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体育祭にて 6

 「銀さん、銀さんっ」

 フユが僕の事を呼んで本当に嬉しそうに笑う。

 可愛いなぁ、フユはとそんな様子を見ながら思う。

 「フユ、嬉しそうだね?」

 「嬉しいです! 銀さんの恰好見ると凄くうれしい!」

 「可愛いねぇ、フユは」

 「ところで、何でそんな恰好してるんですか?」

 海としての恰好じゃなくて、『白銀』としての恰好をわざわざしている事に疑問に思ったらしい。

 フユは不思議そうにこっちを見てくる。

 「おバカさん達の、目を覚ましてあげようと思ってね」

 そういって、僕は続ける

 「フユ、『金姫』は今此処にきてる」

 「…本物が、ですか?」

 「うん、そう。私の大事な『金姫』は此処にきてる。

 『金姫』は凄く優しいから。副会長達みたいなおバカさんでも見捨てられないの。

 だから私はね、『金姫』のために、おバカさん達の目をさましてあげようと思ったの」

 お兄ちゃんの事、大切だっておもってる。

 お兄ちゃんが笑えば、周りのみんなだって幸せな気分になる。

 お兄ちゃんのためだから、お兄ちゃんが副会長さん達を見捨てられないから、僕は目を覚まさせてあげようと思った。

 「――だからね、フユ。協力してくれる?」

 「当たり前です!!」

 「そう、よかった。もう、会長達も動いてる。

 偽物を偽物だって知らしめるためにね」

 ―――僕はね、お兄ちゃんみたいに優しくない。

 だから、偽物を許す気はない。

 「『黒帝』と『ゼロ』は、偽物のつるんでた連中に呼びだしてる。ついでに、偽物に迷惑をかけられている人間もね。

 きちんと迎えもよこしてる。だから、来るよ、そいつらが」

 親衛隊隊長さんは情報屋だから、そういう情報は結構持ってるし、ついでに 『wild』の事もきちんと報告したわけだし、きっと呼びだす。

 飛鳥も、それを手伝ってる。

 会長さんと会計さんはまだ出番なし、というか、ずっと会長さん達『RED』にお兄ちゃんは会いたいって思ってたわけだし、時間を作ってあげたかったってのもある。

 「フユも、思いっきり暴れていいのよ? あの、偽物とか、ついでに偽物のお仲間さんとかとね」

 「銀さんと、黒さんも暴れますか?」

 「うん、もちろん。私は『黒帝』と一緒に、『金姫』に害なす存在を潰してあげるの」

 人を信じすぎるってのは時に危うい事。

 お兄ちゃんは人を信頼しすぎてる。だから、危うい。

 でもお兄ちゃんが危険になんないのは、周りの――、お兄ちゃんを大好きな人達が、お兄ちゃんに害をなす人を結構排除してたりするからなんだよね。

 本当にね、お兄ちゃんっていつか騙されそうで心配でたまらないから。

 「銀さんと黒さんが暴れるって超楽しみです」

 キラキラした目でこっちを見てくるフユは本当に可愛い。尻尾が見える。

 周りの生徒達がこんなフユ見るのははじめてだからか、驚いたような顔して騒いでるしね。

 「フユは可愛いね」

 本当に、フユみたいに可愛いペットがいて僕は嬉しく思う。

 フユは従順で、そして凄くいい働きをしてくれる。

 僕も飛鳥も、使えない人間を気にいったりはしない。

 頭を撫でれば気持ちよさそうな顔をするフユ。

 というか、本当に犬だよね、フユって。

 そうして、堂々と歩いているのは、『白銀』っていう存在が体育祭にきているだって知らしめるため。

 噂はね、絶対に広まるものだから。それにきっと、『金姫』が此処に居るって噂も偽物が喚くから、広まってきてるだろうしね。

 「ま、待ちなさい!!」

 フユとそうやって歩いていたら、声をかけられる。

 振り向けば、焦った顔をした副会長さんがいた。

 「なにか用、おバカさん」

 「………空也は、『金姫』、じゃないですよね」

 「へぇ、いまさら気付いたの?」

 遅い、本当に遅い。

 呆れるぐらい、バカで、いら立ちが募る。

 「それで、偽物だと思ったからって、私に何の用?」

 「……本物の、『金姫』は、何処にいますか」

 「さっきまであのまがい物を信じ切ってたのに? 何処までバカなの、あんたって」

 お兄ちゃんが許さないと言えば、思いっきりぶん殴るのにな、って思う。

 僕は許せない。でも、お兄ちゃんは許してる。だから、我慢する。

 「私は、『金姫』が大切なの。だからね、『金姫』を傷つけたあんたに、会わせたくない」

 「――私が、傷つけた…?」

 茫然としたような声を発する副会長さんに、余計苛立つ。

 「――仲間だと思ってた存在が、自分を間違える事を『金姫』が知って、傷つかないと思ってたの?

 あんたたちが、『金姫』を守るためと称して、生徒会長達を裏切るような仕事をしないような真似して、何も感じないと思ってたの?」

 お兄ちゃんは、絆を大切にする人だ。

 お兄ちゃんは、優しくて、傷つきやすい人だ。

 「『金姫』がどういう人間か知っていたなら、最初から気付くべきだったのよ。

 現に、生徒会長と生徒会会計は、偽物だってわかってたわよ?」

 そういえば、副会長さんの顔が、歪む。

 「…それに、生徒会長が偽物に近づかなかった時点で気付くべきだったのよ。『金姫』と生徒会長は仲良しでしょう?」

 そういえば、益々歪む、副会長さんの顔。

 「…ま、とはいっても、『金姫』はあんたたちを見捨てはしないわ。『金姫』がどういう子か、知っているでしょう?

