幸せってなんだっけ?
読んでくれてありがとうございます。
あなたに幸せが訪れますように。
「江藤さんって村山くんと仲いいのね。」
上司の大須賀さんが突然言った言葉に驚いた。
「同期ですから。」
それだけ返すのに精一杯だった。
私と村山の関係がバレたのかと思って焦りが伝わらないように返せたかな。
「そうなんだ。
私も飲みに行きたいけど上司だから誘いづらくて。」
大須賀さんがいつも困ったときにする笑い方で言ってきた。
「村山なら誘えばいつでも飲みに来ますよ!」
よくある返しだと思ったのは私だけだったみたい。
「ふーん。なんか村山くんのこと何でもわかってるみたいね。」
ちょっと鋭い目で私を見てくる大須賀さんは心まで見透かしてるようで私はそっと下を向いた。
「同期なんで。」
嘘じゃないけど嘘の言葉
彼氏がいるのに村山亮太郎と1度寝てしまった。
お互いお酒を飲みすぎたのもあるが、店長になって愚痴を言ってるうちに泣き出した私を亮太郎は慰めてくれて流れでホテルに行ってしまった。
その後はお互いなかったことにして同期として接していた。
あのときのことは2人だけの秘密。
その秘密のせいで亮太郎を意識してしまう。
「江藤さんは村山くんのこと気になったことないの?」
大須賀さんが探るような眼差しで聞いてきた。
「それよく聞かれるんですけど、全然ですよ!
村山はなんていうか、弟って感じですね。」
この質問はよく聞かれるのは本当だ。
女4人と男1人の同期。
亮太郎が整ってる可愛い系の顔で人気なのもあって、気になったりしないの?って周りが聞いてくる。
同期で恋なんてないと思ってるって同期会の度に話してる。
「そっか……。
信じていいんだよね。」
「え……」
大須賀さんが言ってる意味を理解するのに少し時間がかかった。
「村山くんのこと気になってるのよ」
亮太郎が誰かと付き合っても平気だった。
女の子と遊んでても何も気にならなかった。
でも大須賀さんが気になってるのは胸がザワついた。
「村山のこと気になってるんですか!
どこら辺がいいんですか?」
「うーん。一生懸命で頑張り屋さんなところかな」
そんなこと知ってるよ。
私は大須賀さんの目をそらしてしまった。
「応援してくれるかな?
同期の江藤さんが協力してくれたら嬉しいな。」
大須賀さんが困ったように微笑む
「わ、私が協力しなくても大須賀さんなら大丈夫ですよ。」
精一杯の強がりで本当のことだった。
大須賀さんは美人で仕事できてモテる。
私のいる支店で1番モテる女性だ。
「江藤さんしか頼る人いないのよ。去年一緒に店舗運営してた同期の宜保さんは今ちょっと離れた店舗で店長してるでしょ。江藤さんしか話せないのよ。お願い!」
真剣な顔でこっちを見てくる大須賀さんに頷くことしかできなかった。
「ありがとう!今度ご飯奢るね!
私先に帰るねお疲れ様。」
「お疲れ様です……」
事務所から出ていく大須賀さんの背中を見送るしかできなかった。
ボーッとしてる私にプライベートのスマホが鳴った。
名前を確認すると亮太郎だった。
「お疲れ!
特別発注した?」
亮太郎の声に嬉しくなる私がいる。
でも大須賀さんのさっきの言葉が頭をよぎる。
「当たり前でしょ。
私仕事できるからね!」
明るく返してみた。
心配かけたくなくて。
「お!さすが優秀店長だな。
今日も本部の人来て江藤のこと褒めてたよ」
「やればできる女だからね!
こっちでは村山のこと大須賀さんが褒めてたよ」
気になってるって言ってたことは言えなかった。
それを伝えてしまえば何かが壊れる気がして。
「マジか!
俺も優秀店長になれそうだな。」
嬉しそうな声が聞こえる。
いいことなのに私は喜べなかった。
「今度大須賀さんと飲みに行ってみなよ」
「えー?なんで急に。
接点ほぼないぜ。」
「いいから!」
ちょっとだけ大きな声が出てしまった。
「何かあったか?」
亮太郎から心配そうな声が聞こえる。
「別に何もないよ。
疲れただけ……」
「そっか!俺も今日疲れたよ。
今度同期で集まる時が楽しみで頑張ってるよ」
亮太郎が集まりを楽しみにしてくれてることに安心した。
「私も!あと1週間頑張れば飲み会だよね
頑張ろうね!」
「おう!そろそろ仕事に戻るな。お疲れ」
「お疲れー」
まさかこの亮太郎との会話を大須賀さんが扉越しに聞いてたと思わなかった。
大須賀さんが怖い顔で睨みつけながら扉を見ていたなんて。
読んでくれてありがとうございました!
あなたの毎日がハッピーになりますように。