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プロローグ

「そんな……ムーライン様がお亡くなりに……!?」

 婚約者が事故で帰らぬ人となった。


 突然の悲報を聞いて、公爵令嬢である私、アエル=ブレスレットは悲しみで溢れた。


 デースペル伯爵御子息の長男だったムーライン様とは政略結婚だった。

 政略結婚とは言っても、彼はいつも優しくて頭もよく、何よりも私のことを大事にしてくれていた。


「アエル……デースペル伯爵と話し合ったんだが……」

「はい……なんでしょうか、お父様」


「デースペル伯爵の次男のブルライン殿と婚約の話を進める気はないだろうか……お前の気持ちとしては不本意だとは思うのだが」


 こんな事態でも婚約の話を進めなければいけない理由もあったから、悲しみを抑えてお父様の話を受け入れた。


「わかりました。ですが、ブルライン様と面識がなかったので、しっかりと嫁げるかどうかこの目で確かめたいと思います」

「あぁ……本当にこのような状況なのにすまないな」


 ♢


「……はじめましてアエル様。ブルライン=デースペルです」

「お初にお目にかかりますブルライン様。アエル=ブレスレットと申します」


 ブルライン様は、見た目はどことなくムーライン様の面影があった。


「兄はいつもアエル様のことを話していましたよ。私も亡き兄に負けず、アエル様のことをしっかりと愛せるよう尽くしたく思いますので」

「は……はぁ、ありがとうございます。これからよろしくお願い致します」


 ブルライン様の口調が棒読みのように聞こえて本心かどうか疑ってしまった。

 おそらく大事な縁談だから、しっかりと言うようにデースペル伯爵様に言われたのかと思ってしまう。

 だが、決まったことを言うのが普通の縁談なことは知っているから、あまり気にはしなかった。


 それでも、初対面でいきなり愛しますと宣言されてしまうのは、今の私には重く感じてしまう。

 今でもムーライン様のことを思い出してしまうから。


 私はこの気持ちの状態で『愛します』と言えなかった。


 ♢


 婚約を前提とした付き合いが始まり、最初は週に一度のペースで会ってお茶をしたりして交流を深めた。


 変わった性格で、貴族としては勉強不足のような点がいくつかあった。

 ムーライン様に対しての教育が集中していて、自分の教育は曖昧だったと本人は言っている。


 少々問題はあっても、ムーライン様と同じように私のことを大事にしてくれた。

 結婚するまではキスも何もしてこない紳士さで、徐々にブルライン様のことを慕うようになってきたのだ。



 そして、縁談が始まってから一年の時が過ぎた。

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