 『金姫』は一度懐にいれた人間を見捨てない。そういう人だもの。

 『金姫』が優しくてよかったね? 私だったら、絶対同じ事されたらあんたを見捨てるもの」

 「銀さん」

 「ん? 何、フユ」

 副会長さんと話していたら、フユに名前を呼ばれて振りかえる。

 「人集まってきたんで、こんな奴放っておいて行きましょうよ」

 こんな奴って…仮にも此処の副会長なんだけどね。

 まぁ、フユは基本的に人に関心はないし、どうでもいいと思ってるからね。

 「そうね。行きましょう。黒の所に」

 「『黒帝』もきてるんですか!? それに、そいつとどういう関係ですか…? まさか、恋人?」

 「そんなわけないだろ!! 黒さんに怒られるから!」

 副会長さんの言葉に、そういったのは、フユである。

 まぁ確かに飛鳥は僕とフユが付き合ってるって噂とか流れただけで不機嫌になりそうだしね。

 飛鳥、独占欲強いんだもん。嬉しいんだけどね!

 「え、『黒帝』と『白銀』って―――」

 「私は黒のモノ。黒は私のモノ。

 そして、フユは私たちの犬よ。要するに飼い主とペットな関係かな」

 簡潔にそれだけ告げる。

 「じゃあ、私たちはもう行くわ」

 「ま、待ってください。『金姫』は――」

 「後にわかるから、黙っていなさい。そして、あのおバカな双子の目を覚ましてあげたら?

 私を追う事に必死で放置したのでしょう?」

 私が、そういって笑えば、副会長は何とも言えない顔をする。

 自分が『金姫』だと言いだしたのに今更それを否定するのが言いにくいのかもしれない。

 「本物の、『金姫』は姿を現す。ま、とはいっても私はあんたに怒ってるから、しばらく『金姫』に近づけさせてあげないけど」

 「なっ―――」

 「本当は一生会わせたくないぐらいなのに、『金姫』が許すから、しばらくでいいって言ってるの。口答えする気? 私は譲歩してあげてるのに?」

 不満そうな顔をする副会長さんにそういって、僕とフユはその場から去っていく。

 ―――さぁて、本物の『金姫』のお披露目まで、あと少し。





 *新井空side



 「それにしても、小浜の恋人が空の弟だとは知らなかった」

 「だよねー。だから海ちゃんあんなにはっきり空也の事偽物だって断言してたんだな」

 そんな言葉を言う、学と春哉が居る。

 んー、妹なんだけど。言っていいかな?とちょっと迷う。

 仲間には嘘付きたくないし、こいつらは信用できる。

 「あーっとな、学、春哉。海、あれ女だから。要するに俺の妹」

 「「は?」」

 学と春哉の声が重なった。

 そりゃあ、男子校に女が紛れ込んでたら驚くよな。

 俺心配だからって反対したのに、海は行く気満々だし、母さんも父さんも、飛鳥の両親も普通に賛成して通ってるっていう。

 理事長には女だけど周りに秘密で通わせること飛鳥ん家の権力で認めさせたらしいし。

 つか、飛鳥は海と居るために留年してるし、本当、びっくりするぐらいいちゃつく二人だ。

 「妹…?」

 「え、女の子なの、海ちゃん…。何で男子校に…?」

 「驚くのも無理ないと思うけど、ほら、海って飛鳥の事大好きじゃん」

 「まぁ、確かによくいちゃついてるの見るが…」

 「それで、飛鳥と離れ離れ嫌だから男装して男子校いくって言い張って入学したんだよな」

 まぁ、この学園同性愛が普通らしいから、普通に海と飛鳥はいちゃついてるらしい。

 とはいっても、あいつら普通に共学だろうといちゃついてたけど。

 中学時代付き合いだしてからも何処でもいちゃついてたからなぁ…。

 「そうか…」

 「というか、学。小浜って『黒帝』だから学喧嘩で勝てなかったんだね、きっと」

 「え、喧嘩したの、学と飛鳥って」

 「まぁ、去年ちょっとな…」

 「学ってば、小浜に勉強でも勝てないから超悔しがってたよな」

 「……あー、飛鳥基本的に何でもできるから」

 そういえば、学は自分が一番である事が好きだったな、昔から。

 変わってない、って事実が、どうしようもなく嬉しい。

 そうやって、会話を交わす中で、スマホが鳴る。

 ―――それは、飛鳥からの着信。

 「もしもし」

 『空、『wild』の奴らとか、偽物関係者色々集めた。

 お前、『金姫』の恰好しとけ。『ゼロ』が金色のスプレーとか持っていくから』

 「…わかった」

 『金姫』の姿―――そんなのするの二年ぶりだ。

 しばらくして、『ゼロ』が金色のスプレーと、フードのついた上着とか、色々持ってきてくれた。

 あと、サングラスも。

 「学、ちょっと、髪、金色に染めるの手伝って」

 俺がそう言えば、学は嬉しそうに笑って、そして、それうを実行する。

 春哉もにこにこと笑って、俺をじっと見てる。

 ――気合いれてやらなきゃ。

 何だか、この姿も久しぶりだから変な違和感あるけど、志紀達は、俺にとって、仲間なんだから、頑張ろう。




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