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体育祭にて 1

 体育祭当日。

 僕らは何故か今、理事長室にきている。

 あ、別に理事長と知り合いとかそんなんじゃないよ?

 ただね、理事長って、あの偽物の親戚らしくて、邪魔だから牽制したいって僕がいったら、飛鳥が、『…ちょっと待ってろ』ってどこかに電話しだして。

 それで、電話切った後いきなり理事長室行くぞって言いだしたんだよね。

 「それで、君たちは私に何の用だね」

 威厳に満ちた男の人だなぁなんておもいながら、僕は何故か飛鳥の膝の上から理事長を見つめる。

 うん、何で僕飛鳥の膝の上に居ながら理事長と対面してんだろうね。

 「―――理事長、龍宮麻理と、龍宮翔はわかりますよね?」

 飛鳥の言葉に、理事長の肩がびくっと震えた。

 え、何、飛鳥ってば、理事長の脅しネタでもゲットしたの?

 流石僕の飛鳥。仕事はやいね!

 僕が牽制したいっていったからって。

 あれ、てゆーか、龍宮って、もしかして…。

 「理人君の実家だよねー。それがどしたの?」

 「き、君は麻理様と翔様の知り合いですか!?」 

 え、と思いながらいきなり叫んだ理事長を僕は見つめる。

 龍宮家というのは、飛鳥の親友の実家である。

 飛鳥ん家の小浜家と、その理人君ん家の龍宮家はトップクラスの企業だ。

 龍宮麻理と龍宮翔ってのは、確か、時期当主とその妻だったはずなのだが…

 目の前の理事長は何なんだろうか。と不思議におもっていれば、飛鳥が言った。

 「あー、麻理さんと翔さんって、ドSで下僕沢山いんだよ。下僕達は自らを『女王様の犬』もしくは、『女王と帝王にけなされ隊』らしい。

 元々は麻理さんの犬だったらしいけど、今じゃ全員あの夫婦の犬とかしてるらしいぞ。

 俺はこの学園入る前に麻理さん達に言われてたからな。何かあれば名前だして脅していいって。だから電話したんだ」

 ……ものすごく、その夫婦に会ってみたくなった。

 僕は個性的な人好きなんだ、とっても。

 つかいい加減理人君にも合わせてほしい。

 飛鳥の親友に僕は会ってみたいんだ。

 「理事長、転入生に何があっても口出ししないでもらえるか?」

 飛鳥がそう言って、射るような鋭い目を、理事長へと向ける。

 理事長は、一瞬体をびくつかせた。

 「―――空也に、何かする気か」

 「何かっていうか、ちょっと、な」

 結局偽物をどうするか、なんてお兄ちゃんに決めてもらおうって思ってる。

 僕は会長さん達に見つけなよっていったけど、お兄ちゃんって会長さん達に会いたいはずだから、自分から来るかもしれない。

 折角チャンスを作ってあげたんだから、お兄ちゃんが再会してくれた方が、僕は嬉しい。

 「とりあえず、手出ししようとするなら麻理さん達に連絡しますから」

 「……わかった」

 それにしても、本当絶対服従なんだね、凄いとしか思えない。

 体育祭、思いっきり楽しもう。

 お兄ちゃんと会長さん達、会えるといいなぁ。








 *新井空side



 心臓がバクバクする。

 ―――今、俺は学や志紀達が居る学園に居るんだ。

 それをおもうだけで、緊張する。

 海が、『きなよっ』って持ちかけてきたのは、本当についこの間の事。

 気付いてくれた。

 学と春哉は。

 ああ、それにしても俺の偽物って、どうコメントしていいかわからない。

 『RED』の奴らに会いたい。

 温かいあの場所に、行きたい。

 っては、おもうけど、久しぶりに会うってのに、緊張というか、色々考え込んでしまう。

 ……思わず、耳元のピアスに俺は触れた。

 俺が心に誓った、仲間の証。

 赤いピアスは、俺が、『RED』を仲間だと思っていた、そんな証。

 二年ぶり、なのだ。

 彼らの姿を見る事さえも。

 『これより、第××回、黒隅学園体育祭を開催する』

 スピーカー越しに響く声に、懐かしさがこみ上げる。

 ああ、これは学の声だ。

 懐かしい、人の声。

 胸がじーんっと熱くなっていくような、そんな感覚。

 こみあげてくるのは、きっと懐かしさと嬉しさの両方だ。

 「―――……」

 此処に奴らが居るんだ。

 奴らが居る場所に、俺は今いるんだ。

 それをおもうだけで、どうしようもなく、胸が熱くなった。

 海は、俺に自由にしていいっていった。

 別に会いたいなら、自分から会いにいけばいいって。

 ――でも、と思う。

 俺の偽物が居るらしいから。

 『金姫』なんて、なんていう通り名男につけやがるんだ、とでもおもいたくなるような通り名を、自分から名乗ってるらしい。

 『金姫』ってのは、喧嘩してたら周りが勝手に言い始めた名。

 そして、名前とか隠すって海達と決めてたからだからその名を名乗ったけれど、男の俺としてはもっとかっこいい通り名が良かった、なんておもう。

 俺の名を語った奴が、周りに迷惑をかけている。

 俺の名を語った奴が、志紀達を騙してる。

 ―――ぎゅっと、グラウンドの一般席で俺は拳を握った。

 人に、迷惑をかける事は嫌いだ。

 俺は、人の笑顔が好きだから。

 誰にだって笑っててほしい。俺の事を好きになってもらって、そして、優しく笑ってほしいって思う。

 人の笑顔を見るのが好きだ。

 人が心を開いてくれるのがたまらなく嬉しくて。

 皆で一緒におもいっきり騒いで、おもいでを作っていくのが好き。

 皆幸せ、なんて偽善にも満ちた言葉だけど、できる限り誰にでも、俺は笑ってほしいと願う。

 全員に笑ってほしいと思うけど、それが無理なのも、俺は理解していて。

 だからこそ、せめて俺の周りに居る奴だけでも、笑って、そうして生きてほしいって思う。

 だからこそ、大事だっておもった奴が笑えるためなら何だってしてやりたい。

 「―――、田中空也か」

 俺の偽物。

 俺の名をかたってる奴。

 ………そいつをどうにかしなきゃいけない。そうおもって、俺は決意をするように拳を強く握った。



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