3話 自分の力
翌日、今日もまた陽斗の店に来ていた。
「とりあえず今から病院に行こうか」
陽斗がそう言うと、凛はとても困惑した顔をしている。
「どうして?」
「測定のためだよ。測定は学校か医療機関しか携わっていないからね」
凛の質問に答える。
「そのとーり」
「だとしても翌日に行くとは、行動が早いな」
「いいだろ別に、昨日頑張って、凛ちゃんの戸籍をゲットしたんだぜ。逆にほめてほしいぐらいだ」
「はぁ、すごいすごい。それより、試験にレベル制限ってあったか?」
「確かなかったはずだが、高いほうがいいだろう。そうだな3、4あればいいな」
「そうか、まぁ、実力を知ることは悪いことではない。苗字は何にしたんだ」
「あ、適当にしたから赤水って書いたわ」
「お前なぁ...」
「私は別に大丈夫だよ。というかそれがいい」
まじか、別にそんないい名前じゃないし、目立つだろうに。もう書いたなら修正するのでさらに手間がかかりそう。凛もこれでよさそうだし、仕方ないか。
「じゃあ俺が凛ちゃんの保護者役と知って連れていくことでいいな?」
「ああ、問題ない」
「なんでいかないの?」
凛が不思議そうにこちらを見てくる。
「俺は変装ができるからだよ。魔素量も一般的でオーラもない」
「そういうことだ。大丈夫だ凛。変なことはされないはずだから」
「わかった」
崩れたレンガや木でできていた建物から新品感あふれる建物が多くなった。そして病院に着く。緊張が背筋をつたう。
「緊張しなくてもいい。」
「う、うん」
あまりにも違う陽斗さんの顔を見て驚いている。そして中に入り、受付の前まで来る。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
「レベルの測定にきたんだ...」
陽斗が係員と会話をし、貰った書類をスラスラと書いて行く。かなり手慣れていて、普段からよく文字を読んだり、書いたりしているのだろう。とても早い。そして書類を書きおわり...。
「では少々お待ちください」
「わかりました」
そして一枚の紙を受けった。そのあと、すぐに呼ばれて、
「ではご案内します」
そうして別室に連れていかれる。そこには大きな機械がある。
「ではまずこの手形のところに手を近づけて下さいね」
そういわれてそれに触れる。すると音を立てながら何かはかっているみたいだった。
「もう大丈夫ですよ。次は血液検査です」
そして腕を出して、注射針が入ってくる。いやな感覚で叫びたい気持ちをこらえた。
「これで終わりです。席でお待ちください」
そして陽斗さんが座っているところに行き、横に座る。
「大丈夫かな...」
「大丈夫だって。それに君の才能なら最低値以上は絶対に越えているよ」
そして、呼ばれた陽斗さんが受付の人と話して、病院を去った。どうやら結果は後日にメールで送られるらしい。その結果によると私のレベルは3だった
目の前に血が流れる。そしてある少女が何かを話している。そして、目が覚めた。どうやら夢を見ていたようだ。
「…目覚めの悪い夢を見たな」
そう呟く。その時にちょうどドアが開いた。凛と陽斗が帰ってきたようだ。
「結果だが、後日来るらしい。凛ちゃんの結果は悪くないと思うぜ。それより、今、優先すべきことをやろう。」
「そうだな、そういえば、試験内容を調べてみたんだが、筆記が5科目あるみたいだ。でもそこまで難しくないが、今からだと本当にギリギリだな」
「うん...」
凛は心配しているようだ。まあ仕方ない気もする。今までやってこないと相当難しいことを半年間でやるのだから。
「なあ、実技は今から練習しても間に合うと思うが、筆記は本当にお前に任せて大丈夫なのか?対策するって言ってもあそこの試験の過去問なんてないぞ」
凛に歳を聞いたら13ときた。あんな施設にいたんだ。中学ましてや小学校のこともできるのだろうか。
「大丈夫だ。方法はある。別に理解できれば難しいことはない」
