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親衛隊ご登場

 「小浜様に近づかないでよ!」

 「小浜様は――」

 突然ですが、僕今、飛鳥の親衛隊ってのに囲まれてるんだ。

 今日はね、飛鳥に風紀委員に入らないかって誘われてもちろん了承したんだけど、手続きとか、他の委員に僕っていう存在を風紀として認めさせるために色々考えるからって、まぁとりあえず飛鳥と別行動してたんだよね。

 そしたら捕まっちゃった。

 「飛鳥の、親衛隊さん?」

 僕はそう言って、笑って彼らを見た。

 別に、親衛隊という存在に嫌悪感はない。

 だって、僕の飛鳥を僕と同じく愛してくれてるからこそ、親衛隊ってものを作ってくれているんでしょう?

 「そう! 僕たちは小浜飛鳥親衛隊メンバー!

 新井海、あなたは小浜様に何をしたの!」

 「…何をって?」

 「小浜様が、あんな、あんなデレデレだなんて、何かしたに決まってる!」

 そう言って、親衛隊の筆頭らしいその子はこっちを睨みつけてくる。

 あ、ちなみに僕らが今居るのは中庭ね。人気が少ない場所で囲まれちゃってるという。

 「親衛隊さん、ちょっとお話聞いてくれる?」

 僕はそう言って彼らを見る。

 「何で僕らがあんたの話なんて聞かなきゃいけないんだ!」

 「いや、だって親衛隊さんって、僕の飛鳥を去年からずっと応援してくれていた人達でしょ?

 僕と同じで、飛鳥の事だーいすきなんでしょ? だから仲良くしたいなって思って」

 といったら、あっけにとられたような顔をされた。

 「あんた…、バカでしょ?」

 「バカってひどいなぁ。いいじゃん。僕も君たちも飛鳥の事だーいすきなんでしょ?

