頼れる仲間の目が死んでいる
目を覚ますと、見覚えのない四つの顔がわたしの前に現れた。……あれ、おかしいな。わたしの記憶が正しければ、わたしはこれからセンター試験を受けるはずだったのに。
左腕の腕時計で今の時刻を確認しようとして、フリッフリのフリルが視界に飛び込んでくる。
「なんじゃこりゃ!」
わたしは仰向けに寝たまま――上体を起こしたら四つの顔のうちの一つに額をぶつけてしまいそうなので――両手をわっさわっさと動かして現在の服装を手探りで確認する。手触りが制服のそれではない。わたし、いつの間にか着替えている。首元にはシルキータッチのリボンが巻かれていて、なんだか落ち着かない。
「女王様がお目覚めになられたゾ」
四つの顔のうちの一つは、紅色の瞳。
その身体は朱色の羽毛に包まれていて、鳥アレルギーの人が見たら卒倒しそうだ。
というか手じゃなくて立派な鉤爪!
きっと今、わたし、ギョッとした顔になっている。
「これからフェスティバルの準備をしなければですね!」
四つの顔のうちの一つは、藍色の瞳。
爬虫類みたいな身体の色は空色。
グッと握った拳は、トカゲみたい。
「待たれよ」
四つの顔のうちの一つは、翠色の瞳。
藍色の瞳のトカゲがそのふぇすてぃばるの準備のためか、その場から離れようとするのを制した。
亀の足みたいな手をしている。
「そうだよ。ちゃんと賢者さまがいらっしゃったのかを確認してからだよ」
四つの顔のうちの一つは、金色の瞳。
頭の上に白いネコミミがついている。
手には肉球がついていて、腕はトラ模様。
肉球でわたしの頬を撫でてくる。
ぷにぷに。
ぷにぷに。
「女王様のほっぺた、もちもちだよ!」
わたしが、女王様?
さっき、朱色の鳥くんも目を覚ましたわたしを女王様って言ってたね?
「ボクにも触らせてほしいな!」
トカゲくんがトラくんの次にわたしの頬を触ってきた。
ピトっ。
トカゲくんの手が湿っていたから、わたしは「冷たぁ!」とその手を払ってしまう。
「そんなぁ……」
しゅん、としょげた顔をされても。
冷たいなら冷たいと事前に言ってくれていればわたしも心構えができたってもん。
「ふむ。その様子では、女王様は我らの知る女王様ではないのであろう」
亀くんが生えていないあごひげをいじりながら所感を述べた。
そうですとも。
わたしは四人の半人半獣みたいな方々から「女王様」と呼ばれるような立場ではなくてですね。
これからセンター試験を受ける予定の、いたって普通の女子高生なのですよ。
お分かりいただけるか。
「わたしは大葉彼方です。あなた方のお名前は?」