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会長さんと会計さんに

 「飛鳥ぁー、さっきの数学の問題難しくてわかんなかったー」

 会計さんとお話をして数日後。

 僕と飛鳥はのんびりと授業を受けていた。

 数学は泉先生が担当なんだけど、僕数学苦手なんだよね。

 国語とか英語は得意だけど。

 「どこがわかんないんだ?」

 「これ」

 僕が指をさせば飛鳥は丁寧にその問題を解説してくれる。

 「あ、わかった! 飛鳥って説明うまいよねえ

 ありがとう、飛鳥!」

 そう言って僕は飛鳥に飛びついた。

 首に手をまわせば、飛鳥は抱き抱えてくれる。

 まあようするに飛鳥の膝の上に乗って向かい合ってる。

 「飛鳥、大好きー」

 思わず、幸せでそんな言葉が漏れる。

 「海、可愛い……」

 嬉しそうに飛鳥は笑って、僕の体を抱きしめる。

 「飛鳥はかっこいいよ。僕の飛鳥は最高にかっこいい」

 ぎゅっと抱きしめ返せば、頭を優しくなでられる。

 「小浜先輩!海! 此処、教室だから! つか周りみてください

 皆顔伏せてるから! 見ていて恥ずかしいですから」

 ――教室でいつも通り過ごしている僕と飛鳥に向かって快人は盛大につっこんだ。

 本当、飛鳥にも普通につっこんじゃうあたり面白いよね。

 「邪魔すんなよ」

 「いちゃつくのは二人の時にやってください!」

 「快人は本当、よくつっこみいれるよね」

 快人は面白いから話していて楽しい。

 飛鳥と快人と僕とで会話を交わす。(快人はつっこみまくり)

 そんな中で、ガラッと教室の扉が開かれた。

 入ってきたのは、空也と副会長と双子だった。

 あ、会計さんはお兄ちゃんに嫌われたくないから結局空也を壊さない事にしたらしいからつきまとってないみたい。

 それにしても暇なのかな、副会長達って。

 それかゆっきーの言ってた王道展開みたいに仕事してないのかなあ。

 「あ、海に小浜!」 

 うん、何で近づいてくるんだろうね。本当に。

 快人がめんどくさそうに空也の事を見ているのが視界に映る。

 「ん、なあに?」

 飛鳥に抱き抱えられたまま後ろを振り向いて空也と視線をあわせる。

 そうすれば、空也の顔は赤く染まった。

 「ひ、人前でいちゃつくなんて、破廉恥だ!」

 「えー、だって飛鳥かっこいいんだもん。飛鳥といちゃつくと幸せなんだもん」

 「海は可愛すぎ。もう抱きしめてキスして滅茶苦茶にしたくなる」

 「ふふ、飛鳥になら滅茶苦茶にされても僕は嬉しいよ?」

 飛鳥に滅茶苦茶にされるって事は、飛鳥が僕を思いっきり愛してくれるって事だから。

 それは僕にとって幸せな事。

 「……あなたたちは恥ずかしくないんですか!」

 「副会長さんもつっこみのスキルか何かあるよねえ。

 恥ずかしくはないですよ。だって人前でいちゃついて飛鳥が僕のモノなんだって見せつけれるんですから」

 飛鳥はもてる。

 かっこいいから仕方ないかもしれないけど。

 飛鳥は美形だし、それに比べて僕は美少女とかでも顔が整っているわけじゃない。

 だから飛鳥が僕のモノなんだって見せつけたい。

 飛鳥が愛してくれているのは僕で、僕が愛してるのは飛鳥で。

 僕と飛鳥の間には誰も割り込めないんだって。

 それを、見せつけたい。

 これはきっと独占欲だ。

 誰かに奪われたくない、

 ずっと一緒に居たい、

 誰にも渡さない。

 そんな欲は、僕の中には沢山溢れてる。

 そんな事を考えていたら、飛鳥に思いっきり抱きしめられた。

 「飛鳥ー、どうしたの?」

 「可愛いなと思って。つか見せつけたいって海も俺と同じで俺を独占したいって事だろ?

