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A.20 図書館で調べ物!

 前略、剣の魔女の領地に向けて旅立った。

 道中立ち寄ったのは本の街と呼ばれるノスタルジックなレンガ街だった。



「ふむ」

「どうかされましたか、メグル」

「いや、いい街だなって」

「こういう街が好きなんですか?」

 宿の窓から街の景色を眺める。夕陽も沈み、辺りではポツポツと街灯の火が灯り始めていた。


「落ち着く雰囲気がする。静かって言えば黒魔術の町も静かっちゃ静かだったけど、あっちは不気味だったからな」

「そうですね。昔立ち寄った際には、我が師も結構気に入っていると仰っていました」

「そうなのか? 結構好みが近いのかな」

 ネメアもこの街を良いものだと思っている。ならこの感性はネメアの身体に引っ張られて感じているものなのだろうか?

 味の好みなどは確実にネメアの身体に影響を受けているとは思うが、こういった感性までもが肉体に引っ張られてしまうのであれば、一体自己とは何なのだろうとふと思う。


「飯食って寝るか」

「はい、美味しいお店を知っています」

「お、じゃあ行こうか」



ーーーーーーーーーーーーー



「ふぁ……はぁ。よく寝た……ぁ」

 翌日、ベッドの上で目を覚ます。やはり土の上で寝るよりも柔らかい寝具の上で寝た方がよく眠れる。

 ……当たり前か。


「おや、おはようございます……いえ、もう昼前ですが」

「んぇっ、マジか……」

「マジです。如何なさいますか? 食事してすぐに発つというのであれば支度を致しますが」

「ぁー……そうだな、この街に図書館があるらしいから、ちょっと寄ってみようかなって。もしかしたら色々調べられるかもしれない」

「なるほど、かしこまりました」

「ユーラフェンはどうする?」

「そうですね……では軽く移動しながら食べられる物でも探してきます」

「わかった。じゃあ待ち合わせは図書館にするか」

 そう言って軽く身支度を整えて宿を出る。目指すは図書館、ユーラフェンの案内を受けて無事にたどり着く。


「大きいなぁ……ネメアのアトリエにも結構な蔵書があったけど。こっちは比較にならなさそうだ」

 ユーラフェンと別れ、図書館を見上げる。図書館には小さな頃何度かいったことがある程度だが、その時のものと比べてもかなり大きい建物だ。

 なるほど、本の街というだけはある。



ーーーーーーーーーーーー



「失礼しまーす……っと、おぉ、中もすごいな……」

 扉を開き、中を見上げる。手前にはいくつもの机と椅子。読書スペースだろう。

 その奥にカウンター、受付や本の貸し出し返却を行うのだろうか。

 そしてその奥に広がる巨大な本棚の列。等間隔で置かれたそれはまさに圧巻の規模であり、からくり仕掛けのリフトのような物で移動しているのが見える。


「こりゃ……目的の本を探すだけで日が暮れそうだ」

 中へと入り、辺りを見渡しながら呟く。ここまで沢山の本があるとなると、自力で探すのは困難極まるだろう。

 とりあえず受付と思しき所に向かう。


「あのーすみません」

「こんにちは、いらっしゃいませ。どうかなさいましたか?」

「本を読みたいんですけど、ここ初めて来たもので勝手がわかんなくて……」

「初めてのご利用ありがとうございます。具体的な作品名などをご提示頂ければ、すぐにご用意させていただきます」

「あー……その、天使について書かれている本とかってありますか?」

「天使、ですか。でしたらロアナという司書が詳しいので、そちらにお声がけくだされば、御目当ての本を探し出してくれます。ロアナは現在三番棚の整理をしておりますので、そちらまでご足労のほどよろしくお願いいたします」

