4話 試験
あれから時間は過ぎ、試験まで残り一週間となった。
「うん、よくできている。体力面は心配なところはあるけど、今は問題ない」
そして、今は蓮夜に魔法の訓練を受けている
「そっか、私うまくやれる?」
「もちろんだ。僕が言うんだ間違いない。あ、そうだ、君にあげないといけないものがあるんだ」
「それって何?」
「僕の固有能力だよ」
「?!」
「固有能力はあった方がいいからな。それで君教えるのがこれだ」
そして蓮夜が右手を出した瞬間、手の形がゆがんだ。そして右手首が消えていた。
「すごい。これって、どういう能力なの?」
そして彼は右手首をもとに戻した。
「これが次元操作。僕の固有能力の一つ。これは次元を変えて別の見えない次元にしたんだ。これは使い方次第ではかなりのことに応用できるから、かなり強力だ。しかし、あまりに使いすぎるとすぐに魔素切れがおこる。まあ、凛は魔素のコントロールがうまいから大丈夫だ」
「うん。わかった。やってみていい?」
「もちろんだ。簡単にできたらいいんだが」
私は手に力を込めて、さっき見たものをイメージしてみる。
「うわ、できた」
右手の人差し指の先が消えていた。
「いい感じだ。こんな簡単にできるとは。これも進化できればいいな」
蓮夜はいつもの表情をしているが驚いている。気がする。
「正直、指でできるようになったらすぐにいろいろ応用できるだろう。あ、あと固有能力を聞かれたとき、さっきの次元操作と言ってくれ。コピーは今のところは秘密に」
「わかった。覚えておく」
今から練習したも間に合うのかという不安がある。けど蓮夜が言うからには安心という気持ちもある。この気持ちを何というのだろうか。
「でも、固有能力って二つも使えるの?」
「えーと、世界には、まれにだが、固有能力が二つ持って生まれてくる子がいるんだ。その子たちは生まれながらにして天才。魔素量が比較的多いから二つ持ちのこと出会ったら、それは運命に近い。きっと同期にはいないんじゃないかな」
「なるほど。うん。わかった。じゃあ私は二つ持ちのすごい能力者なんだね!」
「そうだな」
蓮が笑っている。もともと、柔らかい人なんだ。
「とりあえず、ある程度できるようになるまで練習あるのみだな」
「うん」
そうして、蓮夜との時間が過ぎていく。こんな楽しい時間が続いていけばいいのに。そう思わせる時間だったと凛は思った。
そうして、試験当日の朝、凛は早起きをして、出発の時間まで頑張っていた。
「顔がこわばってるぞ。もっと緊張を抜いて、深呼吸してみろ。したら、最高に気分が高揚して自分の能力を引き出せるぞ」
陽斗さんが緊張している私を励ます。
「まあ、呼吸を整えるのは大事だな。凛、自分の力を存分に発揮しなさい。さすれば、その願い、応えておろう」
蓮夜の励ましもある。この調子で行こうと自分に言い聞かせた。
「そういえば蓮夜、また依頼がきてたぞ。今回は大物が頼み込んでるらしい」
「ああ、後で聞く」
どうやら仕事の話をしている。
「もうそろそろ時間だろ。行ってこい。頑張れよ」
「うん」
元気よく挨拶をした凛は変装した陽斗と一緒に試験会場に向かった。
試験会場の前に着いた。会場は大きな半球だった。陽斗さんと別れた後、試験開場の入り口に行くとある人物が立っていた。それはあのときに会った人だった。名前はまだ聞いていないが、名札に青火と書かれている。
「...ねえ、君、私に何か用があるの?」
私に言われた!ついつい目が彼女に集中してたんだ。
「君、どこかで会ったことある?私、君に興味がわいたよ」
「あ、いや、えっと」
どうしよう...
「まあいいや、とりあえず、試験を受けに来たなら早く行きなさい。遅れちゃうわよ」
「わ、わかった」
「...ここでは、敬語を使うほうがいいわよ。一応、私は君の上官になるかもしれないからね」
けいご?私は首を傾けたら、
「君、本当に試験を受けに来たんだよね?まあいいけどね。とりあえず、行きなさいな」
「わかった、です」
そういえば、陽斗さんが敬語はですますつけとけばいいと言っていた気がする。そして、私は気づいた。どこからか見つめられていることに。...とりあえず、入ろう。
会場に入り、部屋の席に着いた。大体30人ぐらいいた。席には紙が配られていた。そして、黒服の人が入ってきて、
「今から筆記テストを行います」
そして、数十枚の紙が配布されていく。
「時間は120分です。それでは試験を始めてください」
そうして、筆記試験が始まった。鉛筆を進めていく。あんまり難しくない。蓮夜たちが心配していたけど、それほどのことなのかと疑問がわいてきた。そう考えている間にもう最後まで解き終わってしまった。残り時間は腕時計で見よう...しまった。腕時計を忘れちゃった。でも、周りより早く終わってる。...多分大丈夫、多分。そうしてボーとしている間に。
「試験をやめてください」
どうやら時間がきた。
「解答用紙を回収しますのでしばらくお待ちください」
そうして紙が回収されていく。
「集計が完了しました。みなさんはしばらくこのまま待機してください」
急いでトイレにいく者が多くいた。少し待機していると黒服二人が入ってきて、
「ではこれより、魔力測定を行う。着替えをするものはこっちに、しないものは私についてくれ」
