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三話 ショッピングにクローンと

おや? お久しぶりです。

べ、別に忘れてたとかサボってたわけではないです。

遅くなってしまいすいません。

「それでこれからどこに行って何買うの?」


 そんなことを尋ねながら電車で私達は揺られている。

 歩いて三分の所にある駅ナカだってあるし、そこまで遠くない位置に大きめのショッピングモールや商業複合施設もあるのにどうしてわざわざ、電車に乗っていく必要があるのだろう。

「まぁまぁ、遠くに行った方が楽しいよ。なんだか遠足みたい」


 あまり答えになっていない気がする。それに遠足なんて子供みたいでなんだか嫌だ。早く帰ってごろごろしたい。



 それから私達は電車に揺られること二十分あまり、ようやく目的の駅に着いたらしい。

 改札を抜けると日曜日だけあって人も多い。駅前のモニュメントの前で待ち合わせをする人々やバスを待つ人々で賑わっていた。

「ねえ、目的地にはいつ着くの。もう二十分も電車乗ったんだからもうすぐ着くんでしょ?」

「もうちょっとの辛抱だよ。」

 だんだんと焦れてきた私をそう言って誤魔化すばっかりだ。

 本当だったら今頃はまだテレビでも見ながらごろごろしているだろうに、あの日常は帰って来るだろうか。


 私がそんな心配をしていると美奈はいきなり声を上げちょうど到着したバスを指差し駆け出した。

「ちょうどバスが来たよ。何上の空に突っ立ってるの、その可愛い顔激写しちゃうぞ」

 駆け出したかと思うとこちらにスマホのカメラを向け、恍惚として顔で近寄ってくる。

 我に返り、美奈が指差したバスに駆け寄った。あのままでは私が良からぬ事に使用されるのではないかと身震いがする。


「早く、このバス乗るんでしょ。置いてくよ」

「嗚呼、ちょっと待ってよ。置いてくって言っても目的地知らないくせに」

「……。バカね、停留所を見て買い物できそうな所に止まればそこが目的地に決まってるじゃない」

「なかなか、考えますね。でも結局バス停の前で私を待ってなきゃいけないからどの道おなじだね。私を待っていてくれるお姉ちゃんはほんと優しいね」


 美奈は可愛い笑顔でそういう。やはりこの笑顔は私の顔ではない気がする。

  だから私は押し黙るしかなかった。結局置いていく事もせずに一緒にバスに乗った。


  

 そこからは諦めて「どこへ行くの」とは問わないことにした。どうせ、はぐらかされるばかりだろう。そう思いバスの中では適当にどこまで趣味志向が同じなのか質問をしていた。

 それから、意外にも盛り上がり時は早く過ぎた。十数分で目的地に着いたらしい。

「やっと着いたよ」

  そこはここ数年に出来たのだろう。大きなショッピングモールだった。マンションからほど近い場所にも大きなショッピングモールがあったつもりだったがそこよりもさらに大きかった。

「わぁ~、大きいね。こんなところにこんなに大きなショッピングモールがあったなんて、知らなかったな」


  入り口で全体を見上げているといつの間にか美奈は自動ドアを潜った先で手招きをしていた。先ほどのように襲い掛かられる前に動かなければ。

  そう思い美奈の後を追ってショッピングモールへと入っていった。

  ショッピングモールは外見から想像していたよりもさらに大きく、内装はヨーロッパ風で三階建ての吹き抜け構造になっていた。その両サイドにはズラリとお店が並び洋服店からレストラン、雑貨屋に映画館まで何でも入っていた。中にはあまり近所にはなさそうな専門店まであるほどだった。


  

「これなんかどうかな?」

「いいんじゃないの、可愛い可愛い」


 段々返答が投げやりになってきた。三軒目の十五着目にもなれば投げやりにもなるだろう。確かに最初の内は細かい感想も言っていたがこれだけ見ると飽きるし、外見は自分と同じなクローンのファッションチェックは複雑な気持ちである。


