転入生が来るようですよ?
「わー、飛鳥。今度お兄ちゃん以外にももう一人転校生来るんだね?」
「あー。なんか、理人が向こうの学園で精神的に追い詰めた奴をこっちによこすって電話きた」
風紀員室にて、僕が資料を見ながらいった言葉に、飛鳥がそういった。
――お兄ちゃんは、会長さんが駄々をこねた…というか、一緒に学園がいいと言い張るので、転校してくることになっていた。
お兄ちゃん頭いいし、転入試験は余裕で通ったようであった。
流石、僕のお兄ちゃんだよね!!
まぁ、転入してきても、しばらく副会長さん達には会わせないもんね。妨害してやるもんね!
僕まだ怒ってるんだもん。
「理人君が精神的に追い詰めた?」
「あー、あの偽物と同じようなのがきて、思いっきりぶっ潰したらしい。で、そこの副会長が信者になり果ててて見せしめに思いっきり精神的にいためつけたらしい」
「へぇ、何したの、具体的には?」
「バンジージャンプ」
「へ?」
「だから、バンジージャンプ。こう、縄で繋げて、屋上から気絶している副会長を落としたらしい。よくやるよな、本当」
バ・ン・ジー・ジャ・ン・プ!?
え、何それ。理人君何やってんの。
と、あった事もない、理人君に思わずそんな事を思う。
「…へぇ。しかし、やること派手だね。理人君」
「あいつ、やるなら思いっきり暴れたいらしいから」
「へぇ。ますます理人君に興味出てきたなぁ」
飛鳥の親友ってだけで興味津々だけど、何だか面白そうだとなおさら思った。
「…海」
「ん、なぁに?」
そう問いかけると同時に、僕は腕を引かれて、飛鳥の膝の上に乗る形になる。
「――他の、男に興味持つとかいうな」
「わー、飛鳥嫉妬してたの? 大丈夫だよ。僕飛鳥だけが大好きだから。飛鳥以外には興味ないから」
飛鳥の独占欲は心地よい。
愛されてるんだって実感がどうしようもなく嬉しい。
「それに、理人君に興味持つのは、理人君が飛鳥の親友だからだしねー」
笑って飛鳥を見上げれば、飛鳥も優しく笑ってくれた。
「小浜君も海ちゃんも本当仲良しだね」
そういって笑うのは、浅先輩だ。
「……つか、飛鳥、さっきのバンジージャンプってなんだ、バンジージャンプって、お前の親友は何をしてんだよ」
聖一先輩が、頭を抱えたように言う。
周りの風紀員室にいる何人かの風紀もこちらを見つめていた。
「理人、そういう奴だから。敵には一切容赦なし。で、やったらしい」
「飛鳥といい、その親友といい……、お前らやりすぎだろ」
「俺は海に手を出されない限り理人みたいに容赦なくしねぇ」
「ふふ、飛鳥、だーいすき」
飛鳥の言葉が嬉しくて思わずそんな言葉がもれる。
「海、可愛すぎ」
ぎゅって抱きしめられて、後ろから感じる体温が心地よい。
僕らがくっついてる事はいつもの事だし、周りの風紀達は皆苦笑いしてみていた。
「あ、そういえば飛鳥ぁ、僕らってインタビューあるんだよね?」
「…ああ」
何でもね、魔王とか呼ばれてる飛鳥の恋人って事で、新聞部にインタビュー受ける事になったんだよね。
飛鳥も、僕が行くなら行くって、ついてくるっていってるし。
だから、二人でインタビュー受けるんだ。
「じゃあ、新聞部の部室いこっか」
「ああ」
新聞部の部室とかよく考えたらいった事ないんだよねー。
どんな所だろうね?
