34.ニーナとアルベルト
「そういうわけだから、良いよな?」
ご機嫌な笑顔で顔を近付けるアルベルトを制止する。
「どういうこと!?」
「お前は鈍いなー、空気感で察しろ」
「待って、本当に流れが急すぎて何がなんだか…!」
「はぁ…俺は治癒の能力を使ってフラフラなんだが」
「え!」
わざとらしく体重を掛けてのし掛かるアルベルトを支える。正直めちゃくちゃ重い。けれど、シシリア曰く完全治癒は体力の消耗が激しいらしいし、仮病を疑うのは失礼に値する。
体調が悪いにしては顔色は良いんだけど…
「おい、キスしろ」
「っふぁ!?」
「3回ぐらいしても良いぞ」
「いやいや、なんで上から目線?」
「俺はニーナの命の恩人だからな」
ニヤニヤするアルベルトを見て、敵わないと思った。
茶色い髪を撫でると気持ち良さそうに目を閉じる。
「ねえ、アルベルト」
「んー?」
「結局話って何だったの?」
「……話?」
「前に言ってたでしょう。生誕祭が終わったら話があるって」
「ああ。あれはまあ…べつに」
何が別に、だ。
誤魔化すようにフンフンと鼻歌を歌い出したから、腹が立って柔らかい頬っぺたを少し引っ張った。驚いたアルベルトが私のおでこに激突する。
「っ痛、お前!やったな!」
「アルベルトが流そうとするから!」
「おい、待てコラ!」
トムとジェリーも驚きの爆速追いかけっこをしたところで、私はあっさり彼の手に捕まってしまう。大きく肩で息をするアルベルトの薄い色の瞳を見つめた。
改めて、やっぱり好きだと思う。
「アルベルト……」
「うん?」
「答えが欲しいよ」
「………、」
「約束したじゃない。答えてくれるって」
少し不安になってくる。
司教の前ではあんなこと言っていたけれど、やっぱり心変わりなんてしてないだろうか。そもそも、アルベルトが私のことを好きなんて節はあった?
いや、そんな雰囲気微塵も感じていない。
「人生を捧げるって言ったのに…嘘吐き…」
「泣くな!待て、話すから、」
「私のこと売り飛ばすとか言うんじゃないでしょうね…」
「そんなことしないって!」
焦ったようにアルベルトが私の涙を拭く。
ふと大きな手が頬を包んだ。
「好きだよ、ちゃんと」
「……嘘じゃない?」
「嘘じゃないし演技でもない」
「………っ」
「ヴァンパイアでもなく、オメガでもなく、ただのニーナとして俺と一緒に居てほしい」
視界がぼやける。
私の涙腺はこの感動的な場面を目に焼き付けることすら邪魔するらしい。手の甲で涙をぬぐいながら、アルベルトの顔を見ようとした。
「……本当に?」
「ああ」
「もう我慢しなくても良い?好きな時に部屋に入っても怒らないの?」
「いつでも入って良いし、何なら一緒に寝ても良い」
「そんなの…想像できない」
「なあ、ニーナ」
「なに?」
「もっと教えてくれよ、お前のこと」
「……うん、聞いて…もっと知ってほしいの」
「これで本物の番だな」
アルベルトが私に口付ける。
それは血を吸う時とはまた違った気持ち良さで、私はこれから訪れる日々を思って、やっぱり泣いてしまった。たくさん話して、たくさん笑って、隣で眠って同じ朝を迎えたい。
そうやって私は貴方と生きていきたい。
ヴァンパイアと聖人じゃなくて
オメガとアルファじゃなくて
ニーナとアルベルトとして。
読んでいただいた皆様ありがとうございました。
お気に入りやら評価がなかなか増えない中で、ただただ自分のためだけに書き切りました。
今日は涙で枕を濡らしながら眠ります。
叱咤激励でも良いので感想いただけると、明日の生きる糧になります…なにとぞ…
20230428.おのまとぺ