「あっ、わかりました。ありがとうございます」

 丁寧な案内を受け、思わずぺこぺこと頭を下げてしまう。やはりこう言った身に染みついた仕草というものは無意識に出てしまうのだろう。


「んっと、三番棚……三番棚……こういうのって右から一番で良いのか?」

 幸い先程名前の出た司書は先日声をかけてきた女性が名乗っていたものだと記憶している。容姿も覚えているので、見つけさえすればわかるだろう。

 指差し確認で三番棚とやらの場所を探し出し、司書を探す。


「お、あれかな……すみません……!」

「ん……はい、いかがなさいましたか?」

「あっ、えっと、天使について書かれている本が読みたくて……」

 声をかけるとこちらに振り向く。脇にはいくつかの本が置かれており、蔵書の整理をしていたようだ。


「天使、ですか。かしこまりました。すぐにお持ちしますので席でお待ちを……こちらを机の上に立てておいてください」

「あ、はい。わかりました」

 そう言って手渡されたのは木製のスタンド。青色の塗料が塗られていて、おそらくはこれを目印にして本を運ぶのだろう。

 特に他に言いたいことも無いので、言われた通り席のある方へと移動して大人しく待つことにした。



「お待たせしまし、た!」

「おおぅ……こ、こんなに?」

「はい、天使について記述のある本とのことでしたので」

「……流石にこれは読みきれないな……」

「宜しければご希望の内容のものを選り抜いて差し上げますが」

「あ、お願いできます? 天使がどういう存在かを知りたいんですけど」

「かしこまりました。ではこちらと……こちらの本と————」

 司書が運んできてくれたのは大量の本であった。机の上に置いた瞬間みしっと軽く木の板が軋むような音が聞こえた気がする。

 流石にこれだけの量を読み切ることは難しいと唸っていると、司書がテキパキと選び抜いてくれた。

 そうして最終的には四冊の本が残った。


「それでは、読み終わったらお声がけください。私は先ほどの三番棚の整理が終わったら休憩に入りますので、受付の反対側に居ると思いますので、そちらまでお越しください」

「わかりました。ありがとうございます」

 丁寧に対応してくれた司書はペコリと頭を下げると、残った大量の本を再び抱えて立ち去っていく。

 ……力持ちなのか、身体強化を活用すればあれくらいは余裕なのだろうか。


「さて、と」

 一冊手にとってぱらりと捲る。


「……読めねぇ」

 これまで普通に会話できていたので忘れていたが、そういえばこの世界の文字は読めないんだった。

 いや、ユーラフェンに教わる形で最低限の単語を読むくらいはできるが、文章を読むことはできない。


「えーっと……ぁー……ダメだ、単語が全くわからない……」

 なんとか解読を試みるが、ユーラフェンに教わった範囲では読み取れる部分は殆どなく、机に突っ伏して自分の浅はかさを呪う。


「……挿絵とか無いかな……」

 読むことを諦めてぺらぺらとページを捲っていき、天使が描かれた挿絵などがあれば良いかと探し始める。

 一冊目、二冊目と確認していったが、中々見つからない。

 収穫なしかと三冊目を手に取り————


「ん、これ絵本か……?」

 三冊目の本は先の二冊と異なり、厚みは無いが幅広く、ページ一面に絵が描かれていた。


「んと……お、これはちょっと読めるか……? んーっと……“最初、魔女、世界”って、これ世界の魔女のことか?」

 単語のいくつかが読み取れる。描かれている絵は白く大きな帽子を被った魔女のような姿で、夢で見た世界の魔女の姿に似ていなくも無い。


「絵の内容は……世界の魔女が、天使から逃げてる……? それとも追放でもされてるのか?」

 絵の内容を読み解く。人形に白い翼の生えたこれは天使で間違い無いだろう。

 その天使の集団から背を向けている世界の魔女という構図だ。


「2ページ目は……お、黒い。これはネメアだな。“時間、魔女”うん、ネメアか」

 ページを捲る。次は黒い帽子を被った少女の姿があった。その少女は六枚羽の天使と対峙しているという構図で、それを見てユーラフェンの話を思い出した。

 かつて六枚羽の天使を倒したという話、おそらくそれを元にした絵なのだろう。


「結構古い本だけど……まぁネメアの歳が歳だし、最近のことでは無いだろうけど……次行くか」

 いつ頃の話なのだろうと思いつつも、先が気になりページを捲る。そこには白と黄緑色のドレスのようなものを着た女性が、紺色のフード姿の少女を抱えて泣いている絵が描かれていた。

 その背後には一際大きな翼を持った天使と、小さい人型の天使が並んでいた。


「知らない魔女かな? いやでもこっちは————死の魔女か?」

 ドレス姿の魔女は知らないが、紺色のフードの少女は見たことがあるような覚えがある。そう思って次のページを捲ると……。


「亡骸に花と蔦が巻き付いて……魂が出てきた……? んー、でも描写的にはやっぱり死の魔女っぽいな、じゃあこっちがスカーレットの姉の方か」

 4枚目のページにはドレス姿の魔女が抱えた亡骸に花と蔦が巻き付いている絵と、空中に浮かんだフード姿の少女と朽ちている天使の絵が描かれていた。

 おそらく姉妹の魔女である2人がここで描かれているのだろう。


 そうして読み進めていくうちに、まだ出会ったことのない魔女の姿も描かれていた。その全てが何かしら天使との関わりを持っており、最後のページには気になる絵が描かれていた。


「これは————13人目の、魔女か?」

 最後のページに描かれていたのは翼を生やした少女の姿。正面から描かれており、後光が差しているかのような構図で、魔女の帽子で顔は隠れていた。

 古い絵本のようだが、最新の12番目の魔女どころか、まだ存在しないはずの13番目の魔女の姿……果たして、この絵が意味することとはなんなのか。

 今の俺にはわからないことではあったが、少なくとも魔女と天使の関わりは深く、そして翼の大きい天使はなんというか、形容し難い姿をしていそうだということが分かった。


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