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Shout Hickers (シャウト ヒッカーズ)  作者: 端花 東霞
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#1 Not ready to die

3月某日、山形県のとある町のライブハウス。大雪で厳冬の寒さがまだ残る夜に、その事件は何の前触れもなく起きた。その場にいた約100人の客は歴史の証人となり、その日のことを忘れることはなかった。


 なぜなら、その日その場所でライブをしたのは、後に世界を巻き込んだセールスを打ち立てることになるバンドであったから。


 『The HickRocks』通称:ヒクロ


 皆にそう呼ばれるそのバンドが生まれたのは、運命のようで必然のようで。アジアの東の端の島国、その片田舎で泥臭い青春を過ごした少年少女の物語。



xxxxx



 4月、世の中は入学シーズン。真新しいものを身に着け、心を躍らせる季節。桜舞い散る街を歩んで、いざ新たなステージへ…。

 それが普通の4月、僕が間違っているとかではきっとない。

 だとしたら、この冷たくて白い壁は何だろう?!いくら幼い頃から絶望的に察しが悪いと言われてきたこの僕ですら、これは察しが付くというか分かる。


 そんな「雪壁」に驚きながら高校の入学式へと向かう僕に災難が降りかかるのも時間の問題だった。春の温かさが雪壁に余計な細工を施したのである。溶け始めた雪壁は基礎を失い、こちらに倒れてきたのである。


「え…??」

ドスン。


 気づいた時には穴の開いてないかまくらの中であった。ついてないとしか言えない。加えて、その重さは自分自身では抜け出すことができない。これまで目立った部活や運動をしてこなかった為、体力や筋力は貧相で抜け出せる可能性などなかった。その挙句、周りには誰もいない。人通りが少ない道だったようだ。


『♪I'm not ready to die!!!!!』


 耳にしたイヤホンから流れる洋楽の歌詞、全くその通りだ。こんなとこでくたばるのは嫌すぎる。しかし、凍った雪の塊は体温を奪い動く気力はどこかへ行きつつある。眠い、、眠い、、、

 

「全く何してんのさ」


 中々にダサい最期を頭に浮かべ、襲い来る眠気に従おうとしたとき、その声は唐突に耳に入った。

 次の瞬間、ふっと身体が持ち上がり殺人かまくらから引き出された。あまり突然でぼーっとしていた僕には、何事か瞬時に理解することができなかった。濡れた衣服を身に纏った身体が春風にあたり、先程とは違う寒さに意識が覚まされてはじめて気づいた。心の臓が大きく鼓動したのがよくわかった。

 僕と同じ高校の制服を身に纏っているが、同い年ではなく恐らく先輩。高校生らしからぬ明るいミントアッシュのキタロウヘアー。口元には一点のピアスが見える。スカートは短く、上着も軽く着崩している。見えている太ももはその辺にいる女子高生よりは肉付きがいい。明らかに僕とは生きる世界が違うような、そんな出で立ちの女性が目の前で僕の両手をきつく握っている。静かながら深みのある笑みを浮かべるその人の手は、温かく少々肉感があり、柔らかいながらもすべすべとしている。誰もが描く理想っていう感じだった。両の手をそれぞれ握られていることを認識するに連れて、妙な恥ずかしさと恐ろしさ交じりの緊張が内に芽生えた。


「あ…あのぉ…」

「なに?小刻みに震えてるけど、大丈夫?」

「あ…ありがとうございます…」


 声に恐怖と動揺を隠せない。まともに顔も見ることもできない。


「全く初めてさ。雪壁に埋もれてるやつを見るのはね。ドジっ子?というか1年生?」


 『ドジっ子』その言葉がもうヤンキーに恐喝されているかの如く、身を凍らせた。


「その…僕もう行きますね。」


 握っている両手を解き、僕は早足で歩き始めた。


「そのびしょびしょの制服で学校行くのー?」


 言われて気が付いた。さすが濡れネズミのような見て呉れで行くのは、いくら外見をあまり気にしない僕でもきついものがある。このまま学校へ行くことへの抵抗から歩みが自然と止まっていた。


「うちに来れば?ちょうどサボりたいと思ってたとこだしさ。」

「え!?」

「心配しなくても取って食ったりはしないよ。いいから来な。」


 こうして、僕の高校生活初日は謎の派手髪女性の先輩による自宅連行で幕を開けたのである。エロ漫画の世界で憧れるようなシチュエーションは、実際には想像できない恐ろしさを孕んでいること身をもって知ったのだ。


xxxxxx



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