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らくはどう?  作者: 涙涙涙
14/17

第14話 エルフの家庭

町の中央に焚き火がある。


火を囲むように大人達が集まってザワザワしていた。


その中から一人の女性がこちらに駆け寄ってくる。


「ペーター!」

「母さんっ!」


隣にいたペーターも女性に駆け寄っていく。


身長はマリンの元のサイズと同じくらいだろうか、

顔は背格好の割りに幼く17〜18歳くらいに見える。

多分だいぶ年上なんだろうけど。

翠色の長い髪の女性がペーターを抱きとめた。


「もうっ!勝手なことばかりするんだから!

母さんの[結界錠水晶]まで持ち出して!!」

「ゴメンよ、母さん。クララが心配でたまらなかったんだよぅ。。。」


腕の中で泣きじゃくるペーターを抱きしめながら、ペーターの母親がこちらに気付いたようだ。


「あなたたちは。。。?」

「母さん、オイラが森に出たときに会ったユウスケ兄ちゃんと羽妖精のマリンだよ!明日石蜂のハチミツを取りに行ってくれるって約束してくれたんだ!」


母親に向かい軽く会釈をする。

若干警戒気味だったが、ペーターの話を聞いて思い切るように言ってきた。


「まぁ、あなたたちが??ペーターを連れ戻してくれてありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、今日は私たちの家で休んでいかれませんか?」

「オイラもさっき言ったんだ!朝イチバンで森に行くから泊まって来なよって!」


『突然訪れたのにすみません。ご迷惑でなければ。。』

「迷惑だなんてとんでもない!さあさ、こちらにいらしてください。ご案内しますわ」


母親から感謝の言葉を貰うと同時に、ピンク色の光が母親から飛び出しマリンに吸い込まれていった。

『今のは??』

「マナ、、みたいですね」

魔眼でマリンを見つめる。

[マナ10P]

『本当だな』

「きっと、これを貯めていけば進化できるのですね」

『そうだな、でもどうやって進化させるんだろう?オレのスキルには魔族進化みたいなのはないし』

「・・・世界樹の根本に祭壇があるのでそこに行くか、ハイエルフに進化の洗礼を受けるみたいです!」


なるほど。

というか、オレに貯まらないのは何故??


オレ達が動くと同時に、

広場に集まっていた大人達も安堵の声を出しながら散り散りになっていく。どうやらペーターの迷子総動に集まっていたようだ。とはいえ、皆んなオレの方をちらちらみて警戒心を出している。

よそ者は怪しまれるのが筋だからね。


エルフ母子に連れられて、入り口から500mほど奥に入った大きな木の家についた。

玄関扉までの木の階段を上がりながらペーターが言う。


「母さんの手料理、美味いんだぜ!」


それは楽しみだ。エルフ食に胸が踊るというものだ。


中に入ると、

雪山のロッジの中のような、

軽井沢の木造りの別荘の中のような、

(イメージで言ってるが、なにか?)

オール木造りの床と壁、

(木の家だから当たり前だ、なにか?)

こんな別荘が欲しいなと思える暖かな雰囲気のリビングだった。下の階は倉庫、上の階は寝室やテラスがあるらしい。奥には台所が見える。


「食事の用意をしますわ、じきに主人も帰ってくると思いますから」


ペーターの父さんはペーターが迷子になったのを知らないらしい。里の一番世界樹に近い場所にあるハイエルフの長老の屋敷にハチミツがあるか尋ねに行っているそうだ。


勧められるままにソファに腰をかけた時に、

ドドドッと外の階段を駆け上がる音が聞こえた。


「ペーター!?」

勢いよく扉が開き、オレと同じくらいの18歳くらいの男のエルフが入ってきた。


「父さん!」

ペーターが駆け寄る、、、と同時に

ゴツンっ!!


父の拳骨をくらうエルフボーイがいた。


「皆んなから聞いたぞ!勝手に結界の外に出たそうだな!自分のしたことがわかってるのか!?」

「だって、クララが、、、クララがぁ…」


頭を押さえながら言い訳をするペーターに、父親が続けて叱る。


「いいか!?今の時期は森の生き物や種族達が冬に備えて活発に動き回るんだ!食糧を貯めるためにな!熊蟻や針頭虎なんかもウロついてるんだ!何度も教えたじゃないか!?まして、オーク共に攫われでもしたら。。。」

「ひっく、ゴメンなさい。。。ひく」


泣きじゃくるペーター、だが心配する父親の表情は真剣そのものだ。甘んじて受けて欲しい。


「お父さん、私からも叱ってあるので、その辺にしてあげてくださいな」

母親がフォローをいれ父親も、ふーっとひと呼吸おいたようだ。


「あなた達が、息子を連れ戻してくれたのですね。心より、お礼を言わせてください」


父親がこちらを向いて頭を下げてきた。


『いえ、助けたというほどではありません。たまたま通りすがりに出会っただけでしたので』

「いえいえ、それでも感謝しております」


大人特有の[いえいえ合戦]だ。


「申し遅れました、私ベルト=リーザと申します。家内は名前を聞いておるかもしれませんがミーナ=リーザです。息子のペーターと、上の寝室にはクララという娘が病に伏せております」

『私はユウスケと申します。こちらはマリン』


マリン肩に座ったままペコリとお辞儀をする。


「ほう、ユウスケ殿。字は何と申されますか?」

(字??=リーザみたいな、名字かな?)

