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そのよん
目を覚ますと、そこはこれまでとは雰囲気の違う部屋だった。
今までの部屋は、「もの」に溢れていたのだが、この部屋にはベッドが一つ。ただそれだけだった。いや、厳密には違う。なぜなら、明らかに人がいるような膨らみがあったからだ。
部屋の隅から隅まで調べたけれど、やはりベッドしかなかったので、覚悟を決めて掛け布団をめくった。
そこに居たのは、くまのぬいぐるみを抱きしめて、瞼を泣き腫らしたまま眠る一人の女の子だった。
その女の子は…紛うことなき「私」だった。
「私」は、幼い頃の私だ。心をいたぶられて、泣き疲れて眠りについた私。
そうだ。私は、私自身を守るために「私」に辛い記憶と、少しの幸せな記憶を押し付けて眠らせたんだ。
いのちが吹き込まれた特別なくまのぬいぐるみを抱きしめて、毎日死にたいと願った「私」。泣きながら、誰か助けて欲しいと夜に願った「私」。
私は、ここで「私」を起こす事も、眠らせたままにしておくこともできるのだろう。直感的に、そう思った。そして私は―――