第6話 開眼
『マリン、お腹すいてないか?オレ腹減ってさ』
「マリンもすきました〜♪って、、また!『オレ』じゃなくて『我』ですってバ‼︎ 主たまはモ〜!」
はい。金髪幼女に怒られてる24歳です。
とはいえ、見た目は若干若返っているようだ。
玉座の後ろにあった姿見を見てみると18歳くらいになっている。高校バスケ部でインターハイ出場した頃の姿を思い出す。ヘルプによると、
[A、プレイヤーは状態異常などの特殊な条件下に陥らない限り最も肉体が活性している姿になります]
とのことだった。
なるほど、要は肉体強度が全盛期の自分てことね。
見た目は前の世界と変わらない。耳の上くらいから雄牛のような角が二本生えているくらいだ!ハハ…
コレでもモテてたんだぞ、バスケ部時代は!
あぁ、知ってるよ。過去の栄光って言葉は。。。
寿命はあるのかな?
[A、魔族に寿命はありません]
種族毎に寿命はあるの?
[A、種族毎に平均寿命は異なります]
なるほどね〜。ゲーム世界らしい。
ちなみに、調べていくと[勇者]になれるのは人間。[魔王]になれるのは魔族だけらしい。
特に異論はない。
とりあえず、お腹が減ったな。
目を覚ましてから数時間経っているが、窓も無い玉座の間なので昼か夜かもわからない。
何か食べ物を用意できるスキルはないかな〜
と、調べていると[勇者進捗]と[マップ]スキルを見つけた。
解放した表示が白ログで現れる。
ん?ログが1つ多いな。
[スキル勇者進捗を解放しました]
[スキルマップを解放しました]
[魔眼が解放されました]
まが、んんんっっ!!!
同時に、割れるような激痛が頭を走る。
『ぐっっっっ!!ああぁっっ…!』
「主たマっ!!!」
マリンが側にかけつけるが言葉を返せない。
玉座に座り込み額を両手で抑える。
ミチミチと音を立てて額が割れる。
うぉぁぁぁぁっっっ!!!!
時間にして10秒ほどか、体感的には1時間くらいに思えた。ふいに激痛が収まる。まだ痛みの余韻で眼を開けることができない。にも拘らず、瞼の裏には勇者の居場所と状態、世界地図的な情報が頭に流れ込んできた。
膨大な量だが頭が焼き切れることはない感じでスンナリ入る。
『はぁ、はぁ』
「あ、主たマ!?」
『すまんな、、、マリン。我は、、、大丈夫だ』
「主たまァ…」
涙ぐんでオレを見つめるマリンだが、心配させない様に『我』と意識して言ったのは効果があったようだ。ほんの少しだがマリンの表情が和らぐ。
『くはぁっ!めっちゃ痛かったぁ!激痛過ぎるぞ、なんでだよ!?』
ふー、と額から手を降ろし一息つくオレはマリンに笑顔を向けた。マリンが今度は驚いた顔をしてオレを見る。
「あ、あ、主たマ。。。その眼…!!」
ん?眼??
立ち上がり玉座の後ろにある姿見を除きこむ。
・・・てんさん??
額には見るも立派な瞳、
深紅の中に金色の瞳孔、
物語に出てくる龍を思わせるような、
いや、それ異常に禍々しいであろう
第三の眼[魔眼]が見開いていた。
気がつくと白ログが大量に出ていた。
[スキル石化を解放しました]
[スキル催眠を解放しました]
[スキル魔結界を解放しました]
[スキル千里眼を解放しました]
[スキル深眠を解放しました]
[スキル鑑定を解放しました]
[スキル心眼を解放しました]
[スキル魔怪光を解放しました]
[スキル魔流感知を解放しました]
[スキル透視を解放しました]
[スキル共有視念を解放しました]
どうやら、瞳に関する技や[視る]ことに関したスキルは魔眼の解放とともに全て使用可能になったようだ。
使用すると言っても、意識するだけでいいみたいだ。
よかった、無差別に目が合えば石化させる暴力的スキルなんて、楽しいお喋りの妨げにしかならないところだ。
「主、たマ??」
おっと、心配させ過ぎたかマリンを安心させる言葉をかけよう。。。と、振り向いた先には我の事を心配そうに見つめる全裸の金髪幼女の姿があった。
『なっっっ・・・』
「主たマ?大丈夫ですカ??まだ痛みますカ??」
上から下まで透き通るように綺麗な起伏のない白肌でツルペタな身体が迫る。
思わず逆の方向を勢いよく向く。
『なんでっっ!ハダカになってるんだよマリン!!』
「??服着てますヨ?黒のワンピーす〜」
えっ?