 滅茶苦茶嬉しい」

 嬉しそうに、幸せそうに飛鳥の頬が緩んでる。

 僕の言葉にそんな風に笑う飛鳥が、たまらなく愛しい。

 普段はかっこいいのにこういうところは少し可愛く見える。

 「だって僕飛鳥の事大好きなんだもん。大好きだから飛鳥の事誰にも渡したくないの」

 「安心しろ。俺は海以外いらないから」

 素直な飛鳥。

 僕に真っ直ぐに気持ちをぶつけてくれる飛鳥。

 飛鳥っていう存在に僕が飽きる事はきっと無いんだと思う。

 幾ら一緒にいても、きっとずっと側にいてほしいと願うんだと思う。

 「「いちゃつくのはやめてください」」

 僕と飛鳥が見つめ合っていれば、2つの声につっこまれた。

 声のした方をみれば、同時につっこみをいれている快人と副会長さんが居た。

 「わー快人も副会長さんもつっこみスキルが高いよね」

 「海がいちゃついてるからだろ! 此処教室だから!」

 「そうです。この生徒の言う通りです。場所を弁えなさい。周りが迷惑するでしょう!」

 「どこでも空也を口説いて周りに迷惑かけてる副会長さんに僕はそんな事言われたくないかなあ」

 だってねえ、僕と飛鳥がいちゃいちゃしてるより、副会長さん達が空也を口説いてる方が見ていて嫌だよね。

 「なっ、私のどこが人に迷惑を………」

 「え、だって生徒会の仕事してないんですよね?

