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27.正解のない【side Albert】



今まで、ほとんど全ての事は自分の脳で理解し、処理することができた。周囲の人間よりは優れていると自負していたし、それは明確に結果としていつも自分に返ってきた。


しかし、何故だろう。


都合の良い法改正で自分がこの訳の分からないオメガのヴァンパイアと番を組まされてから、毎日は非常に騒がしい。聖人としての仕事も後回しだし、意味不明な研修にも参加させられる日々。




「別にさ、ずっと一緒に居てとか、結婚してなんて言わないから……今まで通りで居てね」


涙を流しながらニーナはそう言って立ち上がる。

呆然とその後ろ姿を見送った。


「………は?」


正直に言うと、理解が出来なかった。

そもそもどうして自分はあんな変な理由をこじ付けて彼女を押し倒したのか。流石に紳士的とは言えなし、他言するなと口止めするあたり、かなりタチが悪い。


“ヴァンパイアのくせにーー”

“オメガだからーー”


そんな風に彼女の属性で判断をして来たことは認める。見ず知らずの人間と、いきなり番という名の永久契約を結ばされたのだ。ニーナについて知っている知識なんて、最初に見た紙面上の初期情報しかないし、興味なんて正直持てなかった。


それは、直接的ではないにしても彼女こそが、愛するシシリアを手放すことになった原因だったから。聖人と聖女として街の人々からも認められた仲だった。共に学び合い、お互いを高め合うことができた理想的な関係。それが、番なんていう理解の範疇を超えた制度のせいで無に返ったのだ。


まだ引きずっていないと言えば嘘になる。


でも、ニーナが来てからの毎日は本当に目まぐるしく過ぎていき、最近ではシシリアとの過去を思い返す機会が減っていたのも事実。代わりに、危なっかしいニーナの行動を監視しなければいけないという責任感からか、やや過保護な思いも出てきていた。


例えば、ティル・ノイアー


自警団だか何だか知らないが、あの男がこの周辺をウロついていることは気に入らない。もっと言えば、ニーナが彼に対して好感を抱いている様子を見せるのも不快だった。これはおそらく、懐いていたペットが他所の家でも餌を貰っていた時のような心境だと思う。



「………ニーナ、」



名前を呼んでも彼女は戻って来ない。


おそらくまた、廊下の突き当たりにある物置に閉じこもっているのだろう。あの部屋こそネズミが出るという事実を彼女は知っているのだろうか。


ネズミというワードから、浴室での一件を思い出して、自分の思考回路にゾッとした。有り得ない。あの時はヒートの影響で我を失いそうになっていただけで、普段であればヴァンパイアの彼女に自分が欲情することなんて無いはずだ。


じゃあ、今日は?


ティル・ノイアーはニーナにヒートの可能性があると言っていたがそれは本当だったのだろうか。正直、そこまでの匂いは感じなかった。ニーナ自身もその可能性を否定していた。


確かにヒート期間の誘惑はあんなものではない。自分の理性が働かなくなるぐらい、強く激しい衝動に駆られる。自分自身、ニーナが初めてのヒート期間中に誤って部屋に入っていた際は大変だった。何をしても消えないその匂いに惑わされて、何度か自分を慰めてしまったほど。もちろん、そんな事実は彼女に伝えられるわけないが。



「………なんで」



どうして傷付けてしまったのか。

乱暴な真似をしてまで自分のものにしたかった?


番なんてビジネスパートナーのようなもので、ただ血を提供するだけの関係だと思っていた。死んでも愛さないなんて、流石に言い過ぎたかもしれない。


ティル・ノイアーと一緒に居る姿を見て、無性に腹が立った。自分よりもニーナのことを知った風に話すティルに苛立ちも覚えた。極め付けはそうだ、ニーナの涙に彼は口付けていたから。その場所は彼の場所ではないと、自分の場所なのだとニーナに教えたかった。



「なんだそれ…そんなの、」



ホフマン夫妻に話したら何と言うだろう。

きっと彼らは口を揃えて同じことを言うはずだ。


ーーそれは嫉妬だ、と。




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