End
今、わかった。
そっか、オレは五月雨が好きなのか。だって、五月雨は皐月なのだから。今更だけど。
五月雨にひどいこと言ったな。謝らないと。でも、は五月雨がどこにいるのかも、何もわからない。
ベッドに寝転がって考えていた、その時。
――カタン。
玄関で何かの音がした。音の先の玄関に行ってみると、前に五月雨に貸した傘が置いてあった。
「え…?」
なんで傘が?今、音がしたのだから、きっと今置いたのだろう。五月雨が、今来たのか…?
オレは急いで部屋を出た。今なら会えるかもしれない。
その瞬間、あんなに晴天だった空から雨が降ってきた。だから、五月雨が置いていった傘を持って。
学校、近くの大きな、いろんな所を探して走り回った。でも、どこにもいない。
雨も徐々に強くなってきた。体もびしょ濡れで冷えてきた。
もう帰ったのかな。せっかくのチャンスを逃してしまった。もう、五月雨には会えないかもしれない。
そう思うと、涙が零れた。五月雨に会えないのはこんなに辛いのか。やっぱり諦めるしかないのか。
走り回って重くなった足を引きずるように帰った。途中、少し離れた所に小さな公園が見えた。こんなところに公園なんてあったのか。公園の前を通ろうとした瞬間、中の小さなブランコに座っている少女がいた。
五月雨だ。
オレは五月雨のところへ叫びながら走った。
「五月雨ーーーー!!!!!!」
「え!?」
気づいてブランコから立ち上がる五月雨。いや、
「…皐月…。」
息を切らしながらそう言い直すと、びしょ濡れの五月雨は優しく笑った。
「…うん。ナリくん。」
よかった。また、五月雨に会えて。
「ナリくん、やっぱり気づいてたんだね。」
「え…?」
「私が、皐月だって。」
五月雨は、また優しく笑った。
「うん、五月雨。前は、会いたくないなんて言ってごめん…。」
「あ、ううん。私があんなことを聞いたから…ごめんね。」
切なそうな顔をする五月雨。
言わないと。全部、伝えないと。
「聞いてほしいんだ。」
「皐月が、崖から落ちたとき…。」
「あぁ…そういえば、落ちたなぁ、私。」
五月雨は、「そんなことあったなぁ」というように笑顔で頷いた。
「あのあと、オレも追いかけて崖を降りたけど、滑って落ちて、怪我したんだ。」
「そっか…。」
五月雨は一息つくと、ゆっくり話し出した。
「じゃあ、次は私の話、聞いてくれる?」
「待って、あと、一つ…。オレ…」
五月雨は、「ん?」と言って、オレが話すのを待っている。
早く言わないと。
「オレ…」
言わないと。
「五月雨のこと…皐月のこと、」
「好きだ。」
言ってしまった。ずっと言いたかったことだが、いざ言うと、少し後悔があったりする。
五月雨はずっと黙っている。うつむいて、じっと下を向いている。
「五月雨…」
「あ…あのね…」
「私ね、ホントは人間じゃないんだ。」
突然だったが、きっと五月雨にとっては大事なことなのだろう。だから、聞くことにした。
「うん、知ってる。」
「あはは、だよね。」
「死んだとき、不思議な場所にいったんだ。どんなところか覚えてないけど、そこでずっと、ずぅーっと寝てた。でもね、寝ていてもある日目が覚めたの。そしたらナリくんに会いたくてたまらなかった。」
五月雨は照れ笑いして、少し首を傾げた。
「でもね、目が覚めたら私自身は皐月なんだけど、身体は皐月じゃなかった。なぜかこんな姿だった。」
「それに、良くわからないところにいて、雨も降ってるし、どうしようもなかった。その時にね、ナリくんが来たんだよ。」
「あの道での話か?」
「うん。でもね、皐月だよーって言っても信じてもらえないと思ったから、とりあえず五月雨って言ったんだ。」
「そっか…」
「うん。私が言えるのはここまでかな。」
五月雨は、切なそうな顔をした。まだなにかあるような表情だった。
「あのね、私、もうナリくんには会えないんだ。」
「え…?」
突然の告白だった。もう…会えない…?
「今日、ここに来る前に、気づいたの。こっちに来るための扉があるんだけど…」
「今まではあまり気にしてなかったんだけど、扉に数字が書いてあるの。その数字が、行く度に減っていって…」
「今日で0なんだ。」
「……」
つまり、はじめから来れる回数は決まっていたのか。
「だから、言いたいことがあって…!」
「あの…」
「私、も…」
「ナリくんのこと、好き…だよ?」
なぜ疑問形…。顔を真っ赤にして、また下を向いた。
こっちまで恥ずかしくなる。
「ううぅ…すっごい恥ずかしい…。」
「あの、でももう帰らなくちゃいけなくて…!」
「…うん。」
そうだ。それでももう五月雨には会えないんだ。
オレは、またどうすることもできないのか。情けないな。
「五月雨…。」
オレは、なに食わぬ顔で言った。いつものトーンで。
「今日も雨降ってるだろ。傘持ってけ。」
「えっ…?」
オレは、手に持っていた傘を差し出した。
「あ…うん。」
五月雨は傘を受けとった。
「あと、今度はちゃんと直接返しに来いよ。」
「うん…!」
五月雨は、傘をさして走っていった。
少し離れた所で振り向き、今までで一番の笑顔で手を振った。
「またね。」
こんな雨に溺れてしまいそうになるくらい、五月雨が、いや、皐月が好きだった。
あれから、一年近く経つ。だが五月雨にはいまだに会えない。
ふと、後ろから声が聞こえた。
振り向くと、そこにいたのは…。
「ひさしぶり、ユキナリくん。」
なんと、もう最終回!!
はやいなー…
何故かベッタベタのラブストーリーだったわけですが…
書いてて恥ずかしかったです、はい。うん。
ホント勘弁してくれよもう、ナリ…。
一応ハッピーエンドのつもりです。
ナリは幸せです。
特に細かい所まで書いたつもりはないので、さらっと読んでもらえてたと思います!
あ、でも1つだけ。
最後にナリの所にやって来たのは五月雨なのか、皐月なのか。
そこだけですね。
ここは、私の方からはなにも言わないので。
あなたの想像力にかかってます。
カッコよく言うと、この話を終わらせるのはあなたです。
ってね。うわっ、恥っずかし!!!
羞恥で死にそうなのでそろそろ…
最後まで読んでくれてありがとうございます!
次回作もじゃんじゃん書いてるので是非、そちらのほうも…ね。
「Dislike worlD~ユメオト~」
それでは、さようなら~!!
この作品をSIYのみんなに捧げます