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新井

 『持つ者』と『持たざる者』。

 両者の違いが、単純に選択肢の有無なのだとしたら、田沼さんが事あるごとに『俺たちは追い込まれた』などと主張してきたことも頷ける。

 だが……、それが分かったからと言って、今後の判断材料になるのかと言えば、それは少し怪しい。

 親父が残した『AGH』。

 田沼さんが掲げる『実質的最大幸福社会』。

 計画の中身に違いがないのだとしたら、果たしてそれは『力ずくで、持たざる者の選択肢を補完する』以上の意味を持ち得るのか。

 何かを決めるにしても、手持ちの情報だけではやはり心許ない。

 

 そうでなくとも、現状考えるべきことがあまりにも多すぎる。

 田沼さんの過去。政府の陰謀。宇沢さんの後悔。

 そして、政府に抗うために親父が描いていた青写真(AGH)の真意。

 残り2日にも満たない時間の中で、これらの膨大な情報を消化し、最適解を導き出すなど、無理難題極まりない。

 ただでさえ、俺も新井も()()()()には不慣れだ。

 ましてや、既に事態は進むところまで進み切っている。

 俺の判断如何で、一体どれだけ多くの人間を破滅に追い込むのかと考えると、この場で立ち尽くし、一歩も動けなくなってしまいそうだ。

 これが、いつか田沼さんが言っていた『持たざる者』ゆえの、()()()()なのだろうか。


 そんな、どこか打ちのめされたような無力感に苛まれながら、俺と新井は事務所を出る。



「アレ? 何これ?」


 エントランスへ繋がるドアを開くなり、新井は声をあげる。


「ん? どした?」


 新井の視線の先を見ると、入り口付近の床に運転免許証大のICカードらしきものが打ち捨てられていた。

 どうやらドアノブの上に置かれていたものが、扉を押した拍子に落ちてしまったらしい。

 形状から察するに、どこかの部屋のカードキーのようだ。

 よく見ると、一枚のメモ書きがマスキングテープで留められていた。

 新井はそれを無警戒に拾い、読み上げる。


「ナニナニィ……、『これは餞別です。宇沢』、だって!」


 新井はそう言いながら、俺にカードキーとそれに添えられたメモを手渡してくる。


「餞別? 何のことだ?」

「うーん……、何だろ? ポイントに関することかな?」


 無きにしも非ずか……。

 だが、今さっき鑑定士登録は出来ないだの、USBは渡せないだの、やり取りした手前、彼がこのタイミングで敵に塩を送るかのような真似をするとは思えない。

 釈然としないながらも、俺は半ば押し付けられるように与えられた()()を、上着のテーラードジャケットの右ポケットにしまい込んだ。


 俺たちがエレベーターを降りる頃には、既に宇沢さんたちの気配はどこにもなかった。

 しかし、ビルの表玄関口前には、嬉々とした表情でスマホを掲げる野次馬の残党がごった返していて、俺たちの行く手を阻んでいた。

 閑静な住宅街に突如警察がやってきたともなれば、こうなるのも必然か。

 群衆が俺と新井の存在に気付くと、待っていましたとばかりに、スマホのカメラと奇異の目を、訳も分からず浴びせてくる。

 俺たちはそれらをかき分け、ビルの敷地から這い出ると、逃げるように最寄り駅を目指して歩き出した。



「……ねぇ。アンタ、どうするつもり?」


 十数分ほど黙々と歩いていると、新井は沈黙を食い破るように問いかけてくる。


 『どうする』などと聞かれたところで、現状答えようがない。

 決定権は、俺にある。それだけは確かなのだろう。

 だが、逆に言えばそれだけだ。

 俺としては、より傷の少ない選択肢を選ぶ他ない。

 いや……。

 そもそも、その場合の『傷』とは一体何なのだろうか。


「……さぁな。ただここまで拗れてるってなると、もう『正攻法』だとか言ってられねぇってことだけは確かだな」

「そっか。まぁそうなる、よね……。何かさ。()()()()としたまんまだよね、色々とさ」

 