 飛鳥って他人に容赦ないけど、そんな飛鳥の良さを君たちはわかってくれてるんでしょう?」

 純粋に嬉しい、と思う。

 飛鳥の事は皆が好きだって言ってくれる事が。

 僕の飛鳥が、周りに好かれている事が。

 「あのね、さっきの質問だけど。僕は飛鳥に何もしてないよ。

 飛鳥は僕の前ではいつもああだもん。僕限定で飛鳥は昔からああなんだ」

 とはいっても、流石に出会った当初――、小学校高学年ぐらいの時はこんなんじゃなかったけど。

 いつの間にか飛鳥は、僕の前だとああなった。

 「……昔からって?」

 「えっとね、僕と飛鳥、三年前から付き合ってるんだ」

 そう、三年前から僕と飛鳥は付き合ってる。

 中学生になって、周りで彼氏作る友人とかも出てきてて、そんな中で、僕は男に告白された。

 とはいっても、その時にはもう、僕は飛鳥が好きで、飛鳥はその当時から僕にべったりで、いれるだけずっとそばにいた。

 そんな中で、告白されて、僕が返事をいって、飛鳥の元へ帰ったら、珍しく飛鳥が不安そうな顔していて、そのあと、抱きしめられた。

 飛鳥が僕に当時からべったりとはいっても流石に付き合ってなかった時は抱きしめられたりはしてなかったから。

 で、どうしたの? って聞いたら、飛鳥が、嫌だっていうんだ。

 海が他の奴のものになるの、嫌だって、俺は海が好きなんだって、そう抱きしめていってくれて。

 その姿が可愛くて、僕も好きだよって、いったら飛鳥は嬉しそうに笑ってくれて、それからずっと僕は飛鳥のモノで、飛鳥は僕のモノ。

 「三年前から…!?」

 「でも、小浜様は――、そんな事一度も…」

 「えっとね、飛鳥って何て言うか、独占欲強いんだよね。

 嬉しい事に僕をあんまり誰かに見せたくないとか言ってくれてさ、多分それでいわなかったんだと」

 必要最低限以外僕を周りと関わらせたくないらしいからね。

 何か可愛いよね、そういう独占欲。

 ”可愛い海を他の奴に見せたくない”だとか”海可愛いから周りが惚れたら困る”とか本気でいってる飛鳥に、キュンッってきたからね、僕。

 笑顔でそう言う事、親衛隊の子に語ってたら、親衛隊の子は戸惑った様子だった。 

 「別に僕飛鳥に何かしたわけじゃないし、寧ろ飛鳥に何かする人間は僕が許さない。

 まぁ、親衛隊って事は、飛鳥に恋愛感情持ってる子だって居るだろうけど。

 僕そういう思いは否定しないよ。ただ、僕は飛鳥を誰かにやる気なんてないけれど」

 だって、飛鳥は僕のモノだから。

 飛鳥は僕だけのモノだから。

 飛鳥が僕以外の誰かに僕に接するように接するなんて耐えられない。

 にっこり笑っていれば、親衛隊の子達は戸惑ったような顔をしていた。

 「僕ね、飛鳥の事本当に大好きなんだ。誰に何を言われても別れる気はないし、僕の飛鳥は、僕から離れるなんて耐えられないからね。もちろん、僕も」

 飛鳥は、僕のそばになるべく居ようとする。

 寧ろ、僕がそばに居ないのが嫌だと言う。出来る限りそばに居たいという。

 そんな飛鳥が、僕を簡単に離すなんて、ありえない。

 そんな風に会話をしていれば、

 「霙ちゃんさ、そいつブツブツいってるけど、ヤっていいんだろ?」

 何か、ガタイのいい男が数名やってきた。

 ……ゆっきーがいってた、制裁って奴、やろうとしてたわけね。

 「え。いや、ヤるんじゃなくて、殴ってっていっただけだよ!」

 「えー、どっちも一緒だって」

 ニタニタニタニタと笑っている男達。

 ……どうやら親衛隊の代表は、霙というらしい。

 その子は制裁のために僕をぼころうとしていて、だけど男側は僕をヤろうと考えていたと。

 「それとも、霙ちゃんが、相手してくれんのー?」

 男のうちの一人が、その子を捕まえて後ろから抱きしめる。

 他の親衛隊の子にも、ニヤニヤした笑みを浮かべながら近づいている。

 ……その子達は、青ざめている。

 「な、何す――」

 「いいから、さー」

 とか言いながら唇を近づけようとする、馬鹿。

 「ストップ」

 僕はそう言って、男の一人の腕をつかんだ。

 「何だ? お前が相手してくれんのか?」

 気色悪い笑顔で、ニタニタ笑う、馬鹿。

 ……本当気持ち悪い。

 「うん、相手してあげるから、きなよ」

 ―――喧嘩のね

 というのはいわなかったら、男がニタニタしながら手を伸ばしてきた。

 僕はそれをつかんで、

 ……背負い投げをした。

 「僕は、無理やりは好きじゃないんだよね」

 にっこりと笑えば、残りのガタイのよい男達が、

 「何すんだ、てめぇ!」

 「ふざけんな」

 って、殴りかかってくる。

 僕が背低いし、簡単に殴れるとでもおもってんのかね?

 そんな事をおもいながら、僕は笑って、久しぶりの喧嘩をする。

 おもいっきり、アッパーをかわし、足を引っ掛けて転ばせ、顔面におもいっきり拳をぶち込む。

 ―――そうして喧嘩は五分もかからずに終わった。

 「ふぅ、馬鹿を相手にするのは辛いねぇ」

 何ていいながら、僕は深呼吸して、唖然としている親衛隊の子、数名に近づく。

 「だいじょーぶ?」

 そう言って、笑いかければ、こくこくと彼らは頷いた。

 「よかった。でも、リンチとかそんな事しちゃダメだよ? 君たちが飛鳥の事だーいすきなのはわかるんだけど、飛鳥は風紀委員だから、こんな事されたら、困っちゃうからね?」

 「……えっと、リンチ、しようとしたの、実は今回が初めてで」

 「え、何で?」

 「今まで、小浜様に近づく人っていなくて、だから必要なくて…。でも、あんたは小浜様を変にするからって思って、怖いけど頼みこんで…」

 ………親衛隊でリンチしようとしたのはじめて、か。

 ゆっきーのいう王道学園なるものでは、リンチや強姦日常茶判事で、親衛隊って邪険に扱われてるらしいけど。

 他の親衛隊はどうか知らないけど、飛鳥って僕以外にべったりしないから、今回がはじめてだったらしい。

 「そっかそっか。

 でも、もうしちゃダメだよ? 僕ね、強制的な行為とか大嫌いなんだよね?