と思った瞬間[スキル透視]が頭をよぎった。
ひと呼吸おく。。。
おちつけ。我は魔王。もちつけ。
深呼吸して意識を透けないように保ちゆっくりとマリンの方を向く。
??と首を傾げて頭の上にハテナが咲いているマリンの姿を見ると、普通だった。
肩まで伸びた光る金髪。
コウモリのような小さめの翼。
黒のワンピースにパンプス。
ふーー
実は幼女の裸体を見たかったのか?ん?魔王??
『いやいや、痛みは引いたんだ。けど、この魔眼が開いた瞬間に色々なスキルが解放されてさ。透視のスキルがあったからマリンがすっ裸で、ははは!』
「っっっっっっ!!??」
おや?マリンの顔がゆでダコのようだ。
幼女だから恥ずかしいとかないだろう。
「んなわけありませンーーーっっっ!!!!」
激おこだ、、、激おこぶんぶん丸だ
さて、クドクドと小一時間ほどマリンから幼女の裸体の神聖さを説教されたものの、便利な眼を手に入れたものだ。玉座に座っているだけでこの世の全てがわかるんじゃないか?というくらいの情報が視える。
文字通り、視えるのだ。
例えばこの城、魔王城。
馬鹿でかい上にクソ広い。
東京ドーム4つ分の敷地を一階として、上の階に行く毎に面積は狭くなる形だが我等のいる20階、最上階の玉座の間でも体育館ほどの広さがある。
その割に、魔物が1匹もいない。
そうだよね。[魔物創造]を1度も使用してないからね。とはいえ、城外には魔物が各地に点々として沢山いる。魔眼による世界地図をマップ化してみてわかるのだ。千里眼で魔物を拡大してみても、特に知性は感じられず、ウロウロしてるだけのNPCのようだ。
恐らく、獲物を見つけたら攻撃行動をとるのだろう。
よし、勇者の様子を見てみよう。
・・・いた!
勇者の反応をマップ上に確認。
どうやら黄色い光のマークで表示されている。
勇者の光、という感じだな。
姿を見てみると、、、
あれ?子供??
魔眼によるスキル千里眼で勇者の姿を見ると、どう見てもマリンと年端の変わらなそうな幼女にしか見えない。
髪を襟足で2つに結び、草むらで蝶々を追いかける女の子の姿があった。
『なぁマリン、ちょっと女の子を見て意見が聞きたいんだけども。。。』
魔眼で玉座の間の天井の壁に張り付いていたイモリを火魔法で焼いただけの[イモリの黒焼き]をムシャムシャと噛り付いていたマリンに声をかけスキル共有視念をかける。
「っ!!?ほのへーなふひはひはふーひゃへふへ!?」
『・・・ちゃんと飲み込みなさい』
ゴクリと音を立てて焼きイモリを飲み込むマリン。
「この聖なる光は勇者ですネ!?」
『だよね。。』
年齢は、と。5歳か、、、幼女だ。
ふとマリンの年齢が気になり魔眼を向ける。
『マリン、、、お前も5歳なのか。。。』
「ふぇ?そーなんですか??気がついたら玉座の間にいたので、いつ産まれたかはわかりませんでしタ♪」
キャハハと笑うマリン。あのコウモリのような黒鳥の状態で5年も1人で待ってたのか。。。
一体、誰が産み出したんだろう??
創造主、みたいな存在がいるのか?
針金くんの姿を思い出したが、今の時点でどう考えても答えは出ないだろう。
『なぁマリン。この世界は魔王である我が討伐されることでクリアされるようだけど、この勇者はまだ我のもとへは来ないよね?』
「ですネ!少なくとも、あと10年はこないと思われますよネ♪」
。。。だよね _| ̄|○
キャラ立ち、という言葉を思い知らされます。。