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谷の下は森になっていて、
僕は木の上に引っかかっていた。
木の棒が木に引っかかるとは…
どういう状況なのだろうか?
でも、これでゆっくりとスキルを吟味できる。
そして僕は夢のスキルを見つけたのである。
擬人化
何これっ!?激アツじゃね!?
えっ!これで僕も人になれるの!?
封印ルートから脱却することができんじゃん!
僕は擬人化スキルをすぐにとり、
擬人化したんだ。
そして、自分の姿を見た。
トレントってモンスターを知っているだろうか?
知らない人はすぐに調べてほしい。
作品によっては魔物っぽい手があるものも存在するのだが…
わからない人の為にも説明しよう。
まずは丸太を想像してほしい。
そう1mほどの長さの丸太だ。
それに腕と足がついている。
うん。幼稚園児が描いた、木の人だね☆
違ぁぁああうううう!!!
こんなの想像してなかったっ!!!
確かに擬人化って言ったらそうなのかも知れないけどさ!転生ものならちゃんと人になれんじゃん!
そして、スキル一覧を見ると、
擬人化2を見つけたのである。
おふす。レベルが足りないのですね。
わかります。
でもね、それでもね。
良いところもあるんだよ?
「オッス!おら木の棒!よろしくなっ!」
喋れるんだ!
丸太に顔があって、ちゃんと目で見て、
口で話せてさ!ちょっとだけ進歩してね!?
ちゃんと歩けるし走れる!
ジャンプもできる!!
触れるし、踊れるっ!!
うん。長かった木の棒ライフともお別れだね!
目の前にトレントが現れた。
この世界に来たばっかりのころは、
ゴブリンでさえもあんなに怖かったのに…
シェルくんと過ごした時間。
ガリオンと過ごした時間。
タロウくんと過ごした時間。
長年にも渡るようなぶつかり稽古のおかげで、
怖いとは思わなくなっていた。
モンスターのトレントは木の根っこのような足に、木の枝のような腕。それに対して、僕は丸太に人の腕と足。
気持ち悪さで言えば、間違いなく僕の圧勝だ。
でも、何故だろう?勝ち誇った顔を僕はしていた
「やっほー!トレントさん!アレかな?僕と友達になりたい感じ?でもさ〜、ほら?見てよ!この腕と足!君と違ってさ〜、踊れちゃうからさ〜」
ドヤ顔でそう話しかけると、
木の枝のような腕で殴られた。
なんかちょっとだけ怒ってる感じがした。
もしかしたら、僕のドヤ顔にイラッとしたのかも
でもね。殴られたら痛いんだよね。
だから…
「何してくれとんじゃっ!こんボケがぁぁあ!」
思いっきり殴り返すよね☆
1発殴ったら、ポッキリと折れて倒せた。
やったね!経験値ゲット!
これから僕の丸太ライフがはじまるんだ。
鼻歌を歌いながら、スキップで移動する。
多分、見た人は気持ち悪くて、
ドン引きするであろうことはわかっているけど、
ここには人もいないし〜
モンスターしかいないし〜
見つけたモンスターは殴り倒して、
経験値ゲット!
テッテレー!レベルが上がりました。
おっ!やったね!レベルアップ!!
綺麗なお花を見たり、森林浴したり、
トレントでストレス発散したりの日々を過ごしていたけれど…何か物足りなくなってきた。
うーん、何だろう?何が足りないのかな?
そう思っているとトレントが何かを追いかけている姿を見つけた。
何を追っかけてるのかな?
興味本意で後ろを追っかける。
あれ?あれれ〜?なんか女の子追っかけてね?
一生懸命トレントから逃げる少女、
それを追いかけるトレント、
トレントをスキップで追いかける僕。
あっ!少女の前にもトレントが現れた!
これはヤバいかもな!
そう思って、目の前のトレントを撃退。
少女は転んでしまい、現れたトレントに襲われそうだ!僕は小走りでそのトレントも撃退!
よっしゃー!もう大丈夫よ〜!