私は着替えないので、話している方のところに行く。
「揃ったな、では移動する」
そうして移動すると10メートルはあろう門の前に集められた。どうやら、受けに来た全員が集められている。着替えているものといないものそれぞれいる。自分も含めると大体50人ぐらいいる。
「今から魔獣を協力して撃破してもらう。魔法や固有能力を行使しろ。武器の使用も許可する。この中はいわば奴らの牢獄だ。どんなことが起こるかわからない。君たちに合わせた魔獣しか入れていない。もちろん全滅を命令しているわけではなく、今回はその時は失格だと思ってくれ。この門の扉が開いたら開始だ」
そうして黒服たちは門の横に立つ。私が魔獣とは何か考えているときに、
「ねえ、あなた」
そうして話しかけてきたのは目が青色で、髪が黄金に輝き、目が私より身長が少し高いの女の子だった。
「あなた、一体何者なの?」
「えっと、どういうこと?」
「質問を質問で返すんじゃないわよ!あなたの名前を聞いているの!」
その女の子は大きな声で問い詰めてくる。
「あ、えっと、わ、私は赤水凛」
「あかみずりん?聞いたことないわ。というか指名手配犯と同じ苗字ね、赤水って。もしかして、その指名手配犯の共謀者だったりするのかしら」
「えっと、その、あの」
「そこ、準備をしなさい」
黒服たちに注意された。
「...後で聞かせてもらうからね」
そう吐き捨てるように言った。なぜ彼女が不機嫌なのか、私にはわからない。そして門が開く音がした。そして、
「では、開始!」
正直、魔獣についてはよくわからないがとりあえず倒せばいいと言っているので倒してみよう。凛が走る準備に入った。それと同時に横にいる彼女がものすごいスピードでかけていった。すごいと思いながら私も追いかけに行った。
彼女を追いかけていると大きな犬がいた。でも爪が大きく、牙がある。でも彼女はを軽々しく、粉砕した。肉片が飛び散る。そして彼女はまた走り出す。そしてまた大きな動物がいる彼女はそれをまた粉砕する。その繰り返しだった。私は残った小さい動物を倒しているが、彼女は大きな獲物にしか目がないみたい。そうしているうちに中にいた魔獣は全滅した。それのほとんどは彼女が排除したという。そのあとちょっとした面接を終え、その日の試験は終わった。そして、私が会場から出ると彼女がいた。
「あなた、たいしたことないのね。もしかして共謀犯ってばれるのを恐れているのかしら」
「いや、違うよ...」
「じゃあ、あなたの固有能力を教えなさい。ずっと使ってなかったでしょ。それを聞いたら、今日は帰るわ」
「えっと、空間操作」
「...嘘じゃないわね?」
「う、嘘じゃないよ」
「ふん、まあいいわ。今度、見せてもらうから」
「あ、えっと」
「なに?まだ用があるの?もごもごしてないで早く言いなさい!」
「あの、あ、あなたの名前は?」
「私?私の名前は大城エリよ!よく覚えておきなさい!」
そして彼女は止めてあった車に乗って行った。大城エリ。蓮夜に聞いてみよう。
「お友達か?早速できていいね。友達は大切にしないといけないぞ」
「あれが友達っていうの?」
いつの間にか隣にいた陽斗さんの言葉に疑問が出た。友達って何だろう。
「ああ、きっとそうだ。さあ、帰ろう。試験も終わって疲れているだろう。今日はいつもより少し豪華にしておいた。蓮夜も、ちょっとあったからな」
陽斗さんの言葉に疑問を浮かべながら、私は陽斗さんの店に向かう。
陽斗の店で凛の帰宅を待っていると一通の手紙が来た。どうやら依頼のようだ。今度確認しておこう。その瞬間ドアが開いた。凛が帰ってきた。凛は今とても驚いている。まあ、無理もない、今朝長かった髪が一気に短くなっているのだから。
「き、切ったの、髪?」
「ああ、黒髪ロングよりもショートのほうが僕の好みなんだ。悪くないだろ」
「うん。かっこいい」
「はは、お前がショートにするなんて何年ぶりだ?俺とお前が出会ったとき以来じゃないか?」
「確かにそのぐらいから切ってなかったな。久しぶりにさっぱりしたよ」
「確かにな。よし、ということで今日の飯はちょっと豪華にふるまうぞ」
「ありがとな」
「ありがと」
「礼なんていいさ。結果はわかってる。凛ちゃん、絶対受かってるよ。それに100万!」
「手ごたえはあったか?」
「うん」
「じゃあ、僕は200万。というか魔獣討伐を乗り越えたら大丈夫なんだろ?わかりきってる勝負じゃないか」
「そうだな」
そして、陽斗の少し豪華な料理が出てきた。それを凛と陽斗と僕で食べる。おいしい。
「あ、蓮夜。大城エリって聞いたことある?」
蓮夜と陽斗がとても驚いた顔をする。
「確かに、あの時に話していたのは金髪だったような...」
「えっと、何かまずいことが...」
「あ、いや、まずくはないが、同期にいたことに驚いたんだ。彼女は大企業の娘で固有能力を二つ持っている子なんだ。その子と対立は避けた方がいい。彼女かなり強いぞ」
「そうなんだ」
「まあ、大丈夫だ、蓮夜。その子と話してた時も仲良しそうだったぞ」
「なら問題ないが...」
「ま、それより今はこれを楽しもう」
「そうだな」
「うん」
後日、陽斗の店にACCHから一通の大きい封筒が来た。その中には合格通知書と入隊手続きが入っていた。