「自分の着せ替えを見てなんて言えばいいのかな」

「可愛いとか似合ってるとか愛してるって言えばいいんじゃない?」

「そういえば、服とか小物とか見て回ってて時間を忘れてたけど、もうお昼だよね。何食べようか」

「え、私はスルーなの? でもそんな放置プレイでもいつまでも待つよ」


 流したつもりなのだが流れてくれないらしい。仕方ないので美奈をほっといてフードコーナーへと向かった。

 そうしたら、さすがに置いて行かれるのは嫌なのか静かになって付いてきた。案外寂しがり屋なのか見知れない。



 私達はハンバーガーショップに入ることにした。私は中華レストランに入りたかったが、美奈がどうしてもというのでここにした。

「ねぇ、どうしてハンバーガーがよかったの?」

 目の前でハンバーガーにチーズバーガー、テリヤキ、フィレオフィッシュセットと色々なものがてんこ盛りである。一方私は、アップルパイとチキンバーガーセットである。

「いいの。ハンバーガー食べたかったし」

「そうなんだ。でも美奈って何でも美味しそうに食べるよね。やっぱり、アウトドア派は食べるのが好きなのかな?」


 昨日の夕食だって、朝食だって本当に美味しそうに食べていた。あんなに幸せそうに食べるものだからこっちまで幸せな気持ちなってしまう。

「そうだね。でもアウトドアだから食べるのが好きって訳じゃないよ。私ね、味の知識と感覚は知ってるんだよ。でも実際に食べたことがあるわけじゃない。だから実際に食べて、味を感じられるのが幸せなんだ」

 朝も味わったが美奈も私と同じ人間だと思っていても彼女はやはり人工的な存在なのだ。再度確認させられて愕然とする。

「ごめんね。またこんな暗い雰囲気にしちゃって、でもお姉ちゃんには少しでいいから私達の事知っていて欲しかったんだ。そうだ! あっちにクレープがあったんだ。デザートにクレープ買ってくるからちょっと待ってて」


 そう言って食べかけのハンバーガーを置いて駆け出して行った。正直、話した美奈も気まずかったのだろう。

 私も美奈のことを、クローンであるという事を軽く考えていたのかもしれない。これからも美奈に色々な体験をさせてあげよう。

 しかし美奈も良く食べるな。バーガーを三つ食べ終えてあと一つ残っているというのにそこにクレープを食べるのはどうかと思う。やはりデザートは別腹なのだろう。


 チキンバーガーもアップルパイも食べ終え、美奈が帰ってくるまで手持ち無沙汰にポテトを摘んでいるとクレープのある方向とは別の方向へ美奈が走っていくのが見えた。

 だが様子がおかしい。なんだか歩き方がよたよたしい、今にも転びそうで見ていられない。すると美奈はタイルの隙間に足を引っ掛けて転んでしまった。慌てて駆け出そうと立ち上がろうとした時涙を堪えながら賢明に立ち上がり歩き始めていった。

 なんだかその瞬間は感動的だった。子供の成長を見守るようで、自分の手から離れてしまった寂しさのような感情が鬩ぎ合っている。

 目に熱いものが込み上げてくる。ほんの少しの間しか接していないが成長が見れて良かった思う。

 涙を拭うといつの間にか美奈はいなくなっていた。きっとあの角の先に行ったのだろう。


「あれ、何で泣いてるの。お姉ちゃん」

 そこにクレープを二つ持った美奈が帰ってきた。

「え? 何で、さっきあっちに涙を堪えながら歩いて行ったんじゃないの?」

「何それ、泣いてる私って何? もしかして泣き顔を愛でるのが趣味なの? お姉ちゃんが望むならなんだってしてあげるよ」

 最初は何を言われているのか分からずに戸惑っていたが、次第に勘違いをしたのか恍惚とした表情で体を寄せてくる。顔は吐息がかかるほど近寄ってきた。

 しかし目の潤みも治まり始めた頃、違和感が湧いた。遠かったからよく分からなかったが美奈はあんなによたよたしかっただろうか。そのよたよたしさと直前の美奈に対する意志の変化が美奈の転んだという光景を見て勝手に刷り込んでしまったのではないだろうか。