「飛鳥ー、手繋いでいこー」
「ああ」
手を絡めれば、飛鳥も絡めてくれて、何だか嬉しくなる。
そうして呆れてる聖一先輩達の視線を無視してそのまま僕と飛鳥は風紀員室を後にした。
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「――いつからのお付き合いなんですか?」
というわけで、インタビュー受けてます。
飛鳥の膝に乗ったままな僕。
飛鳥は新聞部のインタビューなんてどうでもいいといった感じで僕の頭を撫でている。
「三年前ですよー
出会ったのはもっと前だけどね、飛鳥」
「…ああ」
「三年ですか? 長いですね…」
驚いたようにそういう新聞部の子。
ちなみにこのインタビュー後から書きとりのために録音されながら聞いてるんだけどね。
「出会ったのはですねー。小学生の時ですよ。僕のお兄ちゃんが飛鳥と親友で」
「お兄さんがいるんですか? しかも、魔王様と親友…?」
「はい、てか今度くる転入生の一人が僕のお兄ちゃんですよ」
一応飛鳥も一緒にインタビュー受けてんのに、飛鳥全然答える気ないよね。
なんかずっと僕を見てるし。
「え、転入生が新井君のお兄さんなんですか?」
「そうですよ。
会長さんがよんだんです」
にこにこと笑いながら僕がいう。
どうせ、会長さんはお兄ちゃんといちゃつきたいだろうし、体育祭の事皆知ってるから会長さんの恋人がお兄ちゃんって知ってるし、いいよねーなんて思いながら僕は口元を緩めた。
「会長が、呼んだ? お兄さんは会長とも知り合いなんですか?」
「恋人ですよー。体育祭で来てた『金姫』って僕のお兄ちゃんなんです」
さらっと、ばらしてみれば、その場にいる飛鳥以外の面々が驚いたような顔を浮かべる。
飛鳥は僕がばらしても興味ないみたいで、僕の髪に手をやっている。
本当飛鳥って親友にだろうと無関心だよね! 僕にだけ興味ある飛鳥が僕は大好きだよ
「え!?」
「『金姫』が、新井君のお兄さん!?」
「そ、そんな事いっちゃっていいんですか!?」
驚いたように一斉に言葉を放ってくる面々に僕はにっこりと笑う。
そうして、返事を返す。
「全然大丈夫ですよー。だって会長さんお兄ちゃんの事大好きだし多分べったりなるでしょうし、そうなったらどうせばれるでしょ?」
「はぁ、そういうものなのですか。
え、というか、『金姫』と親友なんですか、小浜様が……」
「そうですよー。飛鳥とお兄ちゃんが親友で、仲良しさんだったので僕と飛鳥は出会ったんです」
本当、お兄ちゃんが飛鳥と仲良くなってくれたおかげで飛鳥と出会えたんだ。
「そうなんですか?」
「そうですよー。最初は飛鳥、僕にも冷たかったんですよ? でもだんだん優しくなったんですよ」
懐かしいなぁ、と昔の飛鳥を思う。
本当、最初は僕に対する態度は他の人にするような無関心な感じだった。
だけど、何か徐々に今みたいになっていったんだよね。
お兄ちゃんがびっくりしてたもん。
”飛鳥が、海といる時だけ変だ”だの、なんだのいってた。
「へぇ、今はこんなにべったりで溺愛なのに、そんな時期あったんですね?」
「そりゃあ、最初はそういう感じだよ。でも徐々に飛鳥は、凄く僕の事愛してくれるようになったんですよ」
僕はそういって、続ける。
「僕もしばらくしてから飛鳥の事凄く大好きになったんですよ。だから、飛鳥が僕の事愛してくれてて、凄く嬉しいんです」
「…海、可愛い」
僕は飛鳥が大好き。
で、飛鳥は僕を愛してくれてる。
それって、すごく幸せな事だと思う。
だって、相思相愛ってある意味奇跡だと思うんだ。
こんだけ、沢山の人間がいる中で、飛鳥が僕を愛してくれてるのが嬉しい。
「あの、新井君。はずかしくないんですか?」
「ん、はずかしい? ないない。僕、寧ろ飛鳥が僕のだって見せつけるの嬉しいんですもの。
僕の飛鳥は凄くかっこいいから、女でも男でも寄ってきちゃうんですよね」
本当、僕の飛鳥ってもてるんだよねー。
女でも男でも寄ってきちゃう感じがあって、本当、僕の飛鳥によらないでーって気分になるんだよね。
思わず過去に飛鳥に近づいてきた女とかを思いだして、ちょっと不機嫌になってしまう。
「海――」
そんな僕を見て、飛鳥は笑って、僕の髪をなでる。
「俺だって、海に誰かが近づくのは嫌だ。海の周りにいる男全部嫌だ。
海は可愛いから、惚れるかもしれねぇだろ?」
ああ、飛鳥! そんな風に言いながら、優しい笑みを浮かべてる飛鳥が大好きだよ、僕は!
「ふふ、僕は飛鳥以外愛してないから、惚れられたとしても心配無用だよ!」
「…それは、俺もだ」
「うん、わかってるよ」
飛鳥の膝の上で、飛鳥を見上げるように見つめれば、飛鳥は優しく笑った。
「海、部屋行こう」
「え、でも取材途中じゃない?」
「別にいいだろ、俺海と二人っきりがいい」
そんな事を言いながらも僕を抱きかかえて立ち上がる飛鳥。
そうして、飛鳥は取材をしていた面々を見て、言う。
「俺、海と二人っきりになりたいから帰るから、文句ねぇよな?」
「は、はい!」
「もちろんです」
飛鳥の言葉に、勢いよく彼らは答えるのだった。
その後?
もちろん、寮室でいちゃつきました。飛鳥にいっぱーい、愛してもらえて、僕は大満足だよ。