 フワフワ、か……。

 確かに新井の言う通りだ。

 方向性がおぼつかず、千鳥足といったところか。

 依然として分からないことも多い。


 たとえば、だ。

 田沼さんは、宇沢さんが自分の計画に協力しないことが分かっていながら、何故俺に判断を委ねようとしているのか。

 宇沢さんすらも知り得ない、何かを隠している可能性もある。

 いずれにせよ、彼女には他の算段があるとしか思えない。


 嗣武の動向も気になる。

 宇沢さんのあの口振りからも、恐らく嗣武は()()だ。

 だが彼は『FAD』の存在に気付き、政府と互いに秘密を握り合っていながら、その決定的な証拠までは掴んでいなかった。

 恐らく極一部の中枢にのみ、その事実が共有されているのだろう。

 だから、あの時彼が見たという企画書をいくら読み進めたところで、事件の真相にまで辿り着くことはなかったはずだ。


 そして何より気になるのは、あの一件から7年が経った今でも、嗣武がホストとして生きながらえていることだ。

 お袋に罪を擦り付けたとは言え、事件の真相を知る人間、ましてやその真犯人など危険でしかない。

 もし俺が政府の中枢に居れば、一刻も早く()()することを進言する。

 ヤツらは何故、嗣武をそのまま捨て置くのだろうか。


「ねぇ、オギワラ。一つ、聞いていい?」


 新井は随分と改まった様子で、顔を覗き込んで聞いてくる。

 その、彼女の全身から醸し出す『深刻さ』から察するに、どうにも回答しづらい質問が飛び出してくる予感がしてならなかった。

 

「ん? なんだ?」


 俺は極力、平常心を保ちつつ、応える。


「アンタが、『正攻法』に拘ってた理由ってさ……、やっぱり自分と同じような人間が出て来て欲しくないから?」


 それは()、というより、宇沢さんの理屈だろう。

 とは言え、それは当然ながら、俺自身も考えてはいることだ。

 もしも、だ。

 何処ぞの独裁者のように。

 それこそ、田沼さんや親父の言うように。

 俺自身の思う『理想の世界』とやらに、この国に生きる全ての人間を引きずり込んだとして。

 その先で、俺やお袋の二の舞を演じる人間が出て来てしまえば、その時は今度こそ俺は()()()だ。

 だからこそ、仮に戦うにしても既存の枠組みの中で戦いたいと思っていた。

 神取さんの再審の誘いに、心を動かされもした。

 そうすれば……。

 思惑が外れた時の『傷』が浅いと思ったから。


「アタシさ! アンタがフェルベンのこと調べるって言ってから、ずっと考えてたんだよねっ!」


 質問に返答出来ずにいると、新井はまた別の話題を切り出す。


「……何をだよ?」


「復讐って何なんだろう、って」


 新井からそう問いかけられ、俺は思わず歩みを止める。

 それに合わせて、彼女も立ち止まると、真横で立ち尽くす俺の顔をまじまじと覗き込んでくる。


「復讐って……。藪から棒になんだよ?」

「別にそんなにおかしな話じゃないでしょ。アンタだって自分で言ってたじゃん? 全部向こうの都合の良い建前だって」

「まぁそうだけど、よ……」


 すると、新井はくるりと俺に背を向ける。

 一歩、一歩、俺から距離を取り、ゆっくりと来た道を引き返すようにして歩き出す。

 そして、こちらを振り向くことなく、静かに語り出した。


「……アンタと初めて話した日にさ。『幸せを諦めたくない』みたいなこと言ったじゃん? アレってさ。もしかしたらオギワラとは違う意味で、自分の気持ち誤魔化してたのかもって、ちょっと思ったんだよね。ほら! よく言うじゃん? 『幸せになることが最大の復讐』、みたいなこと」