心配な気持ちがあるが、陽斗がそういうなら大丈夫だろう。たぶん。それより僕が教えるのは魔力操作だ。それに集中することとしよう。
「...予定はどうする?」
「どうするって言っても、勉強が優先だな。しかし、実技も測定だけじゃないだろうし。そうだな.......8時から16時まで勉強して、そのあと魔力を使ったことをやればいいだろ。それでいいか、蓮夜?」
「それでいこう。凛もそれでいいか?」
「うん」
凛が返事をする。
「今は、12時か。とりあえず俺は今からいろいろやらないといけないから、その間、魔力操作の練習でもしておいてくれ」
「わかった」
そして陽斗が店を出る。
「よし、じゃあ凛。まず昨日やった火の出し方を覚えているか?」
「うん。こうだよね」
凛の指先から火を出す。
「そうなんだが、コピーで気になることがあるんだ。火の想像をしてみて」
「うん。わかった」
「今、思い浮かんだ火を大きくしてみてくれ」
「うん」
そして凛は目を閉じる。彼女がうなっていると、どんどん火が大きくなっていく
「なるほど、これはいいな」
「どういうこと?」
「コピーした能力を進化させることができることだよ」
「なるほど」
「君の能力はすごいよ。それに能力を使ったとしても、こんなに魔法が使えるそうそういないからな」
「うん、ありがと」
凛は嬉しそうだ。
「そうだ、別の種類を使ってみよう。えっと、ここら辺に、あった。このコップに、水を想像して、いれてみてくれ。こんな感じで」
そして僕は手から出た水を出して入れた。
「えーと、こんな感じかな」
そして凛は水を出して、コップに水が入った。
「おお、これも一発か、本当にすごいな。他の種類も試したいな。凛自身、何か使いたい種類の魔法はあるか?」
「じゃあ、火がいい」
「本当に火でいいのか?」
「うん」
「そうか。わかった」
できるだけ彼女にあう魔法を探してもよかったが、まあいいや。どうせ教えるなら火のほうが教えやすいし。あとは固有能力だな。固有能力がないとあんまり印象はよくないだろうし...また考えておこう。
私は考えていた。彼のことを、怪物のことを。彼はまた滅ぼすのだろうか、あの町のように。説得できればよかった。そう休憩所で考えている時だった。前から山中先輩が来た。
「お、また会ったな」
「はい...」
「どしたんや、そんな暗い顔をして、怪物を逃したのはそう落ち込むことないで」
「はい」
「まあ、それ以外にも最近、魔獣がどんどん増えているそうや。何でも人型になるクマとかな」
魔獣。それは最近現れた魔法が使える人間以外の動物のことだ。しかし、なぜ最近増えているのだろうか。
「しかも、そいつらが出現するところが日科研の近くで奴らが出しているだとか、根拠もないことを広められるのはうれしいことではないんやがな」
「...」
「まあ、お互い頑張ろな。この地球のために」
「はい、わかってます」
そして、二人は別れる。朝衣は休憩を終え、
陽斗が帰ってきた後、持ってきたものを使って勉強を始めて一か月ぐらいたった。
「呑み込みがほんとに早いな。しかも、ちゃんと解けてるし、天才だな。これはペースを上げても大丈夫そうだな」
「うん。わかった」
蓮夜は仕事があるといってどこかへ行ってしまった。
「このままいけば、あと二か月でほとんど終われるだろう。」
「やった!」
「...突然で申し訳ないが、君は一体何者なんだ」
「それは、私にもわからない」
「ああ、別に怒ったりしてない。ただ君が来てから、蓮夜の表情が少し柔らかくなったんだ。君が特別な何かがあると思ったんだが、わからないのなら仕方ない」
「以前は笑わなかったの?」
「ああ、あいつはいつも暗い表情をして、あまり興味を示さないことが多いから」
「そうだな、確かに僕は少し明るくなったのかもしれない」
蓮夜が横に立っていた。
「そ、そうだな。いつの間に帰ってたんだ」
「さっきだ」
陽斗が焦っている。顔からわかる。
「あとで覚えとけよお前」
「ああ、そうだな」