 では一体さっきの美香はなんだったのだろうか。


 私がその疑問に悩んでいると美奈はクレープを差し出した。まさか一人で二つも食べるのかと思っていたが私の分も買ってきてくれたらしい。

 いつも言っている通り私のことが好きなのだろう。出来ればその愛は友達や家族としての愛であって欲しいのだが。

 そんな美奈に感謝しながらクレープを受け取ろうとすると美奈はクレープを頬に押し付けてきた。

「もう、そういう悪ふざけはやめてよね。それに――」

 それにのあとに「食べ物で遊んじゃだめだから」と言うはずだった。しかし続かなかった。その言葉を封じるには十分すぎるインパクトが訪れたからである。

 正直混乱している。


  なぜなら美奈が頬に付いたホイップを舐め取ってきた。

  その舌使いは犬が顔を舐めるそれとは違った。

  犬なら素早く舐めるが、美奈は味わうようにじっくりと舐めてきた。

  混乱の最中、口をパクパクとさせていると続けて頬へとキスをしてきた。頬から伝わる唇の感触に恍惚としてしまい、どこかへ落ちていってしまいそうになる。

  ――嗚呼、私の唇ってこんなに柔らかかったのか。まるでマシュマロを押し付けられているみたい。

  ようやく、美奈は唇を離した。いや、頬に唇を押し当てていたのは一瞬だったのだろう。しかしあまりの感触に実際よりも長く感じられてしまった。


「本当に欲しいのはそこじゃないんだよ。でもそれはお姉ちゃんのモノだから私が奪うわけにはいかないよ」


 美奈は顔が離れた直前に何かを言った。しかし、私は顔も頭も蕩けていて良く聞き取れなかった。

 そして落ち着いて我に返るととんでもないことが行われていた気がして美奈に詰め寄った。


「な、な、な、何! 何するの!」

「ごめんね。ほっぺにホイップが付いちゃったから取ってあげたんだよ」


 わざとらしく謝られた。ため息を付いてなんて怒るか考えていると視線を感じた。

 すると何人かは気づいたらしくこちらに視線を向けていた。

 慌てて、美奈の手を引きとにかく遠くへと走り出した。

 美奈は暢気に手を繋いだことを嬉しそうにしていたがこっちはそれ所ではない。


 

  しばらく走た所でもう目撃者は居ないだろうと思い立ち止まった。

  そこにちょうどベンチがあった。走りつかれたしクレープもまだ食べていないのでそこで休憩にした。

  しかし、疲れた。走ったせいでだいぶ息も上がっている。となりを見ると同じように少し苦しそうだった。やはり体力も同じなのだろうか。

 私もずいぶん本気で走ってしまった。少し慌て過ぎただろうか。だが、こっちは美奈のことまで意識する余裕はなかった。そもそも美奈があんなことをしなければこんなことにはならなかったのだから文句は受けつけない。