 会計さんが言ってました。会長さんと会計さんしか仕事してないんだって」

 会計さんは最初から偽物だってわかってたから生徒会の仕事自分の分はちゃんとしてたらしいけど。

 副会長さんと双子はやってなかったらしい。

 会計さんが副会長達にその事をいったら゛せっかく『金姫』に会えたんですから離れたくないです゛って言ったらしい。

 「それは……空也と折角再会出来たんですよ!? ずっと探してた存在がいるのに他には構ってられません」

 馬鹿なのかな、この人って。

 正直そんな事を思った。

 盲目的で、一度思い込んだらそれを撤回できないみたいなそんなのか副会長さんにはあると思う。

 お兄ちゃんの事大好きなら、そんなに思ってるなら、

 何で気づかないんだろうと冷めた気持ちになってくる。

 僕は別にお兄ちゃんみたいに優しいわけじゃない。

 他人の事そんなに嫌いにはならないけど、それを言い換えるなら僕には特別が少ないだけだ。

 だから正直、少し冷めた気持ちになる。

 お兄ちゃんが大切だと言った仲間が、認めた仲間がこんなのって何か嫌だ。

 お兄ちゃんはきっと数年会えなかったとしても仲間には気づく。

 お兄ちゃんは人をよく見ているから。

 それなのに、どうして気づかないんだろう。

 「だからって、任せられた仕事しないのはどうかと僕はおもいますけど」

 「そんなに志紀の事攻めるな」

 「空也、僕は空也にはいってないの。副会長さんにいってるの」

 そう、空也には言ってない。

 僕は副会長さんにいいたいだけだ。

 だから、ぎろりと空也を睨みつけて、僕は言った。

 「に、睨む事ないだろう!」

 「「僕らの空也を睨まないでよねー」」

 「幾ら小浜の恋人だからって」

 「許さないよー?」

 空也にも、双子にもいら立ちが募る。

 お兄ちゃんは、脅えたりしない。こんなことに。

 お兄ちゃんは、もっと強い人だ。

 演じている空也も、お兄ちゃんに惚れているっていう双子も。

 お兄ちゃんの事どうしてそんなにわかってないんだろう。

 「許さないって、なんですか?」

 「「何ってー。君の家族が不幸になるんだよー」」

 バカか、と正直おもった。

 僕の家族=お前たちの大好きな『金姫』も含まれるのに。

 それに、

 「双子、お前ら、俺の海に手を出す気か?」

 飛鳥の前で僕を害するというのは、何とも無謀な行為。

 飛鳥が僕を抱きしめたまま言葉をはなつ。

 本当になんて馬鹿なんだろう。

 冷めた気持ちで双子を見据える。

 「俺が、先にお前ら潰してやろうか?」

 飛鳥の鋭い瞳が、彼らをとらえた。双子を射るようににらみつける目。

 そんな目でさえ、かっこいいなあって思う。

 「ひっ……」

 怯えたように声をあげる双子。

 怯えるぐらいなら最初から何もしなければいいのに。

 「お前らが家の権力を使うっていうなら、俺だって使ってやる」

 飛鳥は、小浜家の跡取りだ。

 双子には上に兄が居るらしくあととりじゃないし、そもそも双子ん家と飛鳥ん家じゃ比べ物にならないぐらい差がある。

 「小浜、双子はすぐに口に出してしまうんですから、怒らないでやってください。

 幹も、秋もそんなむかついたからって家の権力使ってはいけませんよ?」

 …副会長さんって馬鹿なだけなのかな。

 盲目的に信じ込みやすいだけなのかもしれない。

 「そういえば、副会長さん、今会長さんと会計さんはどうしてるんですか?」

 「さぁ、知りませんけど…」

 「会長さんも会計さんも『金姫』を放って他の事してるんですねぇ。副会長さん達と違って」

 そうやってわざといっているのは、気付かないかなぁなんて期待しているから。

 だって、会計さんはあんなにお兄ちゃんが大好きだし、会長さんだって、お兄ちゃんを探してたんだもの。

 そんな二人が、空也を追いかけてない事を疑問におもえばいい、そうおもって笑う。

 「何で、学は…、俺より仕事をとるんだろう」

 何故か、偽物が、悲しそうに言った。

 ……こいつ、会長さんに惚れてんの?

 そもそも仕事をとるんだとかいっても、お前って会長さんんの恋人でも何でもないんだから、そういう事いう筋合いも何もないしねぇ。

 「てゆーかさ、僕『金姫』の噂普通に聞いた事あるけど、空也って本当に『金姫』なわけ?」

 そういって僕は笑って、彼らを見据えた。

 噂てゆーか、本人を知ってるけどさ。

 副会長と双子って、空也を『金姫』って本当におもいこんでるから。

 本当、馬鹿みたい。

 呆れて、馬鹿みたいで、本当、苛々する。

 「何いってんだよ!! 俺は『金姫』だ」

 「そうだです。空也が『金姫』です。私たちの光です。空也みたいに私たちを照らしてくれる子は他に居ません」

 「「そうだよー。現に空也は僕たちを見わけられるんだよ?」」

 ……もう、何もつっこむまい。

 ただ言いたいのは、双子さ、普通そっくりな双子並べられても初対面じゃわからないからね?

