表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

名残雪

作者: ミクマリ

季節外れの雪が降っています


私は雪が嫌いです

雪が降るたびにあの人のことを思い出します


巻いていたマフラーもニット帽もコートも

粉雪で白く冷たくなっています

白い天使が舞う新宿のホームはすっかり雪化粧され

東京の街並みにしてはとても綺麗です



さっき、先輩の井上さんから突然

プロポーズされました


いつも私をいじめる嫌な人だと思っていましたけど

まさか私のことが好きだったなんて、


(俺、お前のことが好きだ、だから結婚して欲しいと言ってんだけど)


びっくりしました

おつきあいする前に先にプロポーズするなんて


でもごめんなさい


私にはまだ忘れられない人がいるんです


「朗」


あなたと初めて会った時も雪が降っていましたよね


寒くて、もうここが東京とは思えない程でした


私達の出会いも普通じゃなかった

なんであの時、あなたは荷台の上に居たのかしら

いくら寒いからといっても

私の荷物段ボールから無断で私の下着を拝借し

マフラー替わりにするなんて

本当にあの時

あなたが変態さんに見えましたよ


私は大学に入学したばかり

あなたは3回生

あなたからおつきあいして欲しいと言葉も貰えませんでした


でもいつのまにか一緒に住むようになってました


私が作る料理に微妙なツッコミを入れる癖

チャーハンにオイスターソースをかける嗜好

私の課題デッサンをふたりで一緒に描いたよね


あなたは映像学科

私は油絵学科

あなたも絵が好きだった

あなたは私を描いてあげるといって

いつもちっとも似てない似顔絵を描いてた

こんなに私は美人じゃないよっていっても

これでいいんだと胸張って笑っていました


私はあなたと結婚するものだと思っていました

あなたは今、髪が長いけど

就職活動する時には髪を短くして

スーツの似合うサラリーマン姿を想像していました

そして私はどんな奥さんになるんだろうと思っていました


あなたはバイト先の引っ越し現場で事故に遭い

私を残してあの世に行きました

その時もこんな季節外れの雪が降っていた3月



「寒い」

私は視界が白くなった風景を見ながら

呟いた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