そして現在
そして…
今に至るのである。
暗闇の中落下する浮遊感と、走馬灯を感じながら
数分…数時間…数日…
と、時間の感覚の無い世界を通り過ぎ
気付けば知らない廃墟の城の中に跪いていた。
城の中は、歴史を感じるものではあったがボロボロで、城としての用途を無くし
城の床は、焼き燻った様な跡と穴や罅割れの様なものがあり
よく城としての形状を保っているなと感心出来るレベルの廃城具合だった。
「…言葉…わかりますか?」
不意に頭上から声を掛けられ、其方を向く。
「…あ…ああ…」と応じる。
人間不信となった僕は、見知らぬ人に声を掛けられても言葉を交わす事がとても苦手になっていた。
唯一、言葉を交わせるあの彼女でさえ
長文で話をするのが出来ないくらいに
頭上の女性は
どうやらあの時、僕のベットに居た女性のようで
「やっと言葉が交わせる」と喜んでいたようだが
僕としては1人で死ぬ事も生きていく事も自分の意思で生きていく事も出来ないので
この時でさえ、苦痛以外のなにものでもない。
「話も出来ず、突然この様な事をして申し訳ありません。
しかし、こちらも時間が無く
無理矢理貴方をこちら側に招く事にしました」
女性は少し悲痛な顔をしながらそう告げ
「この世界は貴方の世界とは別の次元の世界です。
しかし、貴方の世界とも繋がりがあり
貴方の世界で言う神隠しなどは…こちらの世界に迷い込んだ…そう思って頂けると理解し易いと思います」
表情を変えず、矢継ぎ早に女性はそう話をし
「今、こちらの世界が滅びようとしています。
この世界が滅びると、貴方の世界との繋がりが広がり
1年に1人迷い込んでいた貴方達の世界の人々が
全てこちらの世界と繋がってしまいます。
どうか…それを踏まえた上でこの世界を助けて頂けませんか⁉︎」
…そう言葉を終えた。
何を言っているのだ?