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Q.37 戦争準備

 前略、ネメアとガチンコバトル開始。

 絶対ぶっ飛ばす。



「そもそもの練度からして同じ力で戦ってもキリが無い」

「へぇ? そこは大人しく認めるんだ」

「見てろ————」

 足を固定していた時間停止を解除して距離を取る。

 今の俺に他の魔女の魔法が使えるというのであれば。やってやる、やればいい。

 剣を想像する。製法は置いておくとして、形状や構造そのものは単純だ。

 なんなら刀身と柄だけだけでもいい、想像して————射出する。


「成程、剣の魔女! 良いね、確か一緒に戦ったんだったか!」

「っ、守りも万端ってか」

「ふふ、そういや向こうでの移動中、暇つぶしに君のスマホでアニメとか見てたんだけど、こういう武器を飛ばしたりするのってメジャーだよね」

 射出された剣の雨は空中で消滅するように別空間に飲み込まれていく。

 攻撃に防御に、便利で嫌になるな全く!

 というか人のスマホを勝手に————まて、こいつパスコード突破したのか!?


「てめぇ、人のプライベートを————」

「ちょーっと記憶覗いただけじゃないか、活動する上で何も知らないってわけにはいかないんだし!」

「クソっ、コイツは本当に!」

 剣がダメなら銃だ。機関銃なんかの構造はわからないが、ハンドガンくらいなら調べたことがある。


「へぇ————」

「喰らえっ!」

「良いね、ブレンダじゃ知らないことだ! けど————んっ!?」

(かかった!)

 ハンドガンの掃射、剣よりも弾の方が小さく捉えづらいだろうと踏んだが、予想通り何発かは防御をすり抜けてネメアの周囲に着弾する。

 俺の狙いは銃弾を直撃させることじゃない、()()()()()()()()()()()()()()()()にある。


「成程、意趣返しのつもりかい?」

「まだここからだぜ」

 指でピストルの形を作って狙いを定める。一点に意識を集中……温度が上がるイメージを固め、火球を生み出し、ありったけの魔力を注ぐ。


「喰らえぇぇっ!」

「はっ! 足を止めたからってそんなものが当たるとでも!?」

 杖を構えて迎え撃つ体勢のネメア。これも防がれる————そんなことは想定済み!


「っ、フレイアのに比べたら涼しくて風邪ひいちゃ————う“っ!?」

 ネメアの身体が前のめりに地面に倒れ込み、顔面を見事に強打する。

 からんころんと転がる杖を拾い上げ、思わず俺は笑みをこぼす。


「どうよ、俺の勝ちだ」

「重力操作……可愛い女の子を地面に叩きつけるとかどうかと思うよ……」

「散々挑発しておいて何言ってんだお前」

 火球を防いだ際に発生した爆炎でネメアの視界を防ぎ、重力操作の魔法でネメアの身体を斜め下……地面に向けて思いっきり引っ張る。

 ネメア相手であっても、足元が固定されて受身が取れないと一瞬でも意識を反らせることができれば通用するようだ。


「お見事、私にはよく見えなかったけど魂の煌めきが良い感じだったよ」

「お、おう……そんな褒め方されるの人生初めてだよ」

「はぁ、生まれたての魔女に負けるなんて普通にショック」

「手加減しまくってるくせによく言うなぁ……」

「あは、バレてた?」

 ネメアが本気で殺しに来ると言うのであれば、最初の一瞬で終わっていたことだろう。

 なにせあの熾天使を一瞬で両断できるのだ、わざわざ杖を振った範囲の空間斬撃なんて避けやすい攻撃をしてくるあたり、相当手を抜かれていたってことくらい俺でもわかる。


「可愛い愛弟子の身体を傷つけたくなくてぇ……」

「そういうことにしておくか、面倒くさいし」

「ノリ悪いなぁ」

 加減をされたとは言え、ネメアの鼻っ面を物理的に叩き折る……いや叩きつけることもできたのだし、勝利の余韻を台無しにされないように浸っておこう。


「じゃ、次は私だね」

「えっ」



ーーーーーーーーーーー



「っはぁ!?」

「あ、起きた」

「今三途の川みたいなの見えたんだけど……」

「危なかったね、死が確定する前にボクが時間戻してなかったらそのまま渡り切ってたよ」

 死の魔女との戦闘。つくづく魔女との戦闘というものはクソゲーが過ぎると思う、バランス調整もへったくれもない。


「さ、起きたらもう一度やるよ。即死しないように加減はしてあげてるんだから頑張って」

「ほんと、死ぬっていつか絶対!」

 スカーレットが黒い瘴気のようなものを漂わせる。

 触れれば問答無用で生命力を奪い、死に至らしめる瘴気……これでも手加減しているらしく、本気でやれば触れれば即死にまで出力を上げることができるらしい。クソゲーすぎる。


