第16話 黒い羽根
森の中をエルフの集団が進む。
里を出て二時間ほど歩いていた。
ここまでの道中は特に危険な目には合っていない。
珍しい形をした植物や虫や動物たちが目に入るくらいだ。エルフの森でピクニック気分だ。
「この先の川を越えたところに洞穴がある!穴の入り口の横にある大木に昔石蜂の巣を見つけたので、そこまで頑張りましょう!」
先頭を歩くベルトが皆に聞こえるように言った。
「ふぇぇ、まだ歩くのかぁ」
「ペーター!しっかりしなさい!主さまを見習いなさいよ、ピンピンしてるじゃない!」
いや、あなた肩に乗ってるだけですよね?
『もう少しみたいだから、頑張ろうか。ほら、お水飲んで元気だして』
懐という名のストレージから水筒を出しペーターに渡す
『飛んで行ったらダメなのかな?』
「ダメダメっ!今の季節は越冬前の準備をするのに森の生き物が活発になってるから、飛んで目立ってワイバーンにでも見つかったらヤバいよ!」
前を歩くメルが注意してきた。
「石蜂も越冬準備で里に降りてきたんですかね??」
メルにマリンが問う。
「いや、里には結界が張られているからモンスターや害獣は入ってこれないんだけど、きっと外から大人が里に戻る時に開いた瞬間紛れ込んだと思うのよね」
ふむ、そういう事もあり得るか。
でも、何か引っかかるな。。。
と、言ってる間に森が少し開けた目の前に川が見えてきた
「皆さん!川を渡れば洞穴はもう目の前です!川原で一旦休憩を取りましょう!」
ベルトの声に皆足下の石に腰を下ろしていった。
「うわぁ、川の底が見えるよ。水が綺麗!里以外の川をオイラ初めて見たよ」
ペーターが若干はしゃいでいる。
幅30m程の川だ。川べりは膝下までの深さだが真ん中の方は青みがかっているので深くなっているのだろう。
「わはは、この辺も久々に来たなぁ」
「そうだな、エルミン時代以来か」
バンとガシーが話している。
「そうそう、4人で来たよね。あの時はベルトが足を滑らせてずぶ濡れで帰ったんだっけ」
メルが笑いながら言った。
「ああ、おかげでリーゼ様にばれた時にはこってりしぼられたよな。あれからもう2000年以上経っているのか」
ベルトも思い出すように笑っている。
「父さんも、里を抜け出したりしてたの??」
「わはは!そうだぞペーター。お前の父さんは今でこそ落ち着いているが、昔は4人の中で1番ワンパク小僧だったのだ!」
「やれやれ、息子にそんなこと教えるなよバン。いいか、ペーター。父さん達も、あの時は森の生き物も穏やかな季節だったから大人たちに怒られただけで済んだんだ。一歩間違えばモンスターに襲われて誰かが死んでたかもしれない、って成人して狩りに出るようになってからわかったんだ。だから、焦らなくてもいいから、勝手に里を出ることは二度とするんじゃないぞ」
「うん!わかったよ父さん!オイラ必ず守るよ!」
父が子に生きる術を教える場面は
人もエルフも変わらないな。
「主さまもワンパクな時期がありました??」
そのやり取りを見ていたマリンが聞いてきた。
『そうだな、イタズラしたら拳骨されたなw オレの親父も学校では習わないことを教えてくれたな。元気にしてるかな、親父達も。。。』
「そうでしたか!親御さまはご健在なのですね」
『うん。今も田舎でゆったり暮らしてるはず。マリンにもオレの実家の景色を見せてあげたいな。。』
「えっっっ!?そ、それって、親御さまにもお会いするということですか!!??」
『ん??そう、なるかな。イヤかい?』
「えっ!えっ?えっっっ!?そ、そんな!き急に言われても、わたし、わたシ。。。!?、?!?」
どうした?ココロの準備がぁぁぁとか言いながら顔を真っ赤にして肩から転げ落ちてしまった。日が上がってきたし熱中症かな??
