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Rose  作者: 莉愛
6/9

ーーーー

1人で歩く。その横に1人が現れて、

2人で歩く。その横の1人が離れて、

独りで歩く。

独りで歩んでいく。


それが人生、それが人生。


暖かい世界が見えた。鮮やかな世界。

ここはどこだろう。

お伽噺のような、綺麗ではないんだけれど、

どこか温もりのある小洒落た家。

庭に咲く花は色とりどりで、空は快晴。

おまけに蝶々まで飛んでいる。

あぁ、生きているってこういうことなのかな。


「昔昔、永遠の眠りの呪いを掛けられた魔女が居てね。」


優しい光が眠気を誘ってくる。

声の主はその光の向こう、部屋の奥の椅子に座った人物のようだ。私は寝ているのだろうか。


「どうしてかと言えば、魔女は産まれる前から、

罪に囚われていたんだ。運命とも言うんだけどね。

選ばれてしまったんだ。基準は私も分からないが、何かが引っかかったんだろうね。神様に選ばれたんだ。

魔女はとても美しく生まれたんだよ。周りの人は皆、羨んだ。ただ、近づく人は少なかったんだ。

何故かって?彼女が魔女だったからさ。

人は昔からそうなんだ、自分と違う人、自分以上の人を嫌って跳ね除けようとする。嫌なくせだよね。人間の。

それで魔女は孤独なまま10数年生きた。

ある日、彼女は魔法使いに出会う。所謂お伽噺みたいね。その偉大な魔法使いは魔女を嫌うことは無かった。それどころか魔女を気に入ったんだね。

でもこのまま上手くいくかっていったら、そうではなかった。神様が掛けた呪いは解けてないからね。

神様は理不尽にも2人を引き離す。

魔女を呪いで眠らせたんだ。

それどころか人の記憶から魔女のことを消そうとした。あぁ、なんで神様かって知っているのかって?

それは内緒だよ。まぁともかく、魔女狩りとしても、倫理的にも酷い裁きを魔女は受けて、魔法使いも魔女を忘れて時は流れていった。

魔法使いや魔女は不死の魔法が掛かっていない限り、人間よりは遅くとも、いつかは老いて、やがて死が訪れる。神様は狡いからね、魔法使いが死を迎える直前に魔女のことを思い出させたんだよ。

魔法使いは死後、神様に会えたのかな。

どう思っただろうね。時を同じくして、長い長い眠りについていた魔女の呪いは解けた。

呪いのおかげで魔女は若いままだったんだけれど、それはそれで苦しいんだな。

目が覚めて突然、数百年経った世界って考えられないでしょう?そんな世界で生きていけるかって言われたらきっと生きていけない。

さらに魔女はそれまで長い長い夢を見ていたから、混乱していたようで。唯一夢以外で魔女が覚えていたのは、眠りにつく前の魔法使いとの思い出だけだった。勿論魔法使いがこの世にもう居ないことには気づいていたから、魔女はどうしようも無くなって、自らの命を経ったんだ。

神様はね、魔女に死する事だけを赦した。

そのあとの魔女のことを私は知らないが、きっとその魔女は生まれ変わっていたとしても、夢が嫌いだろうね。あぁこれはね、あまり素敵じゃないけれどお伽噺の1つさ。嘘か誠かは分からないけど、ずっとずっと昔のお話。幸せな終わりを迎えられるとは限らないのさ、いくらお伽噺でも。」


長くも短い話だった。この柔らかい日差しの中、小さい頃を思い出すような、そんな気がした。懐かしい、どこかで見たことあるような、そんな感覚が現れる。

何か言いたいのに言えなかった。考えてるうちに視界がぼやけて世界が歪んでいく。


『待って、待ってよ。貴方は誰、』


思ってるうちに、消えていく、消えて、あぁ、届かない。


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