」

「墜ちるのは————あんただ」

 懐から抜いた銃。剣の間合いであればどれだけ素人であっても外しはしない。

 もちろんこのまま撃ち殺すなんてことはしない、放った弾丸には一つの魔術と魔法を組み込んである。

 一つは鎖。着弾点から草木が生い茂るかのような勢いで鎖が伸び、ブレンダの身体をがんじがらめに包み込む。

 もう一つは重力、身動きが取れなくなったブレンダを地へ叩き落とす引力の力。


「っ……く、ぅ……」

「俺の勝ちだ。……悪いな、卑怯な手使っちまって」

 相手の知らない道具を使っての初見殺し。ブレンダであれば正面から俺を倒そうとするだろうと予想しての正面突破。

 卑怯だと詰られてもしょうがない。


「————いや、侮った。小細工など叩き潰して倒せると。私の……負けだ」


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