 だが、こっちには文句を言う権利があるだろう。だからたくさん言ってやらなくては。


「もう、本当に何するの! このモールには二度とこれないじゃない!」

「単なるスキンシップだよ。よく外国ではほっぺにキスしたりするじゃん。それに大げさよ。数人しか見てないしそんなに噂とかにはならないよ」

 美奈はそう楽観しするがされた側としては大問題だ。第一恥ずかしい。

「ここは日本なの。だから気軽にそんなことしちゃいけないの。それに数人でも噂はものすごい速さで広がっちゃうの」

 美奈にはほかにもいろいろと抗議することがある。そう思い美奈を睨もうとしたが美奈は手中のクレープを堪能中だった。仕方がないので私もクレープを食べることにした。

 さすがに幸せそうな顔でクレープを堪能している美奈を睨む気にはなれなかった。

 おいしい。この甘い生地、たっぷりのホイップに少し酸味のあるイチゴ。今度作ってみようかな。

 そんなことを思っているといつの間にか食べ終えてしまった。美奈もすでに食べ終わっているようで私の隣であたりのお店を眺めている。


「クレープも食べ終えたし、次はどこ見るの?」

 辺りを見ながら考えていたが次第に視線がとまる。止まった先を見るとカジュアルな家具が配置されているお店だった。

 ちらりと家具に視線を向けて見ると意外に悪くはなかった。見ているとリビングの彩りに何か欲しくなってしまう。

 買わないだろうが見るだけならお安いものだ。だから美奈と一緒に近づいていった。


 じっくりと見てみるとリビングに合いそうなものがいくつかあった。

 しかし、持ち帰ることも難しそうなのでどうしようかと考えていると美奈は一つのベッドに見惚れている様子だった。

「これが気に入ったの? でもなんでダブル?」

 そんな質問に美奈はニヤリとした。

「やっぱりいいや」

 なんとなくいやな予感がしたので質問をやめた。

 しかしここまで服や小物を色々と見ていたが何一つ買っていない。

「ねぇ、今日は美奈の荷物がまだ届いてないから必要なものを買いに来たんじゃなかったの?」

「そうだよ。ああ、でもお姉ちゃんをこう押し倒してもいいし、でもああやって攻めるのも捨てがたい」


 なんだか、また美奈が変な方向にぶり返してしまったらしい。今の話は聞かなかったことにしよう。きっと美奈は広いベッドに憧れてどう寝るか悩んでいるのだろう。

「それで、まだ何も買ってないんだけど? 買うんでしょ」

「うん、買うよ。でも家に帰ったらネットで注文するからいいの」

 そこでガクリとする。それでは私も一緒に来て選ぶ必要はないのではないのだろうか。

「だったら私が来る必要ってあったの」

「そりゃもちろんあるよ。だって一人より二人の方が楽しいでしょ。それもお姉ちゃんと一緒ならなおさら楽しいよ」


 そう言われてみればいろいろハプニングはあったが楽しかった。最初は周りを警戒したものの周りからは仲のいい双子にしか見えていないようだ。

「確かに楽しかった。誰かとショッピングなんて久しぶりかも、誰かと居るってこんなに楽しかったんだね」

「そうだよ。だからこれからはずっと私がそばに居るよ。だって私はお姉ちゃんだけの私なんだから」

 少しだけ美奈との生活もいいと思ったけど美奈の性格に寒気を感じる。


「ごめん、なんだか頭がくらくらしてきたから休んでていいかな」

「いいよ。さっきのベンチで休んでて」

 案外あっさりと離してくれた。てっきりべたべたとねだってくると思っていた。しかしあまり油断は出来ない。

 なのでさっさベンチへ戻った。お店の方を見るとまだ美奈はベッドの前で考えているようだ。今日はより一層就寝時に注意しようと思う。

 しかしいつ眺めてもそこに居るのは私だ。私のクローンなのだからそうなのだろうけどまだ不思議な感覚は拭えない。始めから双子なら見慣れているし、そういうものなのだと理解できるだろうがクローンがひょっこり現れて姉妹のようにされても混乱する。今は何とかなっても今後はどうなるのだろう。もしかしたら美奈の言う研究所が何とかしてくれるのだろうか。

 結局答えは見えてこない。だから私は一度考えを隅に追いやり今を楽しむことにした。せっかく美奈が誘ってくれたのだから私も何かお店を見てみることにした。


 そう思い首を巡らせるとなんだか気になる雑貨屋を見つける。入ってみると猫のシルエットの入ったマグカップや花をあしらったヘアピン、デフォルメされた動物の時計などかわいいものがたくさんあった。どれも欲しくなってしまう。

