表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

9、悪役令嬢、地上へ。



「なんだ、そんなことが望みか?」


 目のくりっとした魔王ザザバエゾは、不思議そうな顔つきでそう言った。




 キャロラインは恐る恐る尋ねる。


「ええ、……駄目かしら……?」


「駄目ということはない」と言った後に、ザザバエゾは笑った。

「ははははは。しかし、面白いものじゃの。朕の命を狙いに地下に潜ろうとする人間はここに誰一人辿りつかないというのに、地上に出ようとダンジョンを彷徨っていたキャロラインだけがここに辿り着くとはな」



 キャロラインはすべてを話したのだ。


 勇者パーティーから追放されたこと。


 地上を目指していたはずなのに、いつの間にかここに辿り着いてしまっていたことを。


 そして、望みを言ったのだ。


 地上へ帰りたい、と。



「よし、では朕の手を握れ。それで地上まで連れて行ってやろう」


「ありがとうザザバエゾ!」


「はははははは。礼には及ばぬ。朕とキャロラインは既に友ぞ……、あ……それとなんじゃが……」



「なぁにザザバエゾ」


「朕は時々そなたと遊びたい。もっと色んな話をしてみたい。だから……その……」


 恥ずかしそうにうつむく魔王の頭をキャロラインは撫でた。


「いいわよ。あなたならいつでも歓迎だわ。夜寝ている時以外ならいつでも遊びにいらっしゃい」


 魔王ザザバエゾの顔が明るくなった。


「うむ! そうする!」



 ザザバエゾが手を差し出し、キャロラインはそれを握りしめた。


「ちなみにじゃが」と小さなザザバエゾは上目遣いで尋ねてきた。

「人が多くいる場所は好きか? キャロライン」



 ――人が多くいる場所?



「ええ、好きよ。酒場とか好きだし」


「ふ~む。なら、ちょうど沢山人が居る場所にゆくとしよう」



 ザザバエゾはにっこり笑い、そして全身が黒く光りはじめる。キャロラインの体も同じように漆黒に光る。


 その不吉な光が無数の蟻がむらがるように体の周りを覆いつくし、目の前が暗転し、次の瞬間、ザザバエゾとキャロラインは地上に立っていた。



 青い空。光輝く太陽。緑色の大地……



 そして、兵士だ。兵士の群れ。地上を覆いつくすほどの大軍が二人の目の前に広がっていた。



 キャロラインと魔王ザザバエゾは、ちょうど王家の軍隊とドンスター公の軍隊が対峙するド真ん中に現れたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