『いえ、字はありませんよ。マリンもですが』


ガチャンッ


奥の台所で話を聞いていたミーナさんが食器を落とした。ミーナさんの元へペーターが駆け寄る。


ベルトさんが恐る恐る聞いてくる。


「ユ、ユウスケ殿。その黒髪、まさかとは思って聞いてみたのですが[はぐれエルフ]でしたか??」


(はぐれエルフ?初めて聞くがハーフエルフみたいなもんかな?マリン!)


(はい、主さま。[はぐれエルフ]とは、世界各地にあるエルフの里には長老であるハイエルフが存在します。その加護を得て妖精がエルフに進化するのですが、加護を受ける時に字をハイエルフからもらうようです。

そのため、エルフは全て字を持っているのが常識で、字を持たない者は罪を犯した者が多く、加護から見放された罪人。いわゆる[はぐれエルフ]となり象徴である翠の髪も失うようです。補足として、加護を受けていないエルフはマナを集めることができません)


視念通話だからほぼ一瞬だが、長い説明ぐっじょぶ!

なるほど、だからオレにはマナが吸い込まれなかったのか。。広場の人達がオレのことをちらちらみていた理由も納得だ。


さて!この状況どうしよ!?


『・・・私は罪人ではありません。加護を受けていた西の辺境の里がオークの群れに襲われ、里は全滅しました。元は翠だった髪も黒くなってしまいましたが、ハイエルフの長老様が亡くなられたからでしょう。以来、新たな加護を受ける里を求め、東の此の地にやってきたのです』


「そう、でしたか。。。」

「辛い想いを、されたのですね」

「兄ちゃんカワイソウ」


エルフ一家が励ましてくれる。


通ったぁ!!さすがオレ!

ていうか、始まりの町から初期設定でこんな苦労しないぞ!普通!!


「では、ユウスケ殿。明日にでも長老の元に行って加護を授かりに行きましょう。罪人でなければ改めて加護を受け入れることができるはずですので」


いやいや、ハチミツ確保が優先だ


『せっかくですが、クララさんのためにハチミツ取りを優先してもよろしいですか?治すための刻限もあるようなので』

「おぉ!行ってくれるのですか!?それはありがたい!石蜂のハチミツ取りは命の危険を伴うので、里の者を集めて行くにしろ不安でしたから」

『けっこう、危ないんですね』

「えぇ。巣を見つけたら睡眠魔法で蜂を眠らせて巣を取るのですが、魔法を唱える前に刺されたり、巣に向かう道中で魔物に襲われたりするので。。。」


里中探してもハチミツの在庫が無かったと俯いたベルトは言う。


「オイラも着いていく!」


ペーターが言い出した。

「お前は駄目だ。ユウスケ殿にも危険な目に合わせるから忍びないというのに、尚更駄目だ!」

「オイラももう成人になる直前だ!狩りの仕方を教わってもいいはずだ!」

「駄目な物は駄目だ!」


どちらも譲る気はない、か。


『ベルトさん、貴方を含め里の熟練した狩人達と共に行くということですから、恐らく無事に採取できるでしょう。ですので、私はペーターの護衛専門ということで、いかがですか?こう見えて、腕に自信はあるんですよ』


笑顔で提案してみる。


「むぅ」

『ペーターも、それでいいか?実際に蜂の巣には触らないし、オレの近くから離れることは許さないぞ?』

「うん!オイラもそれでいい!!」

『よし。ベルトさん、いかがですか?』

「わかりました。ペーターの護衛はユウスケ殿にお任せします。私は採取班に回りますが、何かあれば直ぐに駆けつけますので」

「やったーー!オイラ腹いっぱい食べて明日に備えるよ!!」


話がまとまったところで、ミーナさんの手料理がテーブルに運ばれてきた。

リス兎のステーキ

魔力クルミのサラダ

羽山羊ミルクのスープ


エルフ料理万歳!


「私はクララに食事を上げてきますから、皆さんは先に召し上がっていてくださいな」


ミーナさんが階段を上っていく。

(そうだ、当事者のクララちゃんの容体も見ておきたいな)


「ユウスケ兄ちゃん、後でクララの様子を見てあげて」

『うん、もちろんだ。寝る前に会わせてな』

「うん!」


ペーターが勢いよく料理を食べ始める。

オレは一人っ子だったから兄妹の気持ちはよくわからないが、きっと、必死になるんだろう。


「主さま!すっごい美味しいです!この料理!ほっぺた落ちまくりです!」

『どれどれ。。。』


ん!んまいーー!


………

……


ふーー、食べた食べた。

マリンも御満悦の様子だ。

俺の頭に乗り大の字になって寝転んでいる。


「ときにユウスケ殿、渡しておきたい物があります」


なんだろう?