 僕と飛鳥がするみたいに愛のある行為なら全然やっちゃってオッケーだけど」

 「うん…、えっと、助けてくれて、ありがと」

 「「……ありがとう、ございます」」

 霙って子がいえば、後ろの親衛隊の子も頭を下げる。

 「…新井海、だっけ?」

 「うん、そーだよ」

 「僕たち、あんたが、小浜先輩を脅して変にしてるのかとかそういう事、考えてた」

 「え、凄い妄想だね」

 「でも、違うみたいだし、あんたは、小浜様の事大事にしてるし、認識間違ってたみたいだから、隊長に話してみる」

 ……この子いい子だ。

 勘違いして先走ってただけなんだなぁ。

 飛鳥の事好きだから、飛鳥に何かしている人はどうにかしなきゃっていう思いが先走っただけみたいだし。

 「うん、そうしてくれるとありがたいかなー。あ、君たちの名前聞いていい?

 お友達になろうよ。同じ飛鳥の事大好きなもの同士だしさ。

 あ、もしかしてそっちに先輩居る? 居るなら敬語使わなきゃだけど…」

 「僕ら、全員一年だよ」

 「そっかー。なら僕は新井海。海って呼んでね?あ、ただ飛鳥の前で海海連呼したら飛鳥妬いちゃうから、なるべくしないようにね?」

 「うん、海って呼ぶ。

 僕は、葛飾霙カツシカミゾレ

 「俺は、野々原水月ノノハラミヅキ

 「えっと、僕は、登呂康弘トロヤスヒロです」

 「俺は、神無月夢カンナヅキユメ

 四人はそう言って、自己紹介をしてくれる。

 何だろう、弱弱しいオーラが出てて守ってあげたい感じあるよね。

 ゆっきーいわく、親衛隊ってわんこみたいな子多いらしいし。

 「じゃあ、呼び捨てしていい?」

 「うん」

 皆了承してくれて、何だか嬉しくなった。

 「あ、そうだ。こいつらどうにかしなきゃだよね? とりあえず飛鳥に連絡すればいいかな?」

 何て言いながら、僕が霙達に笑いかけていた時、

 「海っ!」

 飛鳥の声が響いたと同時に抱きしめられた。

 「飛鳥、どうしたの、慌てて?」

 「海が、親衛隊に連れていかれた、って聞いて」

 「大丈夫大丈夫、仲良くなったし。それよりそこで伸びてる変態どうにかして」

 そう言えば、飛鳥はやっと周りに霙達と倒れている面々が居る事に気付いたようだ。

 …僕しか眼中にないって感じの飛鳥に、嬉しくなった。

 「お前ら、海に、何かしたのか?」

 「え、えっと…」

 「はいはい、ストップ。霙達が脅えてるからね?」

 そう言って、上を見上げて飛鳥と視線を合わせる。

 「霙達ね、飛鳥の親衛隊で僕をぼこそうと思って変態達連れてきたらしいんだよね?

 でもね、変態達はぼこるんじゃなくてヤりたいって感じの猿で、僕と親衛隊の子達襲おうとしてさ」

 「…俺の、海に手を出そうとした、だと?」

 「飛鳥、とりあえず、切れるのは後にして」

 僕の言葉に飛鳥が黙ったので、続きを言う。

 「親衛隊の子達、飛鳥が僕の前だけ態度が違うから僕が飛鳥に何かしたんじゃないかって勘違いしてね、初めてリンチなるものをしようとしたらしくて」

 「そういえば、俺の親衛隊は確かに問題今まで起こしてなかったな…」

 「でしょ? だから霙達は先走っただけだから怒らないであげてね?