「てか、これって何やったら俺の勝ちなんだよ。スカーレットは死なないんだろ?」

「私を無力化できたら勝ちでいいよ」

「アバウトだなぁ」



ーーーーーーーーーーーー



「っはぁ! 三途の川反復横跳び!」

「うんうん、いい感じに狂ってきたね」

「色々な死の感覚が死ぬ直前まで迫ってくるのを何度も軽剣してたら気が狂うよ、気持ち悪い……」

「私に鎌まで出させたんだし、ここまでにしようか」

「もう朝だよ……」

 それから軽く二桁ほど死にかけては死ぬ前に戻される。これぞ死に戻りループモノか、いや死んでないけど。

 最後の戦いでは気合で瘴気を吹き飛ばし、接近することができたが……黒色の大鎌で迎撃されてしまった。


「昼からはフール達と特訓してもらおうか、それまでに寝ておくと良いよ」

「ハードスケジュールがすぎる……」

「文句言ってても敵は待ってくれないよ、今頃私たちを探している事だろうし」

 おそらく、これからは魔女と戦うことになる。

 闇、炎、剣の3人がどういった戦い方をするかは見てきた。

 魔法の質だけで言えば、熱をひたすら上げることができる炎の魔女と、ブラックホールを生み出すことができる闇がずば抜けていると思う。

 剣の魔女の魔法は武器の生成……武器とされるものを創り出すことができる。

 それはこの近世寄りの世界よりも現代で輝く能力だろう。

 銃火器に爆弾、化学兵器なんかも武器の範囲だというのなら、文明が発展すればするほど拡張されていく能力であると言える。


「それじゃ、おやすみ」

「……あぁ、おやすみ」

 もう既に疲労困憊状態だというのに、これから休める気がしない。

 ここはもうさっさと寝て少しでも体力を回復してしまわないと。



ーーーーーーーーーーーー



「っ! ふっ……はあぁぁっ!」

 6時間程度眠ってから、目を覚ましてすぐにフールとの戦闘。

 戦っていて気づいたのは、彼女は流体を司るという力を持っているということ。

 つまり風だけではなく水、液体状のものであれば操ることができるということ。


「前回と違っテ、近づくコトすらできないノ?」

「くっそ……!」

 嵐のような暴風雨。横殴りの雨粒はそれ自体が身体に突き刺さる針となる。

 不規則に纏う風はそれ自体が接近を拒む強固な壁になる。


「ボク達だとああいう直接的な攻撃は難しいからねぇ」

「というかできるのは彼女と絡繰の魔女だけじゃない?」

「私はできかねます」

「リルルも〜、精神なら物理的に壊せちゃうけど」

「私は投石機などを創ればできますが、規模は敵いません」

 他の魔女達は俺が苦戦している様を肴に昼食を摂っている。

 こちとらタイフーンに巻き上げられる小石の気分を味わってるってのに談笑しやがって……。


「よそ見してるヒマ、あるノ?」

「へっ、うわあぁぁぁっ!」

「おー飛んでる飛んでる。殺さないでねフール」

 人が風に運ばれてる様を見ながら呑気に笑うネメア。

 くそう、少しくらいは心配してくれても良いじゃないか————



ーーーーーーーーーーーーーー



「はー……はー……」

「弱イ」

「うぐっ」

「やっぱり出力が足りないねぇ、こればっかりは身体を整えても一朝一夕で身につくものじゃないし」

「だからこんなパワーレベリングさせられてるんだよな……」

 頭をフル回転させながら色々な魔法を試してみてはいるが、そもそもの火力というか、出力が足りずに吹き飛ばされてしまう。

 小細工が通用しない純粋な自然の力を前に、人は無力なのだ……と、そんな言葉を思い出す。


「まぁ、とりあえずフールの魔法もそろそろ習得でき————」

「来たよ、上だ!」

 ネメアの声を聞き、全員がその場から飛び退く。


「剣————と、この熱……!」

 さっきまでいた場所には無数の剣が突き刺さり、周囲の気温が高まっていくのを感じる。

 見上げた先には宙に浮かぶ剣の魔女ブレンダと、炎の魔女フレイアの姿があった。


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