ベルトさんが隣の部屋から何かを持ってきた。


「見たところ丸腰のようですが、旅の途中危険の際は魔法で回避してきたのですかな?明日の採取には念のためにこちらをお使いください」


[木の弓矢][聖なるナイフ][風の帽子]

をもらった。


そういえばと思いアイテムストレージに装備が入っていないか確かめる。


[ひのきのぼう]


でたーーーー!旅の始まりの必需品!

やっぱ魔王の時は色々特別感高かったからなぁ。。


『ありがたく使わせてもらいます』

「風の帽子は付属効果として身体が若干身軽になるのですが、ユウスケ殿の場合、その黒髪を隠していただいた方が他の者にも心象良いかなと、失礼ではありますが」

『いえ、お気になさらず。私も隠した方がいいかなと考えていましたので』

「そう言ってもらえたら。何しろ、翠の髪以外の者が全て罪を犯したわけではないと、皆頭ではわかっているのですが、先入観故に罪人視してしまう者も多いので」

『罪人、とはどの程度の罪を犯した人がそうなるんですか?』

「代表的なのは[同族殺し][世界樹攻撃]ですね。他にも度合いによりますが[森林汚染]等があります」


(なるほど、森の守護者、という認識や一般常識から外れた行動をすると罪人に堕ちるわけだ)


「ユウスケ兄ちゃん、そろそろクララにも会ってあげてよう」

『あぁ、そうだな。連れて行ってほしい』


こっちだよ、と階段を駆け上がるペーター。

上がった先の扉を開けてくれた。


部屋には絵本の中から飛び出してきたような5〜6歳くらいの姿の可愛らしい幼女エルフが揺椅子に座り星を眺めていた。


「可愛い〜」

思わずマリンが口にした。

『おい、この娘こう見えて580歳だぞ』

マリンだけに聞こえる音量で小さく告げる。

「う〜ん、ふぁんたじー…」

オレの口癖が移ったか??


「クララ、明日お前の足を治してくれるユウスケ兄ちゃんだぞ」


ペーターが紹介してくれるとクララがこちらに顔を向けた。左足の先から膝の下くらいまで石になっている。


「ありがとう、ユウスケ兄さま。下で話していた声が聞こえてたわ」屈託のない可愛らしい笑顔と声だ。


『はじめまして、クララちゃん。もう少しの辛抱だから、頑張ろうね』

「うん!ペーターお兄ちゃんも居るし、パパもママも居るし、クララ、ちっとも怖くないよ」


透き通るような白い肌が赤く染まっている。

目の周りもひと際赤くなっているから、きっとまだ発熱しているだろうし、辛くて泣いていたのだろう。


「明日はオイラもユウスケ兄ちゃんもパパも行くから、直ぐにハチミツを持ってくるからな!」

「うん、ありがとね。でも、無茶しちゃダメだよ!ペーターお兄ちゃんはすぐ調子にのるんだから。。」

『ペーターはオレがつきっきりで守るから、安心してな』

「はい、ユウスケお兄様!」


安心させるようにクララの頭を撫でる。

さっきより頬の赤みが増した。

熱が上がってきたのかな?休ませなければ。


「それじゃクララ、体に障るといけないから、早く眠るんだぞ。痛み止めの薬も母さんが持って来てくれるから」

「うん、わかった。おやすみなさい」


クララの部屋を出るとミーナさんがお盆に水と薬包みを持って階段を上がってきた。


「ユウスケさん、色々と心配してくれてありがとうございますね。こちらの部屋をお使いください」


クララの部屋の向かい側の部屋に案内された。


「じゃあユウスケ兄ちゃん、また明日ね!」

ペーターがクララの部屋の隣の自室に入る。


案内された部屋のベッドに腰かける。


『ふぅーー、なんだか長く感じる初日だったなぁ』

「そうですね、でも新鮮なものばかりで飽きないですよ」

『だな、オレもエルフ関連の物は興味あるから、これから色々とエルフを学んでいくよ』

「はい!明日も頑張らなきゃですしね」


そうだ、まずは初クエスト攻略だ。

クララちゃんには元気になってほしい。


「ところで、、主さま?」

『ん?どした??』

「クララちゃんからは、なにかこう、敵になる?ちがいますね、ライバルになる?これも違います。う〜ん、上手く表現できないのですがなにかモヤモヤした予感が私の胸にこみあげてくるのですが、なんでしょう?」


何を言っているんだ?この子


『なんだ?もしかしてさっきクララちゃんの頭を撫でたから、ヤキモチ妬いてるのか?』

「ヤっ!!ヤキモチなんてそんな、私は別に!!」


横になってるオレの胸の上で妖精がマゴマゴしている。


『オレは幼女に恋愛感情は抱かないよ。バカなこと言ってないで、オレ達もそろそろ寝ようぜ。明日は夜明けから集合みたいだしな』

「む〜〜っ」


ぷいっと振り返り、マリンがベッド横のテーブルに用意されていた妖精用の小さなベッドにピョンと飛び移った。

シーツを頭からマリンがかぶる時に「知らない!」とぷんぷん声が聞こえてきたが、今日は疲れたので聞き流していいだろう。


明日は二周目初のクエストだ。頑張ろう。。。

疲れを癒すように目を閉じた

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