 言うも、何も……。

 俺はそれと似たことを、石橋にも言った覚えがある。

 言い逃れするわけでもないが、それは自分自身の存在価値を見出せない石橋に対して、緊急措置で提示した有り合わせの論理だ。

 それはあの場に居た新井自身も、きっと分かっている。

 だから彼女が今、当てつけでそれを話しているようには思えなかった。


「そりゃあ、誰も傷付かないのに越したことはないよ? 復讐の連鎖なんてしょうもないって思うし、過去の恨みとか因縁とか忘れて今を生きれたらどれだけ幸せか、とも思う。でもソレってさ……。ある意味で、加害者側の理屈に言いくるめられてるんじゃないかって、ちょっと思っちゃったんだよね。まぁさ! もうココまで拗れ切ってたら、()()()が何を指すのかなんて、分かんないんだけどさ!」


 新井はそう言って振り向くと、ニシシと、冗談めいた雰囲気で笑う。


「……お前にしては、偉く穿った見方だな」


「やっぱぁ? オギワラのが感染(うつ)ったのかもね!」


「人のせいにすんじゃねぇよ……」


 俺がそう溢すと、新井はクスクスと楽しそうに微笑んだ。


「だからさ! そういうのって多分、損得とかじゃないんだと思う。気持ちの整理……、的な意味でもさ」


「お前は……、前の父親たちに復讐したいと思うのか?」


「……分かんない。でも、そういう気持ちが少しもないって言ったら、嘘になる」


 新井はそう言うと、バツが悪そうに視線を逸らす。


「……随分と変わるモンだな。『幸せを諦めたくない』とか言ってたヤツのセリフとは思えん」


「かもね! でもさ……。アタシ、ずっと嘘は言ってないよ? 今でも『幸せを諦めたくない』って思ってるし、復讐がしたいってのも間違ってないんだと思う。それって矛盾してるのかな?」


 彼女のその言葉に、俺は何も言えなかった。


「この前も言ったと思うけど、一応言っとくね……。アタシたちのことは、気にしなくていいから。お母さんもあんな感じで適当だし、アタシはアンタのしたいようにして欲しいんだよね。ウザワさんだって言ってたじゃん? オギワラには()()()()資格があるって。アタシもそう思うしさ……」


「……んだよそれ。煽ってんのか? 本当にお前は気分屋だな」

 

「確かにねっ! そう思われても仕方ないかも! 実際、アンタがシンに深入りするって決めた時は、不安で仕方なかったしね! でもさ……。ウザワさんがあんなにボロボロになりながら話す姿見て気付いたんだよね。抑えられない衝動ってーの? アンタにもあるっしょ? だからさ……、アンタ、ホントはどうしたいの?」