「さて!そろそろ出発しましょう!」
ひと息ついたところでベルトが言った。
「この川は飛んで渡ります!あまり高く飛んだら空のモンスター達に見つかるかもしれないので、低空飛行で皆さんお願いいたします!」
皆そろぞれに緑色の羽根を出す。
嫌な予感がして恐る恐る羽根を出すよう念じてみた。
予想通り、黒い羽根がでた
「!?その羽根の色、はぐれエルフか!?」
アークエルフのカルバがこちらを睨みながら言う。
バン、ガシー、メルの3人も驚いている。
「違うんだ!ユウスケ兄ちゃんの居た西の里がモンスターに滅ぼされたんだ。だから、、、」
「そうです、カルバ様!ハチミツを取りクララの治療をした後、ユウスケ殿をリーゼ様の加護を受けに連れて行くつもりでしたので!」
「西の里、、?レミリア=レミリア様が収める地の方角に不審な影を感じたのだが、まさか世界樹の一本が倒されたというのか。。、」
あれ?本当に西の方にも里があったみたいだな。
でも、滅ぼされた?
たいへんな事態なのかもしれないな。。。
「ぬぅ、そういう事なら今はベルトの言葉を信じよう。だが、リーゼ様の加護を受け入れれぬようなら即刻里から追いだすものと思え!」
そう言ってカルバは川向こうへ飛んで行った。
続いてバン、ガシー、メルの3人も飛ぶ。
メルがウインクして片手をあげ、ドンマイ!とジェスチャーをしてくれた。
「ユウスケ殿すまない。私としたことがうっかり見落としていた。。。」
『いいえ、仕方ない事ですし。それより、早くハチミツを取ってクララちゃんを治しに向かいましょう』
「あぁ」
ベルトがペーターの手をつなぎ2人も飛んで行った。
「なにあのアークエルフ!?主さまに向かって失礼極まりない!!」
ぷんぷんしながらマリンがシュッシュっとパンチを繰り出している。やめなさい、倒しちゃうから。
『ま、しょーがないさ。サッサとクララちゃんを助けてハイエルフの加護を受けに行こうぜ』
「はい!主さま!。。。ところで、、、主さまって羽根で飛べましたっけ??」
『ん?魔王の時に宙を浮けたから、似たようなもんだろ?』
羽根の付け根に意識を集中させ、飛び上がった。
よろよろと安定しない。
『おぉ、なんかバランスがうまくとれない!?』
「主さま頑張って!」
なんとかフラフラと川に飛び出していく。
(こんなことなら寝る前に練習しとけばよかった。。)
おわっ!とか叫び水面に足をつけたりしながら
なんとか川の真ん中辺りまで進んだ。
「主さま、あと半分です!ふぁいと、、、あ、主さま!危ない!!」
頭上を飛んでいたマリンが叫んだ。
『ん?。。。おわぁぁっっ!!!!』
水中から昆虫の前脚のようなものが出てきて右の足首を掴んできた!
『なんだっ!コイツ!!引っ張られる。。。うらぁ!!』
力を振り絞り川に引きずり込まれる前に上空へと跳んだ。
ヤゴ?トンボの幼生みたいなモンスターが川から出てきた。オレの足首を逃さないようにしっかり掴んでいる。
[源氏ヤゴ]Lv13
源氏トンボの幼生体。獲物を水中に引きずり込み捕食する肉食虫。田舎の水辺で見たなぁ、ヤゴ。
『っっなにすんだ、よ!!』
掴まれた右足を振り上げ、左足で虫の頭を蹴りとばす。
パンッッ
虫の頭が爆散した。
絡みついてた前脚を振り払い川に落とす。
『ふぅ。ビックリした』
「主さま!お怪我は!?」
『うん、問題ない』
気がつけばスキル[空中浮遊]で飛んでいた。
『。。。最初から自力で飛べばよかったなw』
「ですね。念のため、羽根はこまめに動かして飛んでるように見せた方が良いかもですね」
『だな』
スィーっと川を渡りきり他のメンバーの前に降り立つ。
「ユウスケ兄ちゃん!大丈夫!?」
『あぁ、大丈夫。ちょっと驚いたけどねw』
「ていうか、源氏ヤゴの幼生の殻って防具として加工されるくらい固いんだよ!?足、大丈夫なの!?」
メルが驚いて声を張り上げる。
『えぇ、こう見えて鍛えてるんですよ』
「そっかぁ、あたしと同じ格闘派かぁ。
ね?今度手合わせしてみない」
『はは、お手柔らかに。。。』
皆を安心させ、先に進む。メルとの手合わせは全力で避けたいものだ。
川を渡った先の木々の中に入り5分ほど歩いた先に洞穴が見えてきた。
「着きました!」
ベルトが立ち止まる。
目の前にポッカリと口を開けた洞穴が、出てきた。




