5.一人前の探索者
五話目の投稿です。最終回です。
デリックは無事なようだ。
アランは彼と交信しつつ建物に接近していった。
『アラ……、建物が見……? そこに閉じ……められた。中からは開かな……、外から開け……』
近づくにつれて電波の調子が良くなっていく。
デリックさんたちは建物に閉じ込められて身動きがとれないらしい。
唯一の建物に近づいていくと扉が見えきっちりと閉まっていた。
「デリックさん、どうしたら扉を開けられますか? 俺よくわからないです」
扉には取っ手も無く、周囲にはボタンもない。
デリック達がどうやって中に入ったかもわからなかった。
『扉の右横……小さな差込口がある……だ。そこに『サーチャー』の端子……接続するんだ。後は『サーチャー』が勝手に開けてくれる』
デリックの声が聞き取りやすくなった。
すぐ扉の向こうに居るみたいだ。
アランは扉の右横を注意深く見た。
すると小さな穴が一つだけ空いているのがわかった。
嬉々として『サーチャー』端子を穴に差し込んだ。
モニター部分に解析の数字が出てくる。
またたく間に数字が零になり扉がゆっくりと開いていった。
『サーチャー』がゆっくりと姿を現す。
その横からは獣人のヘクターも顔を出した。
『アランでかした! 恩に着るぞ!』
デリックが乗った『サーチャー』が近づいてくる。
『デリック! 無事なのか!? 声を聞かせるのじゃ!』
艦長が興奮して話しかけてきた。
『艦長、心配かけちまったみたいだな。申し訳ない!』
『説教は艦に戻ってからしてやる、無事に艦まで戻ってくるのじゃ!』
『デリック! 無事なのね? 良かったわ、心配したのよ……』
ブレンダは泣いているようだ。
『すまないブレンダ、ドジ踏んじまった。勘弁してくれ!』
デリックは平謝りしている。
「デリックさん、一旦艦に戻りましょう。下層部に魔物がいるかも知れません」
『そうだな、俺たちの調査ではスライムぐらいしか居なかったが……、とりあえず戻るか』
デリックの判断に探索者達が一斉に喜ぶ。
アランが乗る『サーチャー』が先頭を歩き、コンテナ車に探索者達が乗りこむ。
デリックたち『サーチャー』三機がその後に続く。
数十分後にはエレベーターシャフトに到達して、次々に艦へ戻っていった。
「デリック!」
ブレンダがデリックさんに抱きつく。
そして盛大に泣き始めた。
「アラン! ありがとよ、おかげで助かったよ!」
獣人のヘクターがアランの手を取って嬉しそうに言う。
他の探索者達も次々にお礼を言ってきた。
「アラン、見事な救出だったぞ。艦長として礼を言わせてくれ」
艦長が帽子をとってアランに頭を下げた。
「艦長やめてください、艦の一員として当たり前のことをしただけですよ」
アランは照れながら頭をかいた。
「アラン、お前は一人前の探索者だ。ありがとうよ」
デリックがお礼を言ってきた。
ブレンダが笑顔でアランを見る。
「ありがとうアラン、あなたは私の大切なひとを救ってくれたわ」
「俺もみんなが助かって嬉しいです。これで元通りですね」
アランの言葉に一同が歓声を上げた。
こうして救出作戦は無事完了した。
アランは艦のクルーたちに認められ、探索者としての第一歩を踏み出すのだった。
ここは未知なる古代都市が迷宮と化して眠る神秘の大陸、『エンブロン大陸』。
古代都市発掘艦『アレクサンドロス号』は、これからも危険な迷宮に挑み続ける。
それがトレジャーハンターの宿命なのだ。
完
これにて完結です。ありがとうございました。