そう思って少女を振り返ると、
普通の人よりも耳が長かった。
あれ?elf?
おっと!良い発音で思ってしまった!
エルフじゃん!そういやファンタジーちっくな世界感だもんな!エルフがいたっていいもんな!
「だいじょぶ?」
おふす。
久しぶりの会話にカタコトで話しかけてしまた。
「ひっ!しゃ、喋る魔物っ!?」
「だいじょぶ、こわくない、だいじょぶ」
「こ、殺さないでっ!」
おー、泣いちゃったよ…
あれだ、僕は人との会話に飢えていたんだな。
でも、モンスターだと思われちゃってんわ
「ぼく、わるい、まもの、ちがう」
「ひっくっ…ひっくっ…」
ダメだ!会話が通じねぇー!!
バスンッ!
イッテ!
後ろから攻撃されたので、振り返ると
トレントが襲ってきていた。
「イッテェんじゃ!ボケがぁぁぁあ!!」
1発でノックアウト!
とりあえず、少女が泣き止むまで、
襲ってくるトレントでストレス発散をしていた。
「ま、魔物さん…助けてくれてるの?」
おー、少女がビビりながらも声をかけてくれた。
「まもる、ぼく、きみ、まもる」
「うん…。ありがとう…」
おそるおそるだけど…
少女は僕と会話をしてくれた。
どうやら少女の名前はノルと言うらしい。
ノルは近くの村に住んでいるそうだが、
母親の病気を治すために、アズエルの花を探しにきたそうだ。魔物が多くいる森に生息しているが、強い魔物が多いために治療師も採取することができず、ノルは命をかけて採取にきたそうだ。
アズエルの花かぁ〜
どんな花かなぁ〜
「この森の奥にあると思う…」
ん〜…あれかな?綺麗なお花咲いてたやつかな?
「おはな、ある、わかる」
「ほんとっ!?」
「たぶん、ついてくる」
僕はノルと一緒にお花の場所へと移動した。
「アズエルの花が…こんなにいっぱい…」
あっ!やっぱり、あってたんだ!
ノルはアズエルの花を摘み取り、
村の近くまで送ってあげた。
やはり僕が怖いからなのだろう…
あまり、近づいてはこないが、それでも離れすぎないようについてきてくれた。
「もう、だいじょぶ」
「うん!あそこに村があるの!あ、あのね!魔物さん!…あのね!」
ノルがそう言った瞬間に矢が飛んできた!
あ、あっぶねっ!!
「ノル!どこに行ってたんだ!探したぞ!」
「おじさん!あのね!私ね!」
「いいから離れろ!このトレントめ!」
うわぁ〜、村の方から大人なエルフが、
ぞろぞろと…そして、矢を放ってきた。
さすがに争うのはちょっとな…
僕はこれまでに出したことのない速度で走った
後ろのほうでノルが違うの!と言っている声が聞こえたような気もするけど…
僕は全力でエルフ達から逃げた。
やっぱり、どっからどう見てもモンスターだもんなぁ。そりゃノルが襲われるって思うよね〜
意外と丸太ライフを楽しんでいたけれど、
擬人化レベルをあげることにした。
丸太ライフでレベルを上げまくったので、
一気に擬人化を擬人化5まで上げた。
どうやら擬人化スキルは5がMAXのようだ。
スキルを使ったら、好きな姿に変化することができた。もうどこからどう見ても人間だ。
なんなら転生する前の自分にもなれる。
どうして転生したのか、わからないけど…
あの頃の僕は…
嫌なことを思い出した。
そう思い出しんだ。
でも、僕は全ての記憶が残ってるわけじゃないことにも気付いてしまった。どうしてここにいるんだろう?何で僕は木の棒になったんだろう?
考えてもわからない。
だから、もう考えないポン☆
とりあえず、必要そうなスキルは取っておこう。
アイテムボックスとか〜
ステータス隠蔽とか〜
だって〜、僕ってただの木の棒だもん!
人じゃないってバレたらマズいじゃん?
とりあえず、モンスターでストレス発散しながら人間の街を目指そうかね?