詭弁家と聖女と人生で一番退屈な一日 4
「終わったぞ。 全部聞いた」
「ああ、すまない、ありがとう」
対して広くもない建物の一角にアーノルドは座って待っていた。
震える怒りと自身の底から湧き上がってくる殺意としか呼びようのない感情を必死に抑えて待っていた。
それを見つけてレオナルドは件の男から聞いた情報をかいつまんで話す。
「スモークハウスとは困ったな」
「私たちは完全に手を出せません」
とアーノルドはその身に着ける制服に恨むような視線を向ける。
万が一にでも組織としてそこに赴けばどうやった所で王室まで話は届いてしまう、と。
「本当にすまない」
それまでのありとあらゆる総てを含めて、アーノルドは深く頭を下げ謝罪する。
「謝罪は後でいい。 今は俺たちの事情よりも聖女様のことが最優先だ」
報酬の話もだ、と言外にレオナルドは言う。
「さしあたって金だ。 いくら出せる? 」
「私の手元にある分以上は自由にはなんとも。 誰か雇うつもりなら前金を多めに渡してあとは後日成功報酬という形に――」
「人を雇うつもりは無い。 現金が欲しいだけだ」
レオナルドは捜査官の発言を遮るように返す。
「おい、まさか」
「多分アンタの想像してる通りだ」
それは無理だ、とアーノルドは反射的に返す。
「いやそれしかない」
「一体どれだけの額になると思ってるんですか!? 」
「さあ、想像もつかねえな。 だがそれくらいしかねえだろ。 唯一合法的な手段だ」
「いくら現金を隠し持ってるかもわからないんですよ! 」
「そうだな」
馬鹿げているよな、とレオナルドは付け足す。
「ああ、それと――」
次は何を要求されるのだろう。 頼むから物騒なものは止めてくれ、とアーノルドは心から願う。
「アンタの銃を貸してくれ。 空砲じゃなくて実弾を一発だけ入れてな」
「だから一体何を……」
「足りない分の金を道中強盗でもして稼ぐよ」
ああ、もちろん冗談だ、とレオナルドはケラケラと笑う。