 未遂だし、あ、もちろん、変態達は僕がぶちのめしたけど」

 「未遂じゃなかったらこいつらぶち殺してる」

 「わー、僕愛されてて嬉しいよ、飛鳥。でも僕飛鳥に殺人犯になってほしくないから、そんな物騒な事言わないで」

 僕がそう言って笑えば、飛鳥は僕をもっとぎゅっと抱きしめてくれた。

 そうして飛鳥は左ポケットに入っていたスマホを手に取ると、電話をかける。

 「見つけた、中庭だ。何人かよこせ」

 それだけで、飛鳥は電話を切った。

 …会話かなり短いよなぁ。まぁ、飛鳥だしね。

 「飛鳥、この子達、霙に、水月に康弘に夢ね!僕のお友達」

 「…そうか」

 そう言って、飛鳥は僕の頭をなでて、霙達を見て言う。

 「お前ら、海は俺に何もしてない。俺を心配でもしてやったのかもしれないけど、海は俺のだ。

 俺が望んでそばに置いてる。だから、何もするなって、隊長にいっとけ」

 飛鳥かっこいい。

 流石、僕の飛鳥。

 この学園の生徒会って、親衛隊の事邪険に扱ってるって快人がいってたけど、飛鳥は流石だね。

 まぁ、僕と友達になったからもあるだろうけど。

 しばらくすれば、

 「飛鳥」

 「委員長!!」

 風紀委員の印の制服を見にまとっている生徒が何名かその場にやってくる。

 ちなみに言うと、風紀委員や生徒会は少し制服が違う。

 ラインが入ってるってだけだけど。

 風紀は赤、生徒会は青なんだって。

 「飛鳥が、人抱きしめてるぅ!?」

 「え、委員長の恋人ってその子何ですか!?」

 「こんな小さい子、風紀いれて大丈夫ですか?」

 「え、というか、この周りで倒れてるのは!?」

 何か、周りに一気に注目された。

 「――ああ、これなら海がやった。

 親衛隊の奴とは海は友人になった、らしい」

 「え、飛鳥、この子がこいつらぶち飛ばしたのか!? すげぇ、あ、俺風紀副委員の矢岳聖一ヤタケセイイチ。よろしくー」

 話しかけてきたのは、にこやかに笑う茶髪の男だった。

 何だか、明るい人だなと思う。

 飛鳥の事名前呼びしてるって事はそれなりに仲良しなんだろうし。

 「よろしくお願いします。先輩ですよね? 僕、新井海って言います」

 「海かー。それにしても凄いね? こんなぶちのめすって」

 「僕のお父さん総合格闘やってて、色々習ったんです」

 お父さんってば、心配性だから、何かあったらこれで反撃しなさいって色々しこまれたんだよね。

 まぁ、飛鳥やお兄ちゃんと一緒に色々しこまれるのは楽しかったけど。

 ちなみにピンチで仕方がない時は急所を蹴りあげてやれとお父さんにいわれた。

 「へぇー」

 「聖一、海、風紀いれていいか? こいつ強いし」

 「いいけど…。お前本当、海にべったりだな。俺びっくりするぞ。噂聞いてたにしても」

 「だって、海可愛いから」

 「……本当海には可愛いって言うんだな。何かうける」

 聖一先輩は、周りの風紀委員の方々に男達を運ぶように指示しながら問う。

 「飛鳥の恋人、風紀いれる事反対な奴居るかー?というか、飛鳥が海と一緒に居たいみたいだし、いれていいよな?

 あんまり望みごといわねぇ飛鳥が望んでる事だし」

 わー、飛鳥ってば愛されてるね。

 飛鳥の望みを叶えてやりたいって、聖一先輩はそうおもってるんだね。

 いいね、男同士の友情。

 ゆっきーに見せられたBLって、何か恋愛ばっかだったからな。

 うん、王道なるものを見せられたから。周り全員に狙われるって何その恐ろしい状態って感じだよね。

 「いいですよー」

 「強いみたいだし、オッケーです」

 「委員長の恋人なら性格悪くないだろうし、いいです」

 …飛鳥信用されてるね。

 飛鳥の恋人なら性格悪くないんだって。

 いいね、僕の飛鳥は信用されてるんだね。

 何か、嬉しい。

 そういうわけで僕の風紀入りは決まった。

 ちなみにその後、霙達と連絡交換して、親衛隊の隊長とも仲良くなりました。

 うん、飛鳥の親衛隊の子、いい子達ばっかだったよ。


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