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体育祭にて 2

 「飛鳥、頑張ってね!」

 理事長室を後にした僕らは体育祭に参加中です!

 ちなみに今から飛鳥は200メートル走を走るんだよね。

 応援してあげなければ!

 飛鳥人気者だし、周りの生徒達も盛り上がってるしね。

 僕行事事とか大好きだから楽しくて仕方ない!

 しかも飛鳥と一緒に体育祭とかよい思い出になりそうだし。

 位置についた飛鳥はこちらを見て笑った。

 その笑顔に霙達もキャーキャー騒いでて、僕の飛鳥が人気で嬉しいと思うと同時に僕の飛鳥なのにって、独占欲がわいた。

 飛鳥は地面を蹴って駆け出す。

 流石、速いなあ、と見惚れそうだ。

 僕の飛鳥は最高にかっこいい。

 そのまま一着でゴールした飛鳥はそのままこっちに向かってくる。

 そんな飛鳥に僕は思いっきり抱きついていった。

 「流石僕の飛鳥っ、かっこいいよ」

 こうやって飛鳥と一緒に運動会とか滅茶苦茶楽しいなあなんて思っていたら、

 「小浜、海ちゃん」

 話しかけられた。

 振り向けば会計さんがいた。

 「なにか用かなあ、会計さん」

 「きてるんだよねえ? 俺探したいんだけどさー」

 なんて言いながら会計さんはちらりと後方を見る。

 「春哉、何やってんだよ! こいよ」

 ―――副会長さんと双子に囲まれて笑っている偽物がいた。

 なるほど、会計さんはお兄ちゃんを探したいのに絡まれて困ってるのか。

 僕はそれを理解すると飛鳥のほうをちらりと見ていった。

 「飛鳥、『金姫』のためにも、あいつの気をひくよ」

 「……海がそうしたいなら俺もそうする

 あいつうざいからやだけど」

 飛鳥がそういってくれたから僕は偽物の方を向いて声をあげた。

 「空也、会計さを用事あるみたいだし僕らと一緒に体育祭楽しまない?」

 すべては、お兄ちゃんのため。

 お兄ちゃんと会長さんと会計さんが会いやすくするため。

 たった一人のお兄ちゃんのためだもん。








 *倉内春哉side



 海ちゃんと小浜が、空也を引き連れていなくなるのを視界に捉えながら、俺は『金姫』と海ちゃんの関係は何だろうとふと疑問に思う。

 だって海ちゃんは『金姫』のために行動を起こしてる。

 『金姫』の事を大事に思っているのもわかる。

 前に一瞬、恋人かとも思ったけど小浜と海ちゃんは相思相愛で、ただ疑問だった。

 よし、と俺は意気込む。

 せっかく海ちゃん達が空也を引き受けてくれたのだ。

 学より先に『金姫』を見つけたいんだ。

 そしてもう一度、俺が『金姫』の事大好きでたまらないんだって、伝えたい。

 ふぅと、息を吐いて、俺はその場を後にする。

 ……黒隅学園の文化祭には沢山の人がきている。

 だから、正直見つけられるかどうかは微妙なんだと思う。

 『金姫』から会いにとか、きてくれない限り、探す事はできないかもしれない。

 だって、俺も、学も『金姫』の名前すらも知らない。

 でも、それでも、会いたいんだ。

 ずっと、二年もあってなかったけれども、それでも俺の心にあり続ける光に。

 何処までも真っすぐで、綺麗なあの人に。

 志紀達にとって、空也は『金姫』で、光なのらしいけど。

  俺は、本物の、アイツに会いたい。本物の、俺の光に会いたい。

 ――――ああ、会えるかもって思うだけどどうしようもなく嬉しい。

 絶対、見つけてやるっ。

 見つけたい、見つけたい、見つけたい――。

 ああ、どうやったら、『金姫』を見つけられるだろうか。

 こんなに沢山の人間の中から。

 そんな事を思っていたら、

 「あー、学じゃん」

 学を発見した。

 俺と同じように何かを探すように、何かを求めるようにそこにある姿に、思わず口元が緩む。

 志紀達は俺や学と一緒で『金姫』を求めていたはずなのに、彼らは間違えしまった。

 あれだけ、俺達が大切でたまらなくて、俺たちにとって光だった存在を。

 それが、何と言うか、裏切りにも似た思いを感じて仕方がない。

 だって、俺たちは皆して、『金姫』に惹かれて、一種の共同体みたいに、俺らは『金姫』だけを探してた。

 なのに、奴らは間違えたのだ。 

 だから、何て言うか、本当に志紀達には少し失望した。

 あんな、偽りの光に騙されて、あんな、偽物を本物だと思いこんで。

 「春哉か」

 「『金姫』探し、一緒する?

 こんだけ人多いんじゃ、なかなか見つからないだろうし?」

 「…ああ」

 「そういえば、空也の事は海ちゃん達が引きうけてくれたよ。

 海ちゃんって本当、『金姫』の事大事に思ってるみたい」

 関係性を聞きだしたら、答えてくれるかなぁ、なんて思う。

 「『金姫』の事、しりてぇな」

 「うん、だねぇー。何でも知りたいよね。『金姫』の名前も、全て、見つけたら、教えてくれるかな?」

 あんまり、他人にそこまで興味がない方だと、自分で思うけれども、

 それでも、『金姫』の事は何でも知りたいと望むんだ。

 ―――『金姫』に出会って、俺の世界は変わった気がするから。

 あれだけ、人を好きになれるって気持ちを教えてもらえた気がするから。

 ねぇ、『金姫』待っててよ。

 俺らが、見つけるから。

 偽りの光に、志紀達は騙されてしまったけど、俺らにとっては本物の光じゃないと意味がないんだ。


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