第3話 キャラクター設定
目が覚めたら夢の中にいた。
と、いうよりも。
真っ白な空間にいた。
夢か現実か、よくわからない。
しかし、ゲームやアニメやラノベなど、一般教養として知識にあった俺の頭にはある種の高揚が湧いていた。
『もしかして、2次元の世界のような出来事がオレにも!!』
はしゃいでしまうのも無理は無い。ゲームやアニメの世界に入ることは、日本人の2人に1人は願うはずだから。
そうに決まってる。
などと考えている間に、目の前に教会の正面に備え付けられているような(そんなイメージしか知識に無い)大きな黒の光沢のある扉が現れた。
『キターっ!これって間違いなく神様とかが出てきてチート設定とか色々して異世界に旅立つパターンだよね!?夢でもいい!面白くなってきた!!』
思わず叫んだ。ワクワクが止まらない。
しかし、現れた扉が開く様子は無い。
はて??
首を傾げて不思議に思っていると、後ろから右肩をポンポンと叩かれた。
神様!?
と勢いよく後ろを振り向くと、一筆書きをしたような子供のお絵描きしたような針金のような体をしたキャラが立っていた。そう、寝る前にゲームに出てきたバグラスボスである。
『これが、神様なのか???』
針金キャラはおもむろに右手(というか右手のような1本の針金の先)を頭上に指差した。
喋れないのか?
と、思いながらも上を見るとメッセージコマンドが表示されている。
[キャラクター設定]
夢か現実かはさておき、物語の始まりっぽい展開になってきた!ワクワクが止まらない!!
メッセージコマンドに手を伸ばすと、ポン、と音が鳴った。指先で触れるらしい。プラスチック板のような感触だと無粋にも思ってしまったが、無事に選択できるらしい。
[名前]
[性別]
[種族]
[職業]
と、コマンドが現れた。
『なるほど、ますますゲームをやり始めるって感じになってきたな』
名前と性別は文字入力できたものの、種族と職業は選択する形だった。
種族は、人、エルフ、ドワーフ、ホビット、竜、魔族など、ゲームに出てくるような種族がズラっと並んでいる。職業に関しても、戦士、魔法使い、僧侶、鍛冶屋、盗賊など、こちらも同様にズラっと並んでいた。ひと際目についたのが[勇者][魔王]の2つだ。
これって職業なん?笑
そこまで時間もかかることなく設定を完了する。
俺の設定は、
[名前]ユウスケ
[性別]男
[種族]魔族
[職業]魔王
となった。ちなみに、名前は本名から使わせてもらってる。ファミコン時代から主人公は自分の名前と決めていたからだ。昭和生まれの人は同じ考えの人も多いであろう。きっとそうにちがいない!
魔王側に設定したのは、勇者もののゲームは腐るほどやり込んできたから、という特に当たり障りのない理由だ。
入力が完了すると、針金くんの輪のような顔の真ん中に
OK?
と表示が出てきた。
これも押すのかな?と、針金くんの顔に出てきたOK?メッセージを指先で押す。
ドスッッ!!!
俺の指先がメッセージコマンドに触れた瞬間、ポンと選択音がなり、同時に針金くんの右腕(というか針金の先)が俺の胸の心臓の辺りを貫いた。
『えっっ??』
惚けた意識のまま刺さった部分を見下ろし、胸に刺さる針金を見る。途端に痛みと恐怖が込み上げてくる。
『がっっっ、、は。。。マジ、、か。。。』
針金くんの体に口から出る血がかかる。
『この攻撃なら、、、俺の育てたゲームキャラも、、、一撃だろう、、な。。。』
などと、どうでもいいことを考えてしまい、意識が闇に落ちた。
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崩れ落ちた体から死亡を確認するように針金は死体を見下ろしていた。針金の血に染まった右腕が発光し人間の手の様なものが形成される。徐々に腕、肩、胸、胴体、足と形成されていき、最後に頭の部分が形成されると眼前に横たわった死体、ユウスケという名前の人物と瓜二つの肉体が出来上がっていた。。。
死体をまたぎ、白い空間にポツンと浮かぶ黒い扉の前まで歩き、扉を押し開けユウスケが元いた部屋の光景が広がる世界へと足を踏み出していった。。。
誤字脱字等ありましたら、申し訳ありません。