ブルライン視点
「ブルライン~、こっちの店で食べたいんだけど」
「このブローチと、アクセサリー、あ、この服も欲しいわぁ」
「私にも指輪買ってくださらない?」
ここ最近、キャンベルが変わってきてしまった気がする。
やたらと強請ってくるようになったのだ。
本当に愛する幼馴染だからこそ、希望は叶えるようにしたいのだが……。
「キャンベルよ……少々無理がある。父から得ている小遣いでは足りないのだよ」
「そんなぁ……だって、私にはブルラインしかいないのに……そんなに私のこと嫌いになってしまったというの?」
「いや、そんなわけないだろう」
「そうでしょう……やっぱりなんだかんだで婚約を目前にして、あの女の方を意識するようになっちゃったんでしょ」
「いや……違うぞ」
なぜかは知らないがキャンベルがわがままになってしまった。
「もう……ブルラインに見捨てられたら生きていく気もしないんだから……言っちゃうわよ?」
「おいおい、今日はまだイチャイチャしていないぞ……」
「そうじゃなくて! あの女に言いふらしますよってことよ」
嫌な予感しかしなかった。キャンベルは都合が悪くなると脅してくる悪い癖があるからだ。
「何を言うつもりだ……」
「私とブルラインが恋仲ってことを」
「ばかな! そんなことすればキャンベルだって未来はないだろう」
「だってどうせ捨てられてしまうのなら私なんてどうなったって良いわよ。ブルラインと豪華で幸せな毎日しか考えられないわ」
キャンベルの目が本気だということはすぐにわかった。
このままではまずいし、バレないためになんとかして金を集めるしかない。
キャンベルが変なことをしないように、なるべく言うことを聞くしか未来はないのかもしれない。
それでも幼馴染のキャンベルは愛おしく思ってしまう。
♢
「今日は、ここのお店でご飯食べましょう」
「ここはやたら高いし……」
「大丈夫よ、この店、後払いもできるし」
すでに私のお金はない……しかし無ければ不倫がバレてしまう。
間も無く結婚するわけだし、アエルなら相当な財産を持っているはずだ。
貸してもらえるように頼んでみるか。
今までアエルに断られたことなどないから、何とかなるはずだ。
それにこの店、私だって前々から一度は入ってみたかったし、後のことはなんとかなるだろう。
「わかった……入ろう」
この日、私は初めて代金の支払いを月末に払う『付け払い』をするのだった。
一萬紙幣五枚分ならなんとか貸してくれるはずだ……。