 それから私はしばらく見ていくことにした。



 しばらくして戻ると美奈がベンチで暇そうに足をぶらつかせている。


「ごめんね、私もお店を見てたらついつい時間を忘れちゃって」

「いいよ。さっきからずっと私に付き合ってばっかりだったから楽しめてないのかなって少し心配だったし、それより何見てたの?」


 美奈は美奈で私のことを気遣っていたらしい。そのことが私はとてもうれしく思った。だから今は難しいことは考えずに美奈と楽しく生活すればいいのではないだろうか。

「そうね。かわいいものがたくさんあったの。たぶん美奈も気に入ると思うよ」

「へぇ~、そんなにかわいかったんだ。でもね、お姉ちゃんのかわいさには敵わないと思うよ」

 またしばらく美奈の愛情表現をかわしながら、たわいもない会話をしながらほかのお店を見て回った。

 気が付くと周りには客の姿が減っていた。時計を見て納得した。私たちはすっかり時間を忘れて遊びつくしていたようだった。

今日は本当に楽しかった。隣で笑顔を振りまいている美奈に帰りを告げるのを躊躇ってしまう。それでも遊びは終わりにして現実に帰らなくてはならない。


「美奈、もういい時間だし帰ろうか」

「え? う、うん」

 美奈は一瞬表情を消し寂しそうな目をするがすぐに笑顔になり、従順してくれた。

 私たちは来たときと同じようにバスに乗って電車に乗って帰ってくる。その間車内ではウィンドショッピングをしていた時と変わらなく話をしていた。しかし美奈はどこか寂しそうだった。だから私は美奈を元気付けようとして美奈に提案をした。


「暗くならないでよ。明るく私にじゃれ付いてくる美奈はどうしたの? そんなに楽しかったなら来週も何処かいく?」

 しかし私の提案に美奈は首を振る。

「いいよ。来週はお姉ちゃんの好きなようにすればいいよ。たぶん午前はごろごろして午後にはお菓子でも作るんでしょ」


 美奈はずいぶんと遠慮をしているように見えた。もしかすると今日、強引に連れまわしたことを少しは反省しているのかもしれない。別に今日は楽しかったからいいのに。

 だけど美奈がそんな風に提案してくれるなら乗ることにした。


「そうだね。じゃあ、来週は午前はごろごろして午後からお菓子を作って、そのあとはお茶会でもしようか」

 そういうと美奈は少し明るくなり、そのあとに「そのあとはパジャマパーティーもしたいな」と付け加える。

 だから私はそれに素直にうなずき来週の約束をした。



 それから私たちは来た時と同じようにバスに揺られ電車に揺られ、マンション近くのスーパーで夕食の買い物をして帰った。帰ると今日も二人で料理をして夕食にした。

 いままでは一人で作って一人で食べていた。だからそれが寂しくてテレビの音でそれを紛らわせていたけど、それがより一層寂しくも感じていた。だけど今は二人で食べて、会話をする。だから寂しさは感じなくなった。


 ――ああ、やっぱり美奈が来てくれていろいろと驚いたり、危機を感じたりはしたけど懐かしい暖かさに触れられてとてもよかった――美奈が来なければこんなことは思いもしなかっただろう。

 また明日から学校が始まるが明日からもいつも以上に元気にいけそうな気がしてきた。

 しかしそこで学校と思い浮かべ疑問に思った。美奈は私が学校に行っている間、何をしているのだろう。まさか美奈も一緒に学校へ行くと言い出すのではないだろうか。

 学校のみんなには私に姉妹がいるとは言ったことがないと思うがいきなり私そっくりでクローンの美奈が現れたら双子だと言われても怪しいかもしれない。


「ねぇ、美奈。明日って美奈はどうしてるの?」

「明日ねぇ、明日って月曜日だよね。私ちょっと用事っていうか行くところがあるかな」

 美奈はどこか含みのある言い方だが開口一番に私についてくると言い出さなくてホッとしている。明後日以降も美奈にはかわいそうだがお留守番をしてもらうかどこかで暇をつぶしてもらうしかないかもしれない。それから外に出る時は帽子でも被ってもらって顔を若干隠してもらったほうがいいかもしれない。でないと周りに私が学校にも行かずに遊び歩いているなんて噂になったら困るし、そうなったらそうなったで学校にいる私と外で遊んでいる美奈で私が二人いることがバレるかも知れないからである。


 そんなことを考えているといつの間にか夕食も食べ終えてしまった。そのあと二人で洗い物をしてあとはお風呂に入って寝るぐらいなので美奈を部屋に帰らせた。そしてその際にはきちんと外出時には帽子を被って少し印象を変えるようにお願いをした。

 こうして私は一日に終わりを告げるようにベッドに潜り込んだ。


 今日の一日はとても短く感じるほど楽しい時間だった。しかし思い出せば思い出すほど楽しい記憶がギュッと詰まった久しぶりの休日だった。

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