王都で評判の花占いです。実は、高貴な方々がいらしてはコスモスを選んでいきます
王都で評判の占い処。ベールを被った妖艶な花占い師が目の前の男を見る。
スキ、キライ、スキ──赤い花びらが一枚また一枚落ちていく。最後の一枚はキライ。
「……どういうことだ?」
「想い人とは結ばれぬ天命。選んだ花で、思い出す人物はおりませんか?」
「婚約者が一応、赤い瞳だ……」
「まあ、赤いコスモスの花言葉は、乙女の愛情。赤い瞳の婚約者こそが運命の愛でしょう」
婚約者がいるのに他の女に懸想する宰相の息子に、侮蔑の気持ちを隠して花占い師は艶やかに笑う。疑うことを知らぬ宰相の息子は、明日から婚約者を大切にするだろう。
占い処の暖簾が揺れて、騎士団長の息子が占いの席に座る。
「花占いをしてくれ」
「好きな花をお選びください」
選んだのは黄色の花。スキ、キライ──と唱える度、黄色の花びらが一枚ずつ落とされる。最後の一枚はキライ。
「……結果は?」
「想い人と結ばれぬ宿命。選んだ花で、思い浮かぶ人物はいませんか?」
「幼馴染の婚約者が一応、黄色に近い金髪だ……」
「まあ、黄色コスモスの花言葉は、幼い恋心。幼き日の恋を実らせるなんて憧れますわ」
婚約者がいるのに心を揺らす騎士団長の息子に、蔑視を潜ませて花占い師はうっとりする。猪突猛進の騎士団長の息子は、明日から婚約者に愛を囁くだろう。
占い処の暖簾を潜って、第一王子が占いの席に腰を掛ける。
「花占いを頼む」
「好きな花をお選びください」
王子が選んだのは黒色の花。スキ、キライ──と口にしながら黒色の花びらを一枚一枚捨てていく。最後の一枚はキライ。
「納得できない」
「それなら、もう一度」
再び出たキライに唖然とする王子。
「俺たちは真実の愛で結ばれているはずだ」
「想い人とは結ばれない運命。選んだ花で、想像する人物はいませんか?」
「堅物な婚約者が黒目黒髪だ。どうせ散らすなら、好みでないものがよいからな」
「まあ、黒コスモスの花言葉は、移り変わらぬ気持ち。見つけたばかりの恋よりも一途な想いこそ真実の愛と呼ぶに相応しいでしょう」
婚約者がいるのに真実の愛と宣う王子に、嫌悪を悟らせぬよう花占い師は言葉を紡ぐ。脳内お花畑の王子は、明日から婚約者に許しを乞うだろう。
「上手くいってよかった」
占い処の暖簾を下ろして花占い師は呟く。姿を偽る魔道具のベールを外せば、ピンク色の髪の転生者ヒロインが現れる。
攻略対象者に占い処を嗾けたのは、推しの悪役令嬢を処刑から救う為。これは彼女しか知らない秘密──。
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コスモスの花占い、実は占う前から答えが決まっているそうです。
遺伝子によって、花の種類の花びらの数が決まっていて、コスモスは絶対に八枚の花びらをもっているんだそう……!
コスモスで花占いをすると、絶対に「嫌い」になってしまう……なにそれ、怖い(笑)
そして、花占いの代表であるマーガレットは二十一枚で絶対に「好き」になるそうです♪
もし、好きな人の恋を占うときは、マーガレットをおすすめします(*´˘`*)♡
おしまい