 お兄ちゃんが見分けられるようになったのは仲良くなってからだろうってしか思えないし。

 んー、頭悪いのかな、この人達って。

 「ふーん、まぁ、空也が『金姫』だろうとどうでもいいけど」

 「な、何でそんな事言うんだ。俺は『金姫』なんだぞ」

 偽物ってアホだよね。うん。本当アホな子。

 『金姫』は誰にでも愛されるって、おもってるのかな。

 そりゃあお兄ちゃんは色んな人から愛されていけど。

 自分が愛されて当然なんておもっていないのに。

 「飛鳥」

 僕は面倒になって、飛鳥の名を呼んだ。

 飛鳥は僕の方を優しい瞳で見つめてくれる。

 「…生徒会室、いこう」

 小さく呟いた声は、飛鳥にしか届いていない。

 副会長と双子は駄目だとわかった。

 だから、会長さんへの確認へと行こうと思った。

 多分気付いてるだろうけど、一応ね。

 飛鳥は頷いてくれて、僕は飛鳥の首に手を回す。

 そうすれば、飛鳥は口元を緩めて、そのまま、僕を抱きかかえてくれた。

 そして、飛鳥は僕を抱えたまま立ち上がり、そのまま教室から出ていこうとする。

 「なっ、何処行くんだよ」

 「ちょっと用事が出来たんだよー。またねぇー、空也」

 そういって愛想笑いを浮かべて僕は、その場から飛鳥に抱えられたまま去っていく。

 「飛鳥の腕の中って落ち着くから好きーっ」

 抱きかかえられたままそういって、僕は笑った。

 今廊下を歩いてるんだよねー。まぁ授業中だし、人居ないけど。

 授業は、うん、今回だけはサボり。

 偽物に絡まれて、僕切れちゃいそうだったし。

 お兄ちゃんの偽物とか見てていらつくんだよね。

 そんな事を考えながら、生徒会室の前に付く。

 そして、そのまま、飛鳥は生徒会室の扉を開けた。

 「あれー。小浜と海ちゃんじゃんっ」

 「…何の用だ。そして、何で抱えてんだ」

 生徒会室の中に居たのは、会長さんと会計さんだった。

 書類が束ねられており、副会長さん達が仕事してないからか、忙しいみたいだ。

 「会長さん、質問でーす。会長さんは空也が『金姫』じゃないって気付いてますよねー?」

 飛鳥が、生徒会室のソファに座って、その膝の上に僕は座っている。

 会長さんと会計さんが呆れたような目を向けてくるが、無視だ。

 で、会計さんがいれてくれたおいしい紅茶を飲みながら僕は笑って問いかけた。

 「は?」

 「あのですねー、会計さんにはもう話したんですけど。僕と飛鳥って個人的に『金姫』と知り合いなんですよね。

 というか、ぶっちゃけ結構親しくて。

 だから空也が偽物だって事わかってるんですよね。

 だってあれ、『金姫』と全然似てないですよね」

 にっこりと笑いながらそういう僕に、会長さんは驚いたような表情を浮かべた。

 「―――やっぱりか」

 そうして呟いたのは肯定の言葉。

 「はい、演じるならもっとましな演技しろよってぐらいにてないですよね。

 『金姫』って空也より背低いですし、人の話聞かないとかありえないですし、人の嫌がる事大嫌いですし、普段素直な癖に微妙にツンデレっぽい感じで素直じゃないですからねー」

 って、お兄ちゃんの事いったら会長さんにおもいっきり睨まれました。

 え、何で?

 「東宮、俺の海、睨むな」

 「てめぇ、何で俺様の『金姫』の事んな知ってやがる! まさか、お前も『金姫』の事―――」

 飛鳥と会長さんが同時に口を開いた。

 「会長さん、それなんて妄想ですか? 僕飛鳥だけが大好きですもの。『金姫』に恋愛感情は欠片もありません。別の愛情ならありますけど」

 しいていうなら家族愛だね。兄妹愛ともいうかな?

 僕とお兄ちゃんって仲良しだしねー。お兄ちゃんって微妙にシスコン入ってるし。

 ふふ、会長が僕にわけのわからん濡れ衣つけてきたってお兄ちゃんにちくってやろうかなぁ。

 「東宮、何で俺の可愛い海が『金姫』の奴にそんな感情持つんだよ。

 海は俺のだし、可愛い海は誰にもやんねぇし」

 「…お前はお前で『金姫』とどういう関係だ」

 「しいていうなら小学生のころからの親友」

 さらっとそんな関係を暴露した飛鳥に、会長と会計は驚いたような顔をした。

 ちなみに僕がお兄ちゃんだって言わないのはいったら一発で会長さん達にお兄ちゃんの事調べられちゃうからなんだけどね。

 僕にお兄ちゃんって一人しかいないし。

 「副会長さん達は気付いてないみたいなんで。だから、会長さん達にだけ話に来ました。

 『金姫』って、ぶっちゃけ、あなたたちに会いたがってるんですよね。

 でも、見つけるまで会わないみたいに言ったからか自分から会いに行きづらいだのなんだのいって会いにいけてないんですけど」

 僕はそう言って笑って、二人を見た。

 あ、ちなみに言うと飛鳥は無言で僕の頭をなでてるんだけどね。

 飽きないのかねって、おもうけど僕飛鳥になでられるの好きだし、いいやと思う。

 「―――もうすぐ、体育祭ありますよね。部外者もこれる」

 僕は、そう話を切り出した。

 そうして笑って会長さんと会計さんに告げる。

 「そこで、『金姫』連れてきます。目立つ金髪でもなんでもない、『金姫』を連れてきます。

 会いたいなら、探したらどうです?」

 さぁ、お膳立てはこれで完了。

 あとは、本人たち次第。


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