10.吸血は計画的に
「んー!やっぱり一日中お勉強は疲れちゃうね」
「お前は爆睡してただけだろ」
大きく伸びをする私を横目に、アルベルトは冷蔵庫からビール瓶を取り出しながら諭す。
「ねえ、私たちも血の供給方法を考えた方が良いの?」
「そうだな。お前に任せていたら、いつか加減を誤って殺されそうだ」
「随分と警戒しているのね」
「我が身の安全を守るのは当然だろ」
ルイスとミラは注射器や錠剤使っていると言っていた。
出来ることなら注射器は、あまり使いたくないところ。錠剤も作るのが大変そうだし、どうだろう。
「あ!あらかじめにアルベルトが1週間分の血を冷蔵庫に入れといてくれるのは?」
「雑菌が繁殖して死ぬぞ」
「………うーん」
「俺が以前参加した講習では、冷凍保存を勧めていた」
「シャーベットみたいでなんかね…」
「グロいこと言うな、酒が不味くなる」
グビグビとビールを飲む度に上下する喉元を見ていると、また喉が渇いてくる。私の視線に気付いたアルベルトは、げんなりしたような顔をしてそっぽを向いた。
「そんな顔で見るな」
「どんな顔よ、」
「蕩けてんだよ、気持ち悪い」
「何を!」
「………欲しいのか?」
誘うような表情に身体が熱くなる。
笑顔を保ったまま、ネクタイを緩めて、シャツのボタンを外し出したアルベルトを見守った。ああ、ほらまた、私を惑わすこの香りがする。
これが、ヴァンパイアとしての性なのか、オメガとしての性なのかが分からないけれど、悲しいことに私はアルベルトの甘い匂いを嗅ぐと冷静さが消えてしまう。
「……ちょうだい、飲みたい」
「なんて顔してんだよ」
歯を刺すと湧き出る真っ赤な血液を、私は一滴残らずに吸い尽くしたい。でも、研修で習ったように加減は必要だし、それが出来なければそれこそ獣になってしまう。
「……っあ」
「アルファなのに感じてるの?」
「馬鹿言え、そんなわけ……!」
こうして私は今日も、計画的に無計画な吸血を行う。
だってやっぱり生が一番だと思うのだ。
フレッシュな血液は舌に溶けて本当に美味しい。
番の研修でこんな発言をしたら、優秀な皆様にはさぞかし軽蔑されてしまうだろう。だけれど、私は、アルベルトのこの反応も込みで楽しみたいわけで。