「どうしたいって……。ンなもん、まずはどうすりゃお袋と田沼さんの命を救えるかを考えるしかねぇだろ……」


「何も犠牲を出さずに? ソレ、ホントに出来ると思う?」


「それは……」


 新井の問いに、俺は言葉を詰まらせてしまう。

 したいように、か……。

 田沼さんの身を犠牲にすることなく、お袋を助けたい。

 風化しかかった事件の真相を掴み、俺たちへの疑いの目を晴らしたい。

 答えはシンプルかつ明快……、のはずだった。

 だが、新井が聞いているのは、きっとそういうことではないのだろう。


 したいことと、すべきこと。

 その境界が曖昧なまま、俺はここまで走ってきてしまったのではないか。

 そんな疑念が頭を過ぎった。

 煮え切らない俺を前に、新井はスーッと深く息を吐いた。


「あのね……。怒らないで聞いて欲しいんだけどさ。お母さんの病気の悪化が、アンタのミスのせいじゃないんならさ。それって寿()()……、なんじゃないかな?」


「……お前までそういうこと言うのかよっ!」


 周囲も憚らず、大きな声をあげてしまった。

 分かっている……。

 新井の言うことは、至極真っ当だ。

 どの道へ進もうとも、多かれ少なかれ犠牲は出るのだ。

 俺の八つ当たりにも等しい怒声にも、新井は眉一つ動かさない。

 それどころか、優しさすら感じさせる眼差しで、俺の顔を一点に見つめていた。


「……ワリィ」


「ううん。アタシの方こそごめん。こんな言い方して。でもさ……、オギワラ。一つだけ言っておくね」


 そう言うと、新井は再び息を整える。


「アタシは……、アンタがどんな道を選んだとしても、アンタに付いてくつもりだから」


「……何だよ、急に。ワケ分からんこと言うな。第一、お前には関係ねぇだろ」


 咄嗟に、取り繕うように言葉が漏れ出た。

 新井は俺の返答がお気に召さないようで、呆れるように深い溜息を吐く。


「あのさー。アンタ、今どういう状況か、ホントに分かってる?」


 新井はそう言って、ツカツカと早足で俺に近寄り、その整った顔立ちが目の前に現れる。

 まつげ一本一本のカール具合まで確認出来る位置にまで近付くと、何かを訴えかけるようなジト目で、俺の顔を見上げてくる。

 

「アタシの依頼は無事に完遂されて、親子共々ハッピーな結末を迎えたんだっけ!? 確か、アンタの()()()()()()で悪徳ホストに深入りしたっ切り、なんやかんやで有耶無耶なまんまになってるんじゃなかったっけ!?」


「それは……、お前も納得した上でだろうが」


「そんなん知ってるしっ! それにアンタ、言ったよね!? アタシたちの運命、預かるって。ナニ? アレはお母さんを説得するための、方便だったとでも言うの!? アンタってそういうこと軽はずみに言うヤツだったっけ!? だとしたら、とんだ見込み違いだったわ!」


「だから……、お前に俺の何が分かんだよっ!」


「知らないしっ! アンタのことなんか何にもっ! せいぜい、イイ歳こいて母親基準でしか行動出来ないマザコン野郎ってこととか、『諦観』だとか斜に構えたこと言っといてホントはただ日和ってるだけのチキン野郎ってこととか、やっと覚悟決めたかと思ったら『正攻法に拘る』だとかイッチョ前なこと言い出す潔癖症野郎だってことくらいしかねっ! 何なんっ!? ホントはただ責任取りたくないだけなんじゃないのっ!?」


「か、勝手なことばっか言ってんじゃねぇっ!! 大体お前は」


「それと」


 新井は被せるようにそう呟くと、俺に勢いよく抱きついてきた。

 がっしりと。

 俺の腰にまで手を回し、『羽交い締め』という表現がしっくりくるほどの力で拘束してくる。

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。


「自分のことで一杯一杯のはずなのに、悩んでる人のこと放って置けないお人好しだってことも知ってる。ホントは誰よりも臆病なのに、真っ直ぐに自分の『不幸』と向き合おうとしてる強いヤツだってことも知ってる。何より……、アタシなんかより、ずっと諦めが悪いことも」


「新井……」


「チサさんの計画が、オギワラのお父さんから引き継いだものだって聞いた時、ビックリしたけど何か納得しちゃったんだよね! あぁ、やっぱり親子なんだなって……。アンタもさ。7年間、ずっと()()準備してたんでしょ? じゃなきゃ、こんなに法律に詳しかったりしないし、ハヤトさんとも関係続けてたりしないでしょ」


「別に、戦うとかそんなんじゃねぇよ……」


「……ねぇ、オギワラ。アタシに見せてよ。アンタが描く『理想の世界』ってヤツを。別にどんなカタチだっていいからさ。きっと、その先にアタシが探してるものも、あると思うんだよね。だからさ……、アタシが満足するまで付き合いなさいよ。少なくとも、それまでは一蓮托生。だってアタシら、()()()()()でしょ?」


