表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウルスライアス清掃紀行  作者: 龍々山 ロボとみ
第一章:誕生、浄神の使徒
38/67

終話:解決、イシヅチ山ホウキ坊


 イシヅチ山の大掃除を終えたライアスは、山の近くにある寂れた村へと向かっていた。


 村からでも、山の様子を見ていれば何かとてつもないことが起きていたのは分かるだろうが、その結果までは分からないだろうから、その報告に。


 その村でライアスは、山の瘴気を祓ってくると約束して、報酬としてご飯をご馳走になっている。

 食べるだけ食べて逃げたように思われないためにも、ホウキ坊を倒した証を見せておこうと思ったのだ。


「この団扇を見せたら、分かってくれるよね?」


 ライアスは、ホウキ坊が遺した団扇片手に呟く。

 他に残った衣装や骨などは山の祠の元に埋めてきたので、証になりそうなものといえば、この団扇しか手元になかった。


『大丈夫でしょう。見るからに天狗のものですし』

「だよね。ちょっと振ったらびゅうっと大風も吹くし」

『使うときは周りに気を付けてくださいね? 普通の者がまともに風を浴びたら、転んでしまいますわ』

「はいはーい」


 ウルスラが言うことはもっともなので、ライアスは素直に頷いた。

 それからさらに道を歩く。


 その途中でウルスラが、感慨深げに呟いた。


『……それにしても、ライアス』

「なぁに、神様?」

『ほんとうに、強くなりましたよね。はじめて会ったときと比べたら別人のようですわ』


 ライアスの身体。

 会ったばかりのころからいえば、一回りも二回りも逞しくなっている。

 元々余計な肉など付いていなかったが、今のライアスには、しなやかなで力強い筋肉(にく)がバランスよく備わっていた。

 鍛えられた、というよりは、必然的に身に付いたという感じの筋肉が。


「そりゃあ、イゾウさんにこれでもかとシゴかれたからねぇ……。途中から、イゾウさんの知り合いとかも次々に来て、とんでもないことになったし」


 基本的にイゾウは、実戦の中でこそ強くなれる、という考え方だったので、毎日毎日ひたすらライアスを戦わせては、ボロ雑巾のようにした。

 ライアスはひたすら箒を振り、そのたびにイゾウたちにシバかれて、ぶっ倒されていた。


『ライアスの頑丈さを最大限活かして、生かさず殺さずの毎日でしたものね。よく十月ももったものですわ』

「ほんとだよね……。毎日タマヒコ君に心配されてたし……」


 思い出すと、いまだに気分が沈む。

 修行が終わったのはもう二、三か月も前のことだというのに。


 良かったことといえば、毎日三食美味しいご飯を食べられたということぐらいだ。

 食べて鍛えて寝て、食べて鍛えて寝て。

 強くなるためとはいえ、無茶苦茶な生活であった。


『修行が始まったばかりの頃は、よく夢の中で泣きつかれたものですわ。神様助けてー、って。そのたびに私がよしよしと慰めて』

「え、俺、そんなことしてないでしょ?」

『つらすぎて記憶があいまいになっているのですね。かわいそうに』

「いやいや絶対ないって。それを言うなら神様こそ、しばらくどっか行って帰ってきたときは、顔中ぐしゃぐしゃにして泣きついてきたじゃん。うわーん、ライアスー、って」

『そ、それはもう忘れてくださいな……!?』


 その時のウルスラは、ライアスの腹に顔を押し付けたまま、ずっとぐすぐす泣いていた。

 怖い人に叱られた年相応の少女のような、そんな感じだったらしい。


 ちなみに、その時ぐらいからウルスラのやれることがちょっと増えたみたいだったし、箒の力も改良されたような感じがした。

 その時のライアスはそれどころではなかったので、詳しく聞かなかったが。


『あ、そろそろ村が見えますよ!』

「はーい。次はどこ行く?」

『ツルギ山、リュウガ洞、コトヒラ宮……まだまだ瘴源地は多いですものね』

「ま、順番に行こうか、順番にね」

『そうですね』



 そうしてライアスは、村に着いたのだった。


 これにて第一章終了です。

 ここまでお読みいただき、まことにありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