椿ハルカ
ZE0051.04.02
私の名前は〔椿ハルカ〕。
年齢12歳。
この世界では12歳は特別な歳。
成人は16歳からなのだが12歳からは準成人。
成人は権利と義務が発生するが準成人は権利だけ成人と同じになる。
そんな特別な4年間の始まりの歳。
そして私はこの日、この町唯一の大学〔エデン大学〕に入学したのだった。
『12歳での入学は思ったより少ないんだね』
登校の時、回りを見て私は自分と歳が近そうな人を捜したが全然見掛ける事が無かった。
『普通12歳では遠隔通信教育で寮生活のある学科には通わないのかな?
この学校は特殊だからか……』
そう私の通う学科は軍人育成の為の学科なのだ。
なぜ私がこの大学の軍人育成学科に通う事になったのか、それは私が親の言いなりだったからだ。
私の進路は生まれた時から決まっている。
私の両親は二人とも軍人だ。
しかも若くしてそれなりの階級になっている。
兄もこの大学に通っていて常にトップ争いをしていて優秀な成績をのようで、両親は私にもそれを期待している。
『私には無理』
本音が漏れる。
頭も運動神経も普通。
特に得意な事も無い。
それでも私は両親に逆らってまで遣りたい事も無いし、そんな意思も無い。
流されて生きているだけ、そしてこの大学に進学しただけ。
『あーあ。私、この先も言われるままに軍人になって、親の決めた人と結婚して、その子もまた私と同じように軍人になるように育てるのかな? ハー』
漠然と悲観的な未来を想像して溜息を吐く。
回りを歩く年上の人達の中を少しゆっくりした足取りで進んでいると前の方に同じくらいの歳の女の子の姿が見えたような気がした。
『他にも親に言われて来た子がいるのかな?
友達になれるかな?
それとも兄のように優秀で……え?』
不意に後ろから肩を叩かれる。
「あの、椿ハルカさんでしょうか?」
「はい。椿ハルカです。
あなたは?」
「失礼しました。
私は榎ナツミと申します。
ハルカさんのお母様であるサナミ様よりハルカさんの面倒をみるようにと仰せつかっております。
宜しくお願い致します」
「はぁ…母からですか……はぁー」
『面倒をみるかぁ。
本当は私を監視する為にだよね。
ここでも私は監視されるのか。
私の自由はどこにあるんだろう……』