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3.『サーチャー』起動

三話目の投稿です。

 探索班の班長、隻眼せきがんのデリックは『サーチャー』の操縦席で部下たちに指示を出していった。

 最初に命令したこと、それは拠点の確保だ。

 いつ魔物が襲ってくるかも知れない、早急に防御陣地を築かなければならなかった。

『サーチャー』を周囲に配置して周りに睨みをきかせる。

 コンテナ車から資材を運び出す探索者達は、皆きびきびと動いた。

 バリケードが築かれ有刺鉄線が敷かれる。

 サーチライトが周囲を明るく照らし始めた。


『よし、ドローンを飛ばして周囲を索敵しろ。魔物の警戒とともに辺りの建物も調べるんだ』


 マイクを通して探索者たちに指示を出す。

 程なくして小型ドローンが拠点を飛び立った。

 最初に周囲の魔物の分布を調べる事から始めた。

 探索に先立って投入した探索ドローンは、謎の生物に破壊されて戻ってこなかった。

 慎重に高度を保ちつつドローンは都市の奥深くへ飛んでゆく。

 ドローンのカメラに、地面をうごめく無数の影が映し出された。


 うごめく影は無数のスライムたちだった。

 原生動物に近い魔物のスライムは、多種多様な種類が存在する。

 酸で獲物を溶かす攻撃が一般的で、それほど移動速度はない。

 どろどろに溶けた獲物を体内に取り込んで消化するのだ。

 あまり見ていて気持ちの良い魔物ではなかった。


 更にドローンは奥へと進んでいく。

 ドローンを操縦しているのは獣人のヘクターで、彼は陣地内のモニターを見ながら器用に動かしていた。


「デリック、地下へ繋がる階段を見つけた。指示を頼む」


 ヘクターがデリックに聞く。


『ドローンを回収しろ、全員で魔物を掃討して資源を回収するぞ』


「了解」


 探索者たちに緊張が走る。

 魔物たちとの戦闘が近づいていた。



 ー・ー・ー・ー・ー



 物資が続々とエレベーターに載せられて『アレクサンドロス号』に運び込まれていた。

 デリック達は都市の上層部を掌握してお宝をせっせと運び出していた。

 スライムたちとの戦闘は一方的な探索者たちの勝利に終わった。

 鉄の塊である『サーチャー』に原生動物が勝てる訳もなく、次々に討伐されていった。


 古代都市の上層部は比較的裕福な民家が多いようだった。

 家具などは長い年月を経て朽ち果て使い物にはならない。

 もちろん食べ物などは跡形もなく消え去っていた。

 では、何を艦に持ち帰ったのか。

 それは長い年月を経ても朽ち果てない宝石や金などの貴金属、とりわけ魔法金属と呼ばれるミスリルや魔鉄鋼と言った希少金属が主なものだった。

 未発見の古代都市国家の残骸。

 唸るほどのお宝に艦長の顔も一段と優しくなっていった。




 異変が起きたのは上層部の物資を全て回収して、下層部を目指して探索班が移動した後だった。

 それまで順調に連絡を取り合っていた探索班から一切の通信が途絶えたのだ。

 七名のベテラン探索者。

 それも『サーチャー』と呼ばれる戦闘ロボットを三体も投入しての遭難。

 艦内に残された四名は、深刻な顔をしてモニター室で対峙していた。



「デリックからの通信記録は無いな?」


「はい艦長、昨日より一切の通信がありません」


 解読班の少女が答える。


「艦長どうしますか? 同業者に探索を依頼するという手もありますが……」


 ブレンダは歯切れの悪い物言いをする。

 同業者に依頼した場合、莫大な費用を請求されることになるのだ。

 一発で破産してしまうのは目に見えており、彼女も遠慮がちに進言した次第だった。

 沈黙がモニター室を包み込む。

 厳しい顔で艦長は考えていた。


「やむを得ない、デリックたちの命には代えられん。救出を依頼するぞ」


 絞り出すように結論を言う艦長。

 それは、救出が成功しても失敗しても『アレクサンドロス号』の古代都市発掘艦としての活動が終わることを意味していた。


 みなくやしそうな顔をしている。

 そんな中、アランだけは一つの決心をして艦長を見ていた。


「艦長! 俺が救出に向かいます。『サーチャー』への搭乗を許可してください!」


 鋭い視線で艦長を直視してアランは言い放つ。

 その場の三人が驚いた表情でアランを見た。


「何を言っておるのじゃアラン! 状況がわかって言っているのか!?」


 目を見開いた艦長がアランに詰め寄る。


「アラン、どうかしてるわ。七名のベテラン探索者達が遭難した古代都市に、あなた一人が行ってどうにかなると思っているの?」


「わかっています! でも、これしか思いつかないんです! この艦を降りたくないんですよ! お願いしますチャンスを下さい!」


 必死の形相で艦長に懇願する。

 艦長は厳しい顔をして黙った。


「艦長! なぜ即座に否定しないのですか!? アランでは無理です! やめさせてください!」


 ブレンダが迷っているであろう艦長を問いただす。

 その間も艦長はアランの顔をじっと見据えていた。


「艦長!」


 ブレンダが叫ぶ。


「よしアラン、上層部の探索だけ許可する。何がデリックたちに起こったのかを見極めてくるのじゃ」


「はい! わかりました!」


「私はどうなっても知りませんからね!」


 ブレンダは艦長を睨むとモニター室から勢いよく出ていった。


 救出のための軽い打ち合わせをした後、アランも室内から出る。

 以外なことにブレンダはモニター室の前にいて、アランが出てくるのを待っていた。



「アラン……、危険な任務にあなただけを行かせてしまってごめんなさい……」


「いいんですよ、俺が言い出したことですから」


「お願い彼らを助けて! 彼らは……、デリックは必ず生きているわ!」


「わかりました、必ずデリックさんたちを連れて帰ります!」


「ありがとうアラン……」


 ブレンダは泣き崩れる。


「では、行ってきます!」


 アランはブレンダをその場に残し勢いよく走り出した。





 アランは『サーチャー』の格納庫へ走っていくと、大急ぎで起動点検に入った。

 彼は艦長の助手をする傍ら、『サーチャー』に乗るための訓練も受けていた。

 まだベテラン探索者たちのように動かすことは出来ないが、一通りの作動方法は学んでいた。

 操縦席に乗り込み手先のボタンを一つずつ押していく。

 目の前のモニターには動作確認のランプが光り、全てが異常なく操作できているようだった。


 アランは大急ぎで自分の部屋へ戻っていった。

 革鎧を着込み短剣を腰に下げ、小銃をホルダーに収納する。

 そして一枚のスカーフを手にとった。

 血のように赤いスカーフは、孤児院に捨てられていたときに身に着けていた唯一の物で、アランの宝物だった。

 鏡に向かって立ち、首にスカーフを巻く。

 一度だけ力強くスカーフを握ると、勢いよく部屋を出た。




 格納庫へ戻ったアランは、一息大きく吐き出すと『サーチャー』の操縦席に乗り込んだ。

 そして魔導エンジンを始動させるスイッチを慎重に押す。

 唸りを上げて『サーチャー』が起動した。


「艦長聞こえますか? こちらアラン、これより古代都市へ潜行を開始します」


『聞こえておるぞ、くれぐれも無茶をするでないぞ。では行ってくるのじゃ』


「はい!」


 ランプが回転してブザーがけたたましく鳴り響く。

 アランを載せた『サーチャー』はゆっくりと歩いてエレベーターに乗り込んだ。


「潜行開始!」


 一気にエレベーターが地下へと降りていく。

 思った以上に速い落下速度にアランは歯を食いしばった。

 エレベーターは唸りを上げてどんどん落ちてゆく。


 けたたましい轟音が響き渡り、エレベーターシャフト内の光景が上へと流れていく。

 急激な重力の変化にもう耐えられないと思った瞬間。

 急停止したエレベーターの扉がゆっくりと開いた。



 時間まで止まったかのような静寂、あたりに動くものは一切存在していない。

 アランは周囲の異様な光景に圧倒されてしばらく固まっていた。

 そこは暗闇がどこまでも広がる地下数百メートルの地下古代都市。

 魔導都市国家『ラルーナ』の最上階部分。

 魔物が蠢く未知なる空間だった。

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