 新井はそう言って、ゆっくりと顔を上げる。

 今しがた、まくし立てていた時とは打って変わって、そこにあったのはいつもの見慣れた天真爛漫な笑みだった。

 彼女のその表情を見た瞬間、身体全体が温かい何かに包まれたような感覚に陥り、不覚にも胸を高鳴らせてしまう。

 生理反応だか何だか知らないが、身体の一器官の分際で、持ち主にロクに制御させようともしない暴れ馬振りを、心底恨めしく思った。

 

「別に、ウザワさんに協力しろとは言わない。もちろん、政府に頭下げてオギワラたちの尊厳をドブに捨てて欲しいとも思ってない。全部、あっちが押し付けてきた選択肢だしね。だから周りへの影響とか気にしないで、アンタの好きなようにやってみなって。多分だけどアンタ、この先どうやったって『加害者になること』からは逃れられないと思うよ? 大丈夫。アタシが一緒に地獄に落ちてあげるからさ」

   

 何か、具体的に。

 方向性が決まったわけでもなければ、背中を押されたわけでもない。

 酷く歪で、破滅的で。

 それでいて、どこかお互いの外堀を埋め合うかのようだった。

 まるで悪魔同士の契約にも思える。

 

「……縁起でもねぇこと言うんじゃねぇよ。第一、お前の母親はどうすんだよ?」


「そんなん()()()に決まってるっしょ? アンタが預かるっつって、それを了承したんだから! 最悪、塀の中でも、戦い方なんて色々あるしね! オギワラのお母さんだって、今でも頑張ってるんだし!」


「……それこそ縁起でもねぇだろうが。一体、何の義理があってそんなこと」


「まだ言うっ!? ()()()()()()()、くらい分かるでしょ!?」


 俺の反応に、新井はプクリと頬を膨らませる。

 彼女のその表情を見ると、不思議と安堵してしまう。


「俺は……、お袋も、田沼さんも出来ることなら助けるべきだと思うし、助けたいと、今でも思ってる」


「うん。別にそれでいいと思う。アタシが言いたいのは、見通しも立たないのに独りで戦うなってこと。アンタの進んだ先で、どれだけアンタの味方になってくれる人がいるかは知らないけどさ。少なくとも、アタシは一緒にいるから!」


「……そうかよ。一応、その方向で検討しておく。まぁそうだな。考えてみりゃ、俺が面倒ゴトに巻き込んで良心が痛まないヤツなんて、お前くらいなモンだしな」


「うん! まぁ、オギワラだもんね。今はそんな感じで勘弁してあげる! そんじゃあ、まずはどうしよっか?」


 新井が困ったように笑いながらそう言ったその時、十字路の向かい側の方から聞き覚えのある声が響いてくる。



「おーいっ! サトルーーーッ!!」


 

 声のする方へ顔を向けると、髪を振り乱しながら、俺たち目掛けて走ってくる里津華の姿が見えた。

 

「アレ? リッカちゃんじゃない?」


「え。あ、あぁ……。そうだな」


 住宅街の真ん中にも拘らず、血相を変えて大声で呼びかけてくる彼女の姿を見ると、胸騒ぎを禁じ得ない。


 息も絶え絶えになりながら、こちらまで辿り着くと、()()()()()抱き合う俺たち二人を、訝しげに睨みつけてくる。

 里津華のその視線に気付いた俺と新井は、何を言うでもなく互いの身体を引き剥がす。


「サトル……、スマホ電源、切れ、てる、でしょ……。神取、さんが、ココに行けば、多分、いるから、行って、くれって……」


 里津華は膝に手を置き、肩で呼吸しながら、この場所に来た経緯を伝えてくる。

 俺は彼女の指摘通り、スマホを取り出し、画面を確認する。


「あ、ホントだ。悪い……。つか、あの人この場所知ってたのかよ。んで、どうした?」


「その、こと、なんだけど、さ……」


 里津華はそう言うと、俺の耳元に近付き、静かに囁く。


「は!? 真犯人を拘束した!?」



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