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29.聖女の眩しさ




「なんか肌ツヤが良くない?何かあった?」

「え!ないない何にも!」


帰り支度をしているとミラが席までやってきて、私の顔をジロジロ観察しながらそんなことを言う。私は飲んでいたトマトジュースを吹き出しそうになりながら、否定した。


朝からアルベルトの血を飲めたお陰だろうか?

かなり体調は良い。



「そういえば週末のイベント、ニーナは行く?」

「イベント?」

「司教様のお誕生日だから大規模な祭典があるのよ」

「え、何それ楽しそう」

「アルベルトも知ってると思うけど。だって今の司教って確か…」


「ニーナ!」


ミラの話を聞いていると、講堂の入り口から私を呼ぶ声が聞こえた。目をやるとシシリアが大量の本を手にして立っている。


「シシリア・レイと知り合いなの?」

「うん。アルベルトが来たらすぐ戻ると伝えて」

「ええ、分かったわ」


驚くミラに口早に伝言を頼み、すぐにシシリアの居る場所へ走って行った。白い聖女の服装を着たシシリアは有名人なのか、周囲に観察人の輪が出来ている。


「重そうね、少し持つよ」

「ありがとう。時間があるなら話さない?」

「じゃあ歩きながら……」


取り巻きに見られながら会話するのも落ち着かないので、施設の中をウロウロしながらシシリアと近況を報告し合う。彼女は最近行った場所や出会った人について細かに教えてくれたが、私は自分がアルベルトに気持ちを伝えたことだけはどうしても言えなかった。


まだアルベルトの心の中にはシシリアが居る。

私はあんな風に切ない声で誰かに名前を呼ばれたことがない。華奢だけど強くて賢いシシリアは私の憧れであると同時に、どうにもならない劣等感を少しだけ刺激する存在だった。彼女の眩しさは本当に聖女そのもので、ヴァンパイアでオメガという化け物のレッテルを貼られた自分には到底得られないものだから。



「生誕祭にはアルベルトと来るの?」

「あ、実はさっき知ったばかりなの」

「そうなんだ。楽しいから是非来てほしいわ」


アルベルトと一緒に行ったら、私は目の前でシシリアと会話する彼を見ることになるのだろうか。それはそれで厳しいものがある。


「少し考えようかな……」

「そう?二人で飲んだら恋人になれるなんて言い伝えがある葡萄酒もあるのよ」

「それは素敵ね!シシリアも、」


シシリアもアルベルトと飲んだの?

聞きたくて堪らなかったけれど、その質問はぐっと飲み込んだ。アルベルトを誘ったところで嫌がられそうだし、そんな下心で渡した飲み物を彼が飲むと思えない。きっとまた聖人だの何だの言って断ることは想像に容易い。


アルベルトを待たせていたので、その後少しだけ会話してシシリアとは別れた。




「……アルベルト!ごめん!」


講堂に戻ると、アルベルトは私の机の上で本を読んでいた。その分厚さから相当に難しい内容の本なのだと思うが、残念ながら私には背表紙に書かれたタイトルすら理解できない。


荷物を持って立ち上がった彼と並んで歩きながら、生誕祭の話を振ってみる。



「今週末にお祭りがあるんだって、知ってた?」

「ああ。生誕祭だろう?行きたいのか?」


どうしよう。

本音を言えば興味はある。


シシリアが言っていた葡萄酒も飲んでみたい。

だけれど、そういった人混みはアルベルトは苦手そうだ。


「……ちょっと気になるかなって、でも嫌なら、」

「いや。俺も予定がないし行ってみよう」

「いいの?」

「たまには番の機嫌も取ってやらないとな」

「嬉しい!ありがとう」


素直に嬉しくて笑顔を向けると、暫く私を見つめた後でアルベルトは顔を逸らした。


「あ…ごめん、はしゃぎすぎだよね」

「そういうわけじゃない」

「生誕祭では離れて歩くから…!」

「ニーナ、」

「………なに?」


アルベルトから出てくるすべての言葉に私は身構えていた。いつ何時に拒絶を示されるか分からない。私は今のままで良いと言ったけれど、彼は実は気持ち悪がっているかもしれないから。


どうか、嫌いにはならないでほしい。



「生誕祭が終わったら話がある」

「……何の?」

「お前の気持ちに答えたい」

「………わかった」


そんなの良いのに。わざわざ時間を取るようなことじゃないのに。私は今日から生誕祭までの数日をどんな気持ちで過ごせば良いの?


振られるイベントに向けてモチベーションを上げることなんて出